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「GX移行債」命名の舞台裏、グリーン国債回避-原子力支援にも余地

  • 名称は首相官邸が主導で決定、昨年から水面下で検討と政府関係者
  • 復興債の仕組みと同様、エネルギー特会活用により発行する案を検討

岸田文雄首相が脱炭素社会の実現に向け発行検討を表明した新たな国債は、その命名に腐心の跡が見える。グリーン国債と呼ばずに「GX(グリーントランスフォーメーション)経済移行債」とした背景には、グリーンか否かで見解が分かれる原子力分野などへの支援が排除されないよう幅広い資金使途を確保したい政府の狙いがあるようだ。

Japan's Prime Minister Fumio Kishida Speaks at Liberal Democratic Party's Annual Convention
岸田文雄首相
Photographer: Kiyoshi Ota/Bloomberg

  複数の政府関係者によると、GX移行債という名称は首相官邸が主導して決めたもので、枠組み自体は昨年から水面下で検討が進んでいた。

  経済産業省は、脱炭素関連の投資は今後10年で約150兆円が必要と試算。政府はこのうち約20兆円を支援する方針で、新たな国債を通じて資金を調達する。主要7カ国(G7)では、日本と米国を除く5カ国がグリーン国債を通じた資金調達で脱炭素を進めている。

  経産省がまとめたクリーンエネルギー戦略の中間整理は、原子力を「エネルギー安全保障および脱炭素の効果の高い電源」と位置付け、2050年のカーボンニュートラル目標に向けて最大限活用する方針を示した。しかし、国際的に見ると原子力はグリーンか否か議論が分かれるのが実情だ。

  欧州連合(EU)が今年2月に原子力を「グリーン」と認定したことに対し、脱原発を進めるドイツや一部投資家からは反対意見も出た。日本の政府関係者らは、仮にグリーン国債と銘打てば、原子力分野などへの支出が制限され、脱炭素政策の選択肢がかえって狭まりかねないとの懸念があったと話す。

エネルギー特会の活用案が浮上

  政府関係者らによると、制度設計を巡っては、経産省が主に所管するエネルギー対策特別会計を活用する案が浮上しているという。復興債と同様に、一般会計ではなく特会を使って国債を発行する仕組みだ。

  エネルギー特会は、温室効果ガスの削減を目的とした技術革新の促進や、環境課題の解決を図る補助事業などに用いられ、経産省のほか環境省や文部科学省などが共同で所管している。

  岸田首相は19日に官邸で開かれた会議で、GX移行債により先行して資金を調達すると述べた一方で、償還財源の確保にも言及した。政府は今夏に新たに設ける「GX実行会議」で法整備を含めた具体的な制度設計を詰める考えだ。

  脱炭素社会の実現に向けては、民間企業もグリーンボンドやトランジションボンド(移行債)など社債発行による資金調達を通じて二酸化炭素(CO2)の削減などに取り組んでいる。

  経産省の担当者は、制度設計については今後検討していくとし、「GX実行会議」で詳細が検討されていくことになると思うと回答した。

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