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「リバース通貨戦争」の号砲鳴る-物価抑制へ各国中銀が通貨高目指す

  • 先進各国中銀がこれほど積極的に通貨高望む事例ない-エコノミスト
  • 野放しのままなら主要通貨の大幅な為替相場変動など危険な状況も
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Illustration: Khylin Woodrow for Bloomberg Businessweek

口火を切ったのは欧州中央銀行(ECB)のシュナーベル理事だった。同理事は2月、米ドル高・ユーロ安の進行度合いを示すチャートを掲げて見せた。カナダ銀行のマックレム総裁はその2カ月後、カナダ・ドル安に不満を表明。スイス国立銀行のジョルダン総裁はスイス・フラン高を望む考えを示唆した。

  米連邦準備制度がインフレ抑制に積極的に取り組む態勢を受けて、米ドルは年初来で7%上昇。各国・地域の中銀当局者は、持続的な物価高騰に歯止めを掛けようと必死なあまり、輸入物価の押し下げにつながる自国・地域の通貨高を現時点では歓迎すると、あからさまとも言えるシグナルを発し始めた。

Fed To Plow Ahead On Half-Point Hikes Undeterred By Stock Slump
ワシントンのFRB本部
Photographer: Joshua Roberts/Bloomberg

  こうした形の介入はこれまで極めて異例であり、口先だけであっても相場を動かすことになった。今月16日には、スイス中銀が2007年以来の利上げに踏み切ってトレーダーの度肝を抜き、スイス・フランは7年ぶりの高水準を付けた。その数時間後には、イングランド銀行が0.25ポイント利上げを発表し、必要なら一段と大幅な利上げの用意があることを示唆した。

  各国・地域のインフレ対策において、為替相場がかつてないほど重要な要素となっている。ゴールドマン・サックス・グループのエコノミスト、マイケル・ケーヒル氏は先進各国・地域の中銀がこれほどまでに積極的に強い通貨を目指した事例は記憶にないと話す。

  外国為替市場ではこうした現象を「リバース(逆の)通貨戦争」と呼んでいる。各国・地域は10年余りにわたり、企業の輸出競争力の強化と経済成長促進を狙い、自国・地域の為替相場の下落を望んできたが、現状はその逆になっているためだ。燃料や食料品、電化製品など広範な品目が値上がりする状況では、購買力強化が急激に重要度を増している。

  ただ、これは危険なゲームでもある。野放しのままなら、主要通貨の大幅な為替相場変動を引き起こし、輸出に依存する製造業の競争力が低下するほか、多国籍企業の収益に打撃となって、インフレの重荷を世界中で押し付け合う事態になりかねない。

Value of a US Dollar in

Source: Bloomberg

  通貨戦争は勝者がいれば敗者もいる悪名高きゼロサムゲームだ。ドイツ銀行のチーフ国際ストラテジストを務めるアラン・ラスキン氏は、どの国も「同じものを得ようとする」ものの、「通貨の世界ではそれは不可能だ」と指摘した。

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  通貨高がインフレ抑制にどれほど効果があるかは正確には不明なままだ。為替相場が消費者物価指数(CPI)に反映されるパススルー効果について、米連邦準備制度理事会(FRB)や米財務省の元高官で、現在はシティグループ・グローバル・マーケッツのグローバル・チーフエコノミスト、ネイサン・シーツ氏はごくわずかだと語る。

  しかし、物価高騰の局面ではこうした効果が高まる可能性もある。シーツ氏は、米ドル相場の10%上昇が以前であればインフレ率を0.5ポイント程度鈍化させるのに過ぎなかったのに対し、現時点ではそれが「1ポイント」になっているかもしれないとの推計を示した。

  一方で、当局による介入には失敗の大きなリスクが伴うと複数の専門家は警告する。元米財務省当局者で、公的通貨・金融機関フォーラム(OMFIF)の米国議長を務めるマーク・ソーベル氏は、「為替相場をターゲットとするのは極めて気まぐれで成果に乏しい取り組みとなりかねない」とし、「特定の政策選択に外為市場がどう反応しそうか予測するのはしばしば無駄足となる公算が大きい」とコメントした。

(原文は「ブルームバーグ・ビジネスウィーク」誌に掲載)

原題:

Currency War Breaks Out in a World Short on Fixes for Inflation(抜粋)

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