フアン被告、380年禁錮刑も-20兆円ポジション破綻の惨状明らかに
Brian Chappatta、Katherine Burton-
「取引の支払いを今日中にできるだろうか」と内部でパニック広がる
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フアン被告は株の買い増しを指示しその額は1日で9億ドルに達した
2021年3月23日のことだ。ビル・フアン被告が最高経営責任者(CEO)を務めるファミリーオフィス、アルケゴス・キャピタル・マネジメントの内部は、パニックに陥り始めていた。
27日公開された起訴状によれば、「これらの取引の支払いを今日中にできるだろうか。どうしたらいいか分からない」と次席が話したという。
フアン被告がひそかに積み上げた1600億ドル(現在の為替レートで約20兆円)相当という驚くべき株式ポジションが、一気に破綻しようとしていた。ウォール街は何が起きようとしているか全く分かっていなかった。
アルケゴスのポジション破綻は、野村ホールディングスやクレディ・スイス・グループ、モルガン・スタンレーに多額の損失を生じさせ、グローバル金融に衝撃を与えた。
それから1年余りが経過した27日、フアン被告は逮捕・起訴され、秘密のベールに包まれたファミリーオフィスで実際に何が起きていたか、連邦検察の公式な説明が初めて明らかになった。

自分の力で国際市場を従わせることができると信じていたフアン被告が、主要な金融機関を欺き、市場を操作する大胆なスキームを推進したと検察は主張した。全ての訴因で有罪と認定されれば、最大で380年の禁錮刑が言い渡される可能性がある。
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アルケゴスがポジションを積み上げていた銘柄の一つ、米バイアコムCBSの株価が下落し始めた後、破綻が訪れた。マージンコール(追加の証拠金請求)に応じられない可能性が高まり、資金を提供していた金融機関にもパニックを引き起こした。
フアン被告はトレーダーに株の買い増しを指示し、その額は1日で9億ドルに達した。チーフリスクディレクターのスコット・ベッカー氏は反対し、ヘッドトレーダーのウィリアム・トミタ氏もフアン被告に訴えたが、「注文を出し続けるよう言われた」という。ベッカー氏とトミタ氏は有罪を認め、米当局に協力している。
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アルケゴスがウォール街の金融機関を欺き、ポジションを偽った多くの事例にも起訴状は言及した。
中国でオンライン学習事業を展開するGSXテクエデュ(跟誰学)の米国預託証券(ADR)関連では、「GSXへの一番の関心をカムフラージュするため、アルケゴスのポートフォリオや投資の関心についてゴールドマン・サックスと話し合う際、トミタ氏はフアン被告の指示の下、『ダミー』ないし『サクラ』の名前を示した」という。
ベッカー氏もUBSグループに対し、「アルケゴスの上位ポジションは全般にアマゾン(・ドット・コム)やグーグル、マイクロソフト、アップルといった流動性の高いテクノロジー大型株だ」と説明していたが、「実際にはアマゾンもグーグルもマイクロソフトもアップルも、トップ10にはなかった」と起訴状は指摘した。
原題:Hwang’s Arrest Reveals Surprising Details on Spectacular Decline、
Bill Hwang’s Archegos Catastrophe Was Wilder Than Anyone Knew(抜粋)