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ツイッターよりビットコイン-未来読む共同創業者ドーシー氏が進む道

  • ドーシー氏は21年にツイッターCEO退任、スクエアの社名を変更
  • ツイッター株9.2%取得したイーロン・マスク氏とは盟友関係
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Photo Illustration: 731; Image: Getty Images

ジャック・ドーシー氏は、ツイッターなど2社の最高経営責任者(CEO)を務めていた2021年、米フロリダ州で開かれた暗号資産(仮想通貨)ビットコインの会議に参加した。

  絞り染めのTシャツを着て、白髪交じりのひげを伸び放題にした丸刈りのドーシー氏が登壇した時、上場企業2社のCEOというよりは、ビーチサイドのバーテンダーのように見えた。ツイッターは従業員の出張を禁止していたほか、アクティビスト(物言う投資家)のグループからはツイッターの経営に集中していないとして1年半にわたり更迭を求められていたにもかかわらず、同氏はこの会議に出席した。

  そこまでして出席したのは、ビットコインについて話したいことがたくさんあったからだ。言うべきことはツイッターや自身の決済会社スクエアに関してよりも多かったかもしれない。同氏はビットコインが銀行にとって代わり、発展途上国の起業家に経済的なチャンスをもたらし、再生可能エネルギーへの投資を促進すると主張した。 

  ドーシー氏は当然のことのように「ビットコインは間違いなく全てを変える」と述べ、「私の生涯で取り組むべきことの中で、これよりも重要なものはない」と語った。

Bitcoin Conference Draws Cryptocurrency Fans To Miami
2021年のビットコインの会議で登壇したドーシー氏
Photographer: Joe Raedle/Getty Images

  この5カ月後、ドーシー氏はツイッターのCEOを退任するとともに、スクエアの社名をブロックに変更すると発表した。新社名は暗号資産を支える主要技術、ブロックチェーン(分散型デジタル台帳)を想起させる。

ドーシー氏率いる決済サービスのスクエア、社名を「ブロック」に変更

  正式にはブロックがドーシー氏の本業だ。しかし、同氏の周りにいるほとんど全ての人が副業にかなり真剣であることを知っている。同氏の下で働いた30人余りの現・元従業員との会話に基づくと、同氏の現在の「お気に入りの子ども」はブロックではなく、ビットコインのようだ。

Twitter HQ
ツイッター本社(米サンフランシスコ)
Photographer: Smith Collection/Getty Images

  ドーシー氏は広報担当者を通じてコメントを控えた。同氏は過去2年間、ビットコインの非公式の精神的指導者と称して、 ツイッターを通じて常にビットコインを宣伝し、他の暗号資産プロジェクトに資金を提供するテクノロジー関連のベンチャーキャピタル投資家を批判してきた。

  昨年、テスラのイーロン・マスクCEOと出席した別の暗号資産の会議では、ドーシー氏はビットコインが「世界平和」を実現できるとまで述べた。(マスク氏はツイッターの株式9.2%を取得したことを今月開示し、数年にわたり培ってきたドーシー氏との関係をさらに深めた。マスク氏はその後、ツイッターに買収案を提示している)

  ドーシー氏の熱意は、ブロックやビットコインの未来に影響を及ぼす。ドーシー氏は経営者としての資質に疑問を抱かせる側面はあるものの、未来を読む上で間違うことがめったにないからだ。

  同氏は他の人が目を付ける何年も前に、特定のトレンドや製品に夢中になることが多いと、同氏の会社の従業員は話す。これはより目先の問題を無視したり、関心を失ったりする状況を意味しかねないが、結局は正しいことが多いという。ツイッター元社員の一人はドーシー氏について「製品マネジャーではない。製品発明家だ」と話す。

  同氏はツイッターとスクエア両方のアイデアを思い付いたほか、スクエアの消費者向け決済サービス「キャッシュ・アップ」も考案した。一時は大きな赤字だった同サービスは現在、月間ユーザー4400万人を抱え、21年の利益の約半分を占める。これはビットコインを売買する方法としても人気が高まっており、顧客は昨年だけでキャッシュ・アップを通じて100億ドル相当の取引を行った。

  ドーシー氏の支持者は、同氏のビットコインへの熱中を同じような見方で見ている。 「私は常に、ジャック(ドーシー氏)が将来を予兆させる全てのものに注意している」と語るのは、スクエアの銀行・ローン事業を率いていたジャッキー・リーセス氏だ。現在は自身のフィンテック企業に取り組んでいる同氏は、「彼は間違っていることよりも正しいことの方が多い」と述べた。

  実際、ドーシー氏は10代のころから暗号分野に関心があり、ビットコインの生みの親とされる「サトシ・ナカモト」が2008年に発表した論文をその直後に読んでいる。また、ビットコインを取り巻くコミュニティーが学生時代に利用したインターネット上のチャットルームを想起させるとし、仮想通貨というより金融システムの全面的再考を迫るものがビットコインだと捉えている。

  重要なことに、ドーシー氏はビットコイン以外の暗号資産や、ブロックチェーンを活用した分散型ウェブサービス、いわゆる「ウェブ3」技術にはあまり投資していない。ベンチャーキャピタル企業アンドリーセン・ホロウィッツのパートナーらはウェブ3の支持者で、この市場に多額の資金を投じている。 (「ブルームバーグ・ビジネスウィーク」の親会社ブルームバーグ・エル・ピーは、アンドリーセン・ホロウィッツに投資している)

  一方、ドーシー氏はウェブ3反対派だ。同氏はビットコインが唯一必要な暗号資産であり、ウェブ3は企業投資家やベンチャーキャピタリストが支配権を握り、全てを破壊する試みだと主張している。

ドーシー氏とアンドリーセン氏がツイッターで対立、「ウェブ3」巡り

  ドーシー氏のシリコンバレーの主要投資家への苦情も辞さない姿勢は、同氏のビットコインの「真の信者」としての立場も相まって、ビットコイン信奉者からの支持をさらに強める形となっている。

  ビットコインを支持するヒューマン・ライツ・ファウンデーションの最高戦略責任者、アレックス・グラッドスタイン氏はドーシー氏について、「暗号資産全般とウェブ3に関心があるなら、全くユニークではない」と指摘。「ビットコインにそれだけ強く集中しているという事実がユニークさを物語っている」と述べた。

  その上でさらに「彼は最終的には、恐らくツイッターよりもビットコインによって人々の記憶に残るだろう」と付け加えた。

原題:

Dorsey Tries to Become Bitcoin’s Spiritual Leader After Twitter(抜粋)

(原文は「ブルームバーグ・ビジネスウィーク」に掲載)
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