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気候対応迫る株主提案に「可決率0.4%」の壁-それでも効果期待

更新日時
  • 定款変更可決は過去20年で1886議案中7件、きょうの三菱商でも否決
  • 提案の目的、企業の行動やアプローチを変えること-豪NGO代表

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気候変動対応の強化を目的とした株主提案を決議する株主総会が始まった。商社や電力会社など5社に対する提案は、いずれも企業の最高規範である定款の変更を求めるものだが、過去20年間でこうした議案が可決された例は全体の0.4%に過ぎない。ただ、株主側の真意は議決の結果にかかわらず、提案を通じて企業に行動変容を促すことにあるようだ。

  三菱商事東京電力ホールディングス中部電力三井住友フィナンシャルグループはオーストラリアの非政府組織(NGO)マーケット・フォースなどの団体から、石炭火力国内最大手の電源開発(Jパワー)は複数の海外機関投資家から、それぞれ脱炭素に関連する詳細な情報開示などを求める株主提案を受けた。

  国内の環境NGO「気候ネットワーク」によると、日本で初めて気候変動関連の株主提案が決議されたのは、2020年のみずほフィナンシャルグループだ。以降も商社や銀行に対する株主提案が散見されたが、全て否決されている。

  三菱商が24日に開催した定時株主総会でも、「パリ協定目標と整合する中期および短期の温室効果ガス削減目標を含む事業計画の策定開示」と、「新規の重要な資本的支出と50年温室効果ガス排出実質ゼロの達成目標との整合性評価の開示」を求める2議案が否決された。

Climate Activists Denounce Mizuho Bank's Role In Financing Coal Power Projects Globally
みずほFG前でのデモ(2020年)
Photographer: Kentaro Takahashi/Bloomberg

  可決へのハードルが高いのは、こうした提案が定款変更を求める形で行われるからだ。日本の会社法に詳しい東京大学の田中亘教授によると、日本で株主が企業に特定の行動を要求する場合、手段は定款変更に限られるという。

  定款は企業が自主的に制定する規範の中では最高位にあるもので、田中教授は「そういう意味では企業にとって憲法のようなものだ」と指摘する。定款を変更するには株主総会での「特別決議」が必要で、可決要件は出席株主の議決権の3分の2以上の賛成となる。

  一方、役員の選任や解任、自己株式の取得などは「普通決議」で、可決には出席株主の議決権の過半数の賛成で足りる。

1886分の7

  可決要件が厳しいこともあり、定款変更を求めた株主提案が可決された例は少ない。上場企業を対象に株主総会での提案や決議の結果をまとめた「資料版商事法務」などを基に、ブルームバーグが21年6月までの過去20年の事例を調べたところ、確認できた1886議案のうち可決されたのは7件(0.4%)だった。

  過半数の賛成票を集めたものの、3分の2以上には届かず否決された議案もあった。過去の事例検証を通じ、改めて定款変更へのハードルの高さが浮き彫りになった。

  しかし、マーケット・フォースのジュリアン・ヴィンセント代表はブルームバーグの取材に対し、結果的に企業の行動を変えることができれば、提案が否決されても目的は果たせると話す。

  ヴィンセント氏は、21年に株主提案を提出した住友商事を例に挙げ、「賛成票は20%だったが、同社の脱炭素に向けた方針が強化されたことを考えれば、あの提案はほぼ成功したと考えている」と振り返る。その上で、株主提案の目的は「究極的には企業の行動やアプローチを変えることだ」と語った。

  今回、株主提案を受けている5社は、すでに脱炭素に取り組んでいることに加え、企業運営の基本事項を定める定款に個別の施策を盛り込めば、かえって機動的な経営が阻害されかねないなどとして、提案に反対意見を表明している。

  株主総会は三菱商事を皮切りに、28日に東京電力HD、中部電力、Jパワーの3社、29日には三井住友FGが続く。

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(第3段落に三菱商事株主総会での議決結果を追加して更新します)
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