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宇宙でも米中が対立、月資源巡り主導権争い-共通ルール不在のリスク

  • 次世代の宇宙活動を巡る基本原則さえ合意できず
  • 米国がまとめた「アルテミス合意」に中国は反対している

「新たな世界秩序がもたらされようとしている」。ロシアのウクライナ侵略後にバイデン米大統領は、世界の地政学変化をこう表現したが、同じことが地球外でも既に起きつつある。

  半世紀余り前に「スプートニク」と「アポロ」が競った時代のように、世界の超大国は再び宇宙で主導権争いを繰り広げている。しかし、大きな違いが一つある。米国と当時のソ連は国連を通じ一連の共通ルールを設けたが、今は次世代の宇宙活動を統括する基本原則さえ合意できていない。

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習近平氏(北京の人民大会堂で2021年に開催された中国の月に関する業績を示す展示会)
Photographer:Wang Ye/Xinhua Getty Images

  イーロン・マスク氏やジェフ・ベゾフ氏といった超富豪だけでなく、ルワンダやフィリピンといった新興市場国が次々に衛星を打ち上げ、宇宙が混み合っている今の時代において、宇宙探査を巡って米中間に協力関係が欠如していることは、極めて危険だ。

  オーストラリア戦略政策研究所(ASPI)で宇宙政策を研究しているマルコム・デイビス氏は、「交通ルール、特に資源へのアクセスを誰が定めるのかというのが西側諸国の強い懸念だ」と指摘。豪国防省で働いた経歴のあるシニアアナリストの同氏は「最大のリスクは相反する2つのルールの併存だ」と述べ、「中国が南シナ海全域で領有権を主張しているように、2030年代になると月で中国企業が資源のある土地の権利について言い張る可能性がある」と予想する。

  かつては人類全体のためライバル同士が力を合わせたフロンティアだった宇宙の地政学は今、米国およびその同盟国とそれに対抗する中国・ロシア勢という地球上での対立構造をそのまま反映するものとなっている。中国、ロシア両政府はウクライナや台湾での緊張をあおっているとして、アジアや欧州での米国主導の軍事同盟を批判。中国の国営メディアは米国が「宇宙版NATO (北大西洋条約機構)」の設立を望んでいると警告した。

Artemis I Wet Dress Rehearsal
米フロリダ州のケネディ宇宙センター
 Photographerr:Joel Kowsky/NASA/Getty Images

 

  論争の中心は、米国が起草した月や火星などの活動に関する法的拘束力のない一連の原則「アルテミス合意」だ。米航空宇宙局(NASA)によれば、1967年の宇宙条約に基づくこの合意は、この2020年代に有人月面着陸を行い、月の資源採掘を始めるという米国の「アルテミス計画」の基盤となっている。

  これまで19カ国がアルテミス合意を支持する一方、中国とロシアが同合意への反対を主導。中国の習近平国家主席とロシアのプーチン大統領は今年2月上旬、北京で首脳会談を行い、「制限のない」パートナーシップの一環として宇宙での協力強化を誓った。

Sources of Satellites

Most spacecraft in orbit are from the U.S. but China's closing the gap

Data: Union of Concerned Scientists

Note: Includes launches through December 2021

  アルテミス合意で中国が特に問題視しているのは、月面上での「安全区域」設定を認めている条項だ。米国および同合意のパートナーが設定できるこうした排他的な領域は、宇宙での「有害な干渉」回避を各国に義務付ける宇宙条約に準拠している。

  だが、中国はこの区域設定を国際法違反と見なし、あらゆるルールを国連を通じを決めるよう望んでいる。米国に次ぐ世界2位の経済大国である中国との良好な関係を望む多くの国連加盟国からの支持を期待できるためだ。米国の法律はNASAが中国側と交流を進めることを禁じており、国際宇宙ステーション(ISS)への参加を拒まれた中国は独自の宇宙ステーション建設に乗り出した。

2021 Computing Conference
中国の宇宙ステーション「天宮」(模型)
Photographer:Long Wei/Costfoto/Future Publishing/Getty Images

  米空軍戦争大学(AWC)で中国の宇宙プログラムを調査しているリンカーン・ハインズ助教は、米国主導の「秩序から外された中国は今では独自の道を歩んでいる」と説明。宇宙の秩序を巡り「2つの異なるビジョンがあり、協力は一切ない。宇宙空間で一貫性のあるルール体系を持てるのかという問題を提起される」と話した。ロシア国営宇宙開発企業ロスコスモスのロゴジン社長は4月下旬、ISSからの撤退を決めたと示唆。ウクライナ侵攻を巡る西側諸国の対ロシア制裁が理由だ。

  アルテミス合意に参加している日本と韓国は、それぞれ月探査を計画。同合意や中国・ロシア勢のどちらにもまだコミットしていないインドも月を目指している。プーチン大統領は先月、「月プログラムを復活させる」と表明した。

Choosing Sides

Unlike Beijing, Washington has convinced many countries to back its plan

Sources: US State Department., Bloomberg

 

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中国海南省の文昌衛星発射場
Photographer: Guo Cheng/Xinhua News Agency/Getty Images

 

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スペースXのロケット打ち上げ
Source: SpaceX

原題:China, US Race to Make Billions From Mining the Moon’s Minerals (2) (抜粋)

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