コンテンツにスキップする

「株主優待」じわり復活、市場区分変更影響か-株主の平等性で疑問も

  • 3年連続減から一転、流動性基準厳格化への対応の可能性もと専門家
  • 個人投資家配慮、機関投資家からは廃止して配当で出すべきだの声も

決算期末の株主を対象に、自社製品や商品券などを提供する「株主優待制度」を新たに導入する企業数が4年ぶりに増加している。

  毎年10月から1年間の上場企業の株主優待に関する動向を集計している大和インベスター・リレーションズ(IR)によると、昨年10月から今年6月末までの期間で優待の新設を発表した企業は56社と、前年(2020年10月-21年9月)の42社をすでに上回っている。新設企業数が106件だった17年10月-18年9月以降、3年連続で減少していた。

Parent-And-Child Investment Classes As No Sign Of Next Generation In Japan Stocks As Tax Lures Ignored
個人株主の開拓に優待を使う企業は少なくない
Photographer: Kiyoshi Ota/Bloomberg

  廃止を発表した企業は昨年10月から今年6月末までで51社と、新設件数を若干下回った。国内の上場企業のうち、優待制度を導入している企業は7月1日時点で1480社となっている。

  大和IRによると、3月期決算前の2月や株主総会前の5月に優待に関する発表が増える流れがある。同社の濱口政己氏は「企業規模の大きい会社の優待廃止の発表があって廃止が目立っているが、一方で新設している企業もあり、一方的に減りつつあるという状況ではまだない」と話す。

  増加の背景にはファンを増やすという目的とともに、東京証券取引所の市場区分見直しによる上場基準改定で、株式の流動性に関する基準が厳しくなり、一部企業では優待によって個人投資家比率を増やし、流動性を確保したいとの狙いがあると考えられると濱口氏は言う。

  工作機械を手掛けるエンシュウや医薬・介護事業などを展開するミアヘルサホールディングスは今年、特産品や金券による株主優待を導入すると発表した。両社は流通株式時価総額などが新市場区分の上場維持基準を満たしていないとして、適合に向けた計画書を提出している。

  また、優待制度を拡充する企業もある。商船三井は5月、グループ会社が運航するクルーズの利用券を提供している優待制度にフェリー利用券を新しく追加した。より多くの投資家に船を身近に感じられる機会をつくるとともに、中長期的に株式を保有してもらうことが目的としている。東急は同月、株主優待の獲得に必要な株式数を引き下げた。

  株主優待を巡っては、15年に導入されたコーポレートガバナンスコードで、少数株主や外国人を含めた株主の実質的な平等性の確保が基本原則に盛り込まれていることなどを受け、廃止する企業も近年目立ち、大和IRによると昨年9月までの1年間の廃止企業は75社と過去10年で最多を記録した。

  5月に株主優待制度の廃止を発表したオリックスの井上亮社長は6月24日の株主総会で、15年の株主優待創設時と比べて配当性向や総還元性向が大幅に改善している点を挙げ、機関投資家や個人投資家へのより公平な利益還元を基本方針とする意味から、「個人株主の皆様には大変遺憾ではあるが、優待の廃止を決定した」と述べた。

「完全に公平」は困難  

  株主優待制度の導入による長期的な株価動向への効果は計りにくいものの、株主数については明確な傾向があり、7-8割の会社で投資家数が増えるとされている。「入れる前と比べて株主数は割と高い確率で増える。一方で優待をやめると減る」と大和IRの濱口氏は分析。個人投資家一人当たりの保有する株式数は多くはないが、「流動株式比率が増える方向には働く」とみる。

  株主優待は保有株式数100株以上で商品券1000円分、200株以上で2000円分などと大枠で決められており、「どうやっても完全に公平はならない」と濱口氏は言う。 

  さわかみ投信の草刈貴弘最高投資責任者は、株主優待は「廃止が良いと思う。それがないと個人投資家が集められないことも問題」と指摘。企業側は一般消費者向けの事業であれば、そもそもの商品やサービスでファンをつくるべきだとし、企業間ビジネスで難しいのであれば「配当で出すべき」だと述べた。

  一方、ピクテ投信投資顧問の松元浩運用・商品本部シニア・フェローは、海外では日本のような優待制度は聞いたことがなく、「日本独特の贈り物文化や国民性に起因しているのではないか」とみている。

  さらに松元氏は「株主間の公平性が保たれていないという指摘はもっともだが、個人投資家の裾野を広げるきっかけにもなり、そこまで目くじらを立てるものでもないのではないか」とし、優待とともに優先株を利用するなどの新たな形を模索する必要性にも言及した。

    最新の情報は、ブルームバーグ端末にて提供中 LEARN MORE