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「サル痘」とは何か、感染はどのように広がったのか-QuickTake

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少なくとも3000年にわたって人類の命や視力を奪うなどの原因となってきた天然痘を40年余り前に世界から根絶したことは、公衆衛生史上最大の功績の一つだった。しかし、それは他のポックスウイルスへの感染を予防する世界的なワクチンプログラムの終了につながるという負の側面も伴っていた。

  アフリカで宿主の動物からヒトに感染し、1970年代から度々流行している「サル痘」もそうしたポックスウイルス科の一種だ。最近では欧州と北米でのサル痘の感染拡大がイスラエルやオーストラリア、アルゼンチンに波及し、ある国で見つかった感染性病原体がいかにたやすく国際的な懸念事項になり得るかをあらためて浮き彫りにしている。

1.サル痘とは何か?

  サル痘は1958年に最初に発見され、研究用に飼育されているサルの間で天然痘に似た疾患の集団感染が起きたことが名前の由来。サルが感染源ではない。天然痘ウイルスやワクシニアウイルス、牛痘ウイルスと同様、オルソポックスウイルス属に分類される。サル痘は天然痘よりも伝染性が低く、症状も軽い。世界保健機関(WHO)によれば、致死率は天然痘患者が30%前後であるのに対し、サル痘の最近のケースでは約3-6%にとどまっている。

2.サル痘の症状は?

  通常は1-2週間の潜伏期間を経て、発熱や筋肉痛、倦怠(けんたい)感といったインフルエンザのような症状から始まる。天然痘とは異なり、リンパ節の腫れを伴う。発熱から数日以内に発疹が出現し、顔面から体の他の部分に広がる場合が多い。発疹は水疱(すいほう)・膿疱(のうほう)化した後にかさぶたになり、目に病変が表れた場合は失明の原因となる恐れがある。

  WHOによれば、通常は症状が2-4週間続く。発症からかさぶたが消えるまで感染力がある。子供や若年成人層で致死率はより高く、免疫不全の基礎疾患がある人は特に重症化のリスクがある。

3.サル痘の通常の感染経路は?

  サル痘の感染はヒトの間では広がりにくい。主な感染経路は感染動物や患者、ウイルスに汚染された物体との接触だ。ウイルスは皮膚の傷や気道、目・鼻・口の粘膜から体内に侵入する。

  ヒトからヒトへの感染は呼吸器分泌物の飛沫を介して起きると考えられているが、患者の体液や病変部位、あるいはウイルスが付着した衣服やリネンとの接触を通じて感染することもあり得る。家庭用消毒剤による消毒が有効。

4.今回は何が違うか?

  通常ならサル痘の感染が報告されることのない複数の国でクラスター感染が相次いだ。散発例が見られる中部・西アフリカへの最近の渡航歴がない人の感染症例が報告された。

  欧州の複数の患者から採取されたサル痘ウイルスの遺伝子配列に関する分析によると、感染が拡大しつつあるのは西アフリカ系統群(クレード)で、この数年間にナイジェリアから英国やイスラエル、シンガポールへの流入例で見つかったウイルスに最も密接な関連がある。このクレードの致死率は1-3.6%。

  サル痘ウイルスのもう一つの遺伝子系統群であるコンゴ盆地系統群の場合、致死率は10%で、米政府は深刻な脅威をもたらす可能性があるとして、生物テロに使用される可能性のある生物剤のリストに掲載している。

5.サル痘の感染源は?

  げっ歯類が関係している疑いがあるものの、主なウイルス保有動物や宿主はまだ特定されていない。1970年にコンゴ民主共和国でヒトへの感染が最初に確認され、患者は9歳の少年だった。それ以来、ヒトへの感染症例の大半が中央・西アフリカの熱帯雨林地域で起きている。

  2003年にはアフリカ以外の地域で初の感染症例が米テキサス州で発生。ガーナから輸入した動物が関係したもので、感染したペット用プレーリードッグを介してヒトに広がり、数十人の感染者が報告された。

6.パンデミックの恐れは?

  アフリカ以外の地域でのサル痘の感染発生はまれだ。17年以降に他の地域に流入した事例は少なくとも8件で、通常は国外渡航者絡み。ただ、感染拡大につながることはまずない。

  ヒトからヒトへの感染で、サル痘ウイルスの遺伝子に感染力が増すような変異があるのではないかとの懸念も生じる。

  ポルトガルの研究者が23日公表したリポートによれば、最近採取されたウイルスのDNA配列には、関連するウイルスの自然進化を考慮した場合に予想されるよりも多くの突然変異が起きていたという。ただ、こうした遺伝子変化に何らかの臨床上の重要性があるかどうかはまだ分かっていない。

7.対処法や予防法は?

  症状は通常軽く、ほとんどの患者は数週間以内に回復する。治療は主に症状の緩和が狙い。米疾病対策センター(CDC)によると、サル痘の感染拡大を抑制する目的で、天然痘ワクチンや抗ウイルス剤、ワクシニア免疫グロブリンが使われる。

  英保健安全保障庁(UKHSA)によると、天然痘ワクチンはサル痘ウイルス接触の前後どちらでも使用可能で、感染予防率は85%に上る。同庁はサル痘感染と診断された人の濃厚接触者に天然痘ワクチン「Imvanex」を提供し、抗ウイルス薬としてシドフォビルとテコビリマットを挙げている。天然痘のワクチン株であるワクシニアウイルスの非複製型に基づく新たなワクチンが開発されており、その一つがサル痘予防向けに承認されている。

  感染を防ぐ主な方法は、サル痘感染の疑いのある患者を陰圧室に隔離し、医療スタッフが必ず適切な個人用保護具を着用するようにすることだ。

8.サル痘の検査方法は?

  サル痘の診断にはPCR検査を使い、患者の病変部のかさぶたなどから採取した検体にウイルスのDNAが存在するかどうかを調べる。米国では、各州の保健当局やCDCで検査キットが入手可能。

原題:Understanding Monkeypox and How Outbreaks Spread: QuickTake(抜粋)

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