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日本酒「獺祭」売上高が最高更新へ、輸出と現地生産で海外成長加速

  • 国内市場が縮小する中、海外に活路-アジア・北米が成長けん引
  • NYに建設中の酒蔵は12月にも完成予定、年明けから生産開始見通し
日本酒「獺祭」売上高が過去最高、輸出と現地生産で世界に挑む

 

「山口の山奥の小さな酒蔵」旭酒造。「獺祭(だっさい)」のブランドで知られる創業74年の日本酒メーカーだ。同社の売上高は今期、過去最高となる150億円を超える見通しとなった。うち半分程度は海外が占め、将来的にその割合は9割まで上昇する見込みという。国内マーケットが縮小する中、輸出と現地生産を両輪とする海外戦略で成長を加速させる。4代目蔵元の桜井一宏社長(45歳)に話を聞いた。

  旭酒造の海外増収をけん引するのは、中国を中心とするアジア市場だ。2021年9月期の輸出売上高70億円のうち、約50億円はアジア地域だった。その他にも、フレンチシェフの故ジョエル・ロブション氏と共同でパリにレストランを出店するなど、獺祭は欧州や中東でも流通している。

  一方で、桜井社長に今後注力したいマーケットを問うと、米国と明言した。欧米の食文化に獺祭を浸透させていくために、米国は「まだまだ追求する、掘っていく市場」であると語った。

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ニューヨークでイベントに参加する桜井社長(左、7月11日)
Source: Asahi Shuzo Co.

 

  農業ビジネスの海外展開などに詳しい日本総合研究所創発戦略センターの三輪泰史エクスパートも、日本酒の伸びが期待できる市場の一つとして北米を挙げた。同地域では日本食レストランが増えているほか、現地の飲食店でも日本酒を並べることがトレンドになっていると説明した。

  桜井社長は米国への輸出を巡り、昨今の円安の影響はあまり受けていないと明かした。運送費などコストの上昇はあるものの、旭酒造では原材料の輸入がほとんどないため、他の製造業と比べ円安がむしろ有利に働いているという。

Inside Asahi Shuzo Dassai Sake Brewery
麹(こうじ)を製造する工程(7月6日・岩国市の本社蔵)
Photographer: Noriko Hayashi/Bloomberg

旭酒造の売上高推移

21年9月期に「獺祭」の海外売り上げが国内売り上げを上回った

出典:旭酒造

  米国ではインフレも加熱している。所得水準が上昇傾向にあり、日本酒は過去20-30年で相対的に安くなったように感じられるという。同社は輸送コストの上昇などを受け、4月に輸出用の獺祭を5%程度値上げしたばかりだが、米国の物価次第では今後も「思い切って値段を上げていく必要がある」とし、ブランド力の向上を図る意向を示した。

  米国では現地生産も始める。旭酒造は17年、米料理学校の「カリナリー・インスティチュート・オブ・アメリカ」と提携し、ニューヨーク州東部に酒蔵を建設することを決めた。建設費は当初、10億円程度を見込んでいたが、新型コロナの影響により工期が3年ほど遅れた関係で、コストは60億-70億円まで膨らんだ。酒蔵は今年12月にも完成し、年明けにも生産開始となる見通しだ。

Inside Asahi Shuzo Dassai Sake Brewery
瓶詰めラインで貼られる「獺祭」のラベル
Photographer: Noriko Hayashi/Bloomberg

  ニューヨークの酒蔵では、国内で展開する商品とは異なるブランドを作る。「日本の獺祭を超える存在になってほしい」との期待を込め、「青は藍より出(い)でて藍より青し」の故事成語から「Dassai Blue」と命名した。将来的には米アーカンソー州産の酒米を使用することも視野に入れている。価格は、日本の獺祭と同等か高めに設定する方針だ。

  三輪氏によると、農業・食品産業では、日本から輸出する「トップブランド」と現地で生産する「セカンドトップブランド」を組み合わせる形が海外展開の正攻法となっている。これに対し、国産の獺祭と米国のDassai Blueで「ツートップ」を狙う旭酒造の戦略はハードルが高いと指摘する。一方で、米国では地元の材料を使った日本酒もトレンドになり始めており、流行をうまく取り入れることで勝算が見えてくると述べた。

動画リポート:日本酒「獺祭」で知られる旭酒造は、今年12月にニューヨークに酒蔵をオープンする。国内の日本酒消費量が低迷する中、米国や中国など海外市場に軸を移す。同社の4代目蔵元でもある桜井一宏社長に7月7日、山口県岩国市の本社で話を聞いた。
Source: Bloomberg

国内の日本酒市場は縮小の一途をたどる

  旭酒造が海外市場に目を向ける背景には、国内の日本酒市場の縮小がある。高齢化や健康志向の高まりによる「アルコール離れ」で、酒を嗜(たしな)む人口は年々減少。同時に、ビールや発泡酒、さらにここ20年の間にチューハイなどリキュール系の人気が伸び、業界内のシェア維持も難しい状態となっている。

清酒の販売(消費)数量の推移

年間消費量は1970年から3分の1以下に減少

Source: 国税庁

  15年に日本酒スタートアップ「日本酒応援団」を設立した古原忠直氏も課題を共有する。同社は石川県鳳珠郡能登町や大分県国東市などにある酒蔵と提携し、五つの日本酒ブランドを生産・販売している。古原氏によると、日本酒業界は歴史的に地産地消型で発展してきた。しかし、近年飲酒人口が減少する中で「地産はよいが、(中略)流通は開かれていかないといけない」と指摘した。 

Inside Asahi Shuzo Dassai Sake Brewery
グラスに注がれた「獺祭 純米大吟醸 磨き二割三分」。精米歩合を23%まで落とした山田錦を使用している。正規販売店での価格は5500円(720ml)。「きちんと価値をつけていく」と桜井社長
Photographer: Noriko Hayashi/Bloomberg

  桜井社長は「国内市場は減っていくのはやむを得ない」とした上で、若い世代に迎合するような商品作りは軸がぶれるとして否定した。「いいものを作って、分かるところに売っていく」と海外展開の重要性を改めて強調した。

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