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【コラム】FRBの独立性、ディフェンスの要は政策枠組み-ダドリー

トランプ米大統領からの攻撃が激化する中でも、米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長は、米国の金利を責任を持って管理しており、その手腕は高く評価できる。ただ、金融政策全般への取り組みについては、まだ改善すべき点が残っている。

  パウエル氏は先週、米カンザスシティー連銀主催の年次シンポジウム(ジャクソンホール会合)で、明確なシグナルを発した。9月の米連邦公開市場委員会(FOMC)で、短期金利の25ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)引き下げを検討するというものだ。

  パウエル氏は労働市場の弱体化リスクが「急速に」現れ得る一方、インフレ期待は十分に安定しており、関税による一時的な物価上昇にも耐えられることを指摘した上で、金融政策がなお「抑制的な領域」にあることを考慮し利下げが「適切となる可能性がある」と述べた。

  さらに長期的に重要なのは、同シンポジウム中に公表されたFRBの金融政策枠組み改訂だ。現在のFRBは、再び対称的な平均インフレ目標に戻った。物価が上振れした場合も下振れした場合も同じように扱う。雇用についても「最大雇用への未達」解消や「幅広く包摂的に」することよりも、物価安定と両立する最大水準を目指す形に修正された。

  パウエル氏が述べたように、短期金利がゼロ近辺まで下がり、それ以上の利下げが難しくなるリスクを避けなければならないのは、引き続き「潜在的な懸念」ではあるが、もはや「最優先課題」ではない。これは、成長を抑制も刺激もしない「中立金利」が上昇し、FRBにとって利下げの余地が広がったためだ。

  こうした変更は評価できる。インフレが2%目標を上回りそうなときに先手を打つ能力をFRBは取り戻し、雇用と物価安定の目標をより均等に位置づけた。

  ただ、金融政策の運営方法における重要な欠点を完全に解決するには至っていない。

  特に、量的緩和の運用指針となる費用対効果の枠組みを構築する必要がある。2020-22年に行った量的緩和のコストは、米財務省への利払い逸失という形で5000億ドルを超える見込みだ。また市場機能を回復させるための大規模資産購入と、ゼロ金利下で追加の金融緩和を目的とした資産購入とを、より明確に区別する必要があるだろう。

  さらにFRBは経済見通しとそれへの潜在的な対応を伝える手法を改善する必要がある。FOMCの隔会合ごとに発表される四半期経済予測(SEP)は、当局者の最頻値予測に偏りすぎている。FRBは部分的な修正ではなく、欧州中央銀行(ECB)のように、詳細なスタッフ予測と代替シナリオを用いるべきだ。

  トランプ政権からの極端に強い政治的圧力の中で、過去の枠組みの欠陥を暗黙に認めたと受け取られかねない変更を避け、FRBはむしろ何もしない方向に傾くかもしれない。それは誤りだ。独立性を守るためにも、最も効果的かつ包括的な金融政策の枠組みを整えるべきだ。世界や金融システムの構造が進化する中で、FRBは歩調を合わせなければならない。

(ニューヨーク連銀の前総裁、ウィリアム・ダドリー氏はブルームバーグ・オピニオンのコラムニストです。このコラムの内容は、必ずしも編集部やブルームバーグ・エル・ピー、オーナーらの意見を反映するものではありません)

題:How the Federal Reserve Can Bolster Its Defenses: Bill Dudley(抜粋)

    This column reflects the personal views of the author and does not necessarily reflect the opinion of the editorial board or Bloomberg LP and its owners.

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