トヨタの社長報酬、6億8500万円に大幅増-欧米勢には及ばず (訂正)
稲島剛史-
豊田社長の報酬は55%増、円安による過去最高益で株式報酬が倍増
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GMのバーラ社長の報酬は40億円、人材獲得競争に影響との声も
トヨタ自動車の豊田章男社長の前期(2022年3月期)の報酬が6億8500万円と前の期と比べて55%増加した。新型コロナウイルス感染拡大や半導体不足による生産面での混乱が続いたものの、円安の追い風などにより同期の営業利益は過去最高となり業績連動報酬が大きく増加した。

トヨタが23日に開示した有価証券報告書によると、豊田社長(66)の固定報酬は2億400万円(前の期1億8500万円)だった。業績連動報酬は賞与がゼロ(同2500万円)だった一方、株式報酬が4億8100万円(同2億3100万円)とほぼ倍増となった。
豊田章男社長の報酬は前期比55%増
出典:有価証券報告書
トヨタ傘下で自動運転技術やスマートシティーの開発などを行うウーブン・プラネット・ホールディングス(HD)の最高経営責任者(CEO)も務めるジェームス・カフナー取締役の報酬額は豊田氏を上回る9億600万円(前期2億8400万円)だった。トヨタによると、カフナー氏の職責が広がったことなどが考慮された。
厳しい事業環境の中、円安や原価低減などによりトヨタの前期営業利益は前の期比36%増の2兆9957億円と過去最高となった。しかし、「過去に例がないレベル」で資材価格が高騰している影響で今期の営業利益は20%減となることを見込んでおり、利益水準や株価によって左右される同社幹部の業績連動報酬は減少する可能性がある。
販売台数で世界で首位に立つトヨタだが、報酬面ではいまだに欧米の大手自動車メーカーに水をあけられている。21年の米ゼネラル・モーターズ(GM)のメアリー・バーラ最高経営責任者(CEO)の報酬は約2914万ドル(約40億円)、独フォルクスワーゲン(VW)のヘルベルト・ディースCEOは約1031万ユーロ(14億8000万円)だった。
デロイトトーマツグループの調査によると、社長・CEO報酬で米欧との格差は拡大しており、日本は「優秀な経営人材の獲得競争に取り残されている」という。コーポレートガバナンス・コードでは経営者の企業価値向上を目指す姿勢が求められており、日本企業においても変動報酬に関するインセンティブ割合を高めることが期待されると指摘した。
トヨタの有報では、同社が取引先との関係維持などを目的として保有する「政策保有株式」が3月末時点で148銘柄と前年の157銘柄から減少したことも明らかにされた。上場会社では富士フイルムホールディングスや大和証券グループ本社、日本駐車場開発、日本エンタープライズの株式が売却された。
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