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パイロット実験視野、段階的なスウェーデン型有力-日銀局長一問一答

日本銀行の神山一成決済機構局長は中央銀行デジタル通貨(CBDC)のパイロット実験を巡り、当初から大規模に行う中国型ではなく段階的・計画的に拡張するスウェーデン型が有力との考えを示した。一問一答は以下の通り。

インタビュー記事はこちらをご覧ください。

-実証実験フェーズ1の成果

「CBDCについて具体的な発行計画はないが、今後のいかなる展開にも備えるべくしっかり準備していくことが重要との観点から、実証実験を進めている。フェーズ1では7中銀間での議論も参考にしながら、三つの台帳パターンについて検証を行い、3月までの1年間で大きな問題なく終えた。三つのパターンがいずれも機能することを確認した」

-フェーズ2のポイント

「台帳から周辺機能にフォーカスを移していく。フェーズ1で確認したCBDCの基本性能に、より複雑な周辺機能を付け加えて実現可能性と課題を検証する。台帳のパターンにかかわらず、周辺機能をどんな形で実現すればいいのかを意識して検討を行っていきたい。いくつかの機能を優先して検討していくことになる」

-保有額と取引額の上限

「保有額・利用額の上限設定は必要だと考えており、フェーズ2でしっかり検討していきたい。上限を設けることで銀行券や預金からCBDCへの大量の資金シフトが回避・制限できるため、民間事業者からの要望も高い。ただ、制限を設ければ決済手段としてのCBDCの利便性が後退するというトレードオフの関係もある。実際にどのような金額に設定するかは、将来の決済システムの全体像の中でCBDCがどのような役割を果たすのかという中から決まっていく話だ」

「保有・利用額の設定金額という点でシステム的に対応することは可能だと思うが、保有額は価値保蔵機能をどの程度重視するかに関わる。利用額ではAML・CFT(アンチマネーローンダリング・テロ資金供与対策)に関する要請が、金額が大きいほど高まる。そうした目線も重要であり、しっかり議論を行っていきたい」

-付利の是非

「付利をしない可能性が高いと思っているが、できるかどうかを確認しておくことは重要であり、技術的な検討を行っている。もっとも、現在のような低金利環境の下でプラスの金利を付けることはないし、マイナスの金利も現金と併存の観点からあり得ない。両方の観点から付利を行う可能性は低い」

-実証実験の終了段階における制度設計の詳細

「CBDCの制度設計については、将来の決済システムの全体像に関する議論の中で決まっていくのが基本的な考え方。フェーズ2の終了段階で、台帳や付加機能を含めて具体的な制度設計が固まることはない」

-パイロット実験の判断

「CBDCの発行は国民の判断だが、パイロット実験については、そうした判断を行うための準備だ。フェーズ2が終わってさらに必要だということであれば、今後の状況変化に対応するために、次の段階に移っていくのは自然な考え方だ」

「どのような形で行うかは選択肢がある。中国のように実験用のシステムを本番用のシステムに転用することを意識し、当初から大掛かりにやるケースもある。他方、スウェーデンのように実験目的を絞り込んで、段階的・計画的に拡張していくやり方もある。制度設計が将来の決済システムの全体像の中で決まるという考え方の下では、当初から大掛かりな実験環境で決め打ちする中国のやり方ではなく、スウェーデンのように段階的・計画的に拡張して行くやり方の方がフィットする」

-CBDCの発行時期

「現時点で具体的なイメージがあるわけではない。次世代の決済システムを民間と一緒に考える点では、相応に時間をかけ丁寧に進めていくことが必要だ。ただCBDCが必要となってから実際の発行までの期間はできるだけ短くしておきたい。具体的なシステムを開発する期間は、欧州はシステムのデザインが固まってから3年と考えているようであり、そのくらいの期間がかかるというイメージはある。いかなる環境変化にも対応できるように、あらゆる観点から準備を進めていきたい」

-次世代の決済システム

「非競争領域を切り出し、中央銀行や政府が公共財として提供する考え方が今後必要になってくる。民間の事業者から見た場合、二重のコスト負担増になるということでは必ずしもないだろう。デジタルな決済サービスの提供をコーディネートせずに民間に任せきりにすると個々の事業者がそれぞれ基盤を作るので、そこに投資の重複が生じてしまう。CBDCの検討も、民間が競争しなくてもいい分野についてはしっかりと切り出して、中央銀行が提供するという検討の方向性の中にある」

-世界の中での日本の位置付け

「日本も含めて先進国では、将来の決済システムの全体像の中でCBDCの是非が議論されている。先進国は2020年1月に共同研究グループをスタートし、先端的な技術に関する知見の共有、先進国としてのCBDCの在り方について議論を続けており、日本の議論が遅れているとは思っていない。今後も先進国における決済システムの進化に貢献していきたい」

-最終形は先進国で似たものになるのか

「先進国の中銀が同時期に共同で大掛かりな検討を行うことは過去にはなく、一緒に将来の決済システムを作り上げていく機会が生じている。特にクロスボーダー送金の改善実現には、それぞれの国・地域のCBDCシステムを一緒に検討し、システム的につなぎやすくする方がいい。CBDCに限らず、デジタルなサービスはグローバルな視点を持つことが重要だ。金融サービスにおいてガラパゴス的な状況をつくらないように、情報技術の標準化を巡る議論には積極的に関わっていきたい」

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