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塩野義の国産コロナ治療薬申請から2カ月、いまだ承認が下りない背景

  • 現行制度の早期承認に厚労省は慎重、緊急承認可決も利用には時間か
  • 塩野義は米で申請、先越されれば日本で薬確保できない事態にも

塩野義製薬が新型コロナウイルス感染症の経口薬を申請してから2カ月がたったが、初の国産治療薬に厚生労働省は慎重な審査姿勢でいまだ承認に至っていない。衆院は19日に感染症の流行時などにワクチンや治療薬を緊急承認する制度の創設を盛り込んだ医薬品医療機器法(薬機法)改正案を可決したが、新しい制度を利用した承認では時間がかかりすぎるとの指摘もある。

  塩野義は2月25日に開発中のコロナ治療薬の早期実用化を目指して「条件付き承認制度」の適用を求めて承認申請を行った。厚労省は「慎重な審議が必要」との姿勢を続けている。

  従来の制度では、薬の有効性を明確に「確認」する必要があり、臨床試験では一定数の参加者を集める必要があったが、法改正で盛り込まれた緊急承認制度の下では有効性は「推定」の段階で承認できるようになる。

  厚労政務官を務めた自民党の小鑓(こやり)隆史参院議員はインタビューで、薬機法改正案が今後参院で可決され5月に成立したとしても、「具体的な審査の基準、判断基準はこれから決まっていく。もっと時間がかかる」と指摘。早期承認には「今申請されている制度での承認ということしかない」と答えた。

  塩野義は、3月中旬に米国立衛生研究所(NIH)の支援を受け、海外でも最終段階の第3相臨床試験を開始した。今後、試験結果を収集し米国でも申請を提出する予定で、米政府も購入に向けての交渉を始めている。小鑓氏は3月17日の参院予算委員会で、時間をかけ過ぎれば海外の承認に先を越されると懸念を示していた。

塩野義の新型コロナ経口薬、米国が購入を視野に交渉-関係者 (1)

  同社は段階的に生産能力を上げていく予定だが、3月末時点では100万人分を生産し、4月以降に年間1000万人分の供給体制の構築を目指す。生産能力が限られる中で米国が先に承認した場合、薬が先に海外へ出荷され、国内で国産の薬が十分確保できない事態になりかねない。その場合「国民はまったく納得いかないと思う」と小鑓氏は語った。

制度と条件の違い

  厚労省が慎重姿勢を貫くのにも理由はある。岸田文雄首相は、3月に参院予算委の答弁で「海外で承認されているものではないため、わが国でしっかり審査しなくてはいけない事情もある」と説明した。米メルクによる世界初のコロナ治療薬では、緊急承認の制度が存在する米国で申請から実用化まで2カ月半と後続のファイザーより時間がかかっている。

  また、日本でワクチン接種が米国より進んだことや試験時に流行していた変異株が異なることもあり、塩野義は臨床試験の主要評価項目の設定目標の一つである症状改善で、統計的に有意義な結果が得られなかった。症状改善を米国の臨床試験と単純比較するのは難しい上、メルクと同様、動物実験の際に胎児で異常が確認されている。

塩野義薬、新型コロナ経口薬の製造販売承認を申請-株価急伸 (1)

  小鑓氏は、根本的には日本の創薬力が落ちている中で、世界に向けて「日本市場は努力の甲斐がある市場」であることを見せるいい機会だとした上で、その「代表的な選手」が塩野義だと語った。

  塩野義の広報担当者は電話取材で、緊急承認の枠組みを利用することを検討しているかについて、現在条件付き承認制度の適用を希望して審議中であるため、コメントを控えるとした。

新型コロナ飲み薬、承認までの期間など比較

メルクのラゲブリオ(一般名:モルヌピラビル)

  • 初の実用化までの期間:約2カ月半
    • 2021年10月11日に米国で緊急使用許可(EUA)を申請
    • 21年12月23日にリスクの高い成人向け使用で米国の緊急使用許可取得
  • 申請時の提出データ:大人数の人を対象に行う第3相臨床試験の中間解析結果
    • 症例数762例
  • 日本での特例承認までの期間:3週間(21年12月3日に申請、24日に承認
    • 妊婦への適用可否:否(動物実験で胎児毒性の報告)

ファイザーのパキロビッドパック(ニルマトレルビル、リトナビル)

  • 初の実用化までの期間:約5週間
    • 21年11月16日に米国でEUA申請
    • 21年12月22日に米国でリスクの高い12歳以上向けで緊急使用許可取得
  • 申請時の提出データ:第3相臨床試験の中間解析結果
    • 症例数774例
  • 日本での特例承認までの期間:約4週間(22年1月14日に申請、2月10日に承認
    • 妊婦への適用可否:治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与

塩野義のS-217622

  • 初の実用化までの期間:審議中
    • 22年2月25日に「条件付き承認制度の適用」を希望して申請提出
  • 申請時の提出データ:第2/3相臨床試験の中間部分の解析結果
    • 症例数499例
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