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ステーブルコイン流通へ改正法、欧米に先駆け厳格規制

更新日時
  • テラUSDの急落で市場に不安感、欧米当局も規制強化へ
  • パーミッションレス型見送りで起業家の海外流出懸念も

法定通貨と連動する暗号資産「ステーブルコイン」の発行を後押しする改正資金決済法が3日、成立した。米ドルと連動するテラUSDが暴落し各国の規制当局が警戒感を強める中、日本はネットワーク取引に管理者の許可を必要とする形を想定することで価値の管理徹底を図る。

  改正法は、発行対象をネットワーク参加に管理者の許可が必要なパーミッション型を想定しており、ステーブルコインの約6割を占めるテザーに代表される参加が自由なパーミッションレス型については現時点で定めていない。利用者保護の観点から、欧米で認めるアルゴリズムで裏付け資産の価値を調整し、コインの価格の安定を図るものは除外した。

  流通を担う仲介者を登録された電子決済手段等取引業者とした。発行者は、預金保険制度で預かり資産が保証されている銀行や、預かり資産の供託制度がある資金移動業者、資産保全措置を取っている信託会社と定めた。

  1年後に施行される。金融庁は、ステーブルコインなど分散型金融への対応について、6日の研究会で詳細を議論する。

  3次元仮想空間メタバースやインターネットとの置き換わりが期待されるWeb3の進展に伴い、同分野で利用されるステーブルコインの発行量は急増している。金融安定理事会(FSB)の2月のリポートによると、世界の発行残高は2021年末で1570億ドル(約20兆円)。

  しかし、5月にテラUSDが急落して米ドルとの連動性を失うと、裏付け資産に米国債や社債を保有するテザーにも下落の影響が及び、金融市場に不信感が浮上した。

  イエレン米財務長官が同月10日、ステーブルコインの枠組み整備の緊急性を指摘した。主要7カ国(G7)財務相・中央銀行総裁会議は同月20日の声明で、「最近の暗号資産市場の混乱に鑑み、ステーブルコインなど暗号資産に他の金融システムと同じ基準を順守させる」必要があるとして、発行者やサービス提供者について「一貫性のある包括的な規制の策定と実施をすることを強く求める」と表明した。 

起業家の海外流出懸念

  改正法が、Web3やメタバースで主流のパーミッションレス型を対象としなかったことにより、国内での普及を疑問視する声もある。

  日本暗号資産ビジネス協会の白石陽介ステーブルコイン部会長(ARIGATOBANK代表取締役)は、「パーミッションレス型をどう仲介すればいいのか書いておらず、今後法制化されるかも不透明」と指摘。Web3ビジネスで海外発行コインの利用は為替リスクにさらされる上、税制面の未整備も重なり、シンガポールなど海外での起業が加速すると懸念を示した。

  同協会で法律顧問を務める佐野史明弁護士は、国際的な慎重議論に理解を示しつつ、「足早に日本だけが一切使えないとするのは合理的ではない」として、経済合理性と利用者保護について金融庁の監督の運用でどこまで認めるか議論を見守りたいと述べた。

  国内では改正法の施行を見据えて大手金融機関などがステーブルコインの発行準備を進めている。三菱UFJ信託銀行はデジタル証券の売買にステーブルコインを使うことで、決済完了までの時間短縮や銀行手数料のコスト低減を見込む。

  既にステーブルコインを取り扱うプラットフォームを構築しており、デジタル企画部の齊藤達哉氏は「米グーグル米アマゾンの寡占となっているデジタルプラットフォームについて日本独自の展開を急ぎたい」と意気込む。

  3メガ銀行や83の企業・団体でつくる「デジタル通貨フォーラム」は「DCJPY」と名付けたデジタル通貨の実証実験を重ねている。既に三菱商事などが貿易取引分野で請求から決済に至るオペレーションの自動化などで導入効果を確認しており、発行に向けて取り組んでいる。

(6日の研究会についての記述を追加します)
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