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日本郵船社長、前期純利益計画の達成に自信-ロシアの影響は限定的

  • 前期業績の数字を踏まえ増配については慎重に判断したい-長沢社長
  • 好調なコンテナ船事業が郵船など国内海運大手3社の業績をけん引

コンテナ船事業の好調が続く日本郵船の前期(2022年3月期)の純利益は会社計画通り、過去最高の水準で着地しそうだ。

  日本郵船の長沢仁志社長は7日のブルームバーグのインタビューで、ロシアによるウクライナ侵攻の前期業績への影響については限定的であったことに加え、円安による押し上げ効果もあると説明。最終的な数字はまだまとまっていないものの、9300億円としている前期純利益予想を「達成するには条件的には全く問題ない」との見方を示した。

  新型コロナウイルス禍の巣ごもり消費の増加や物流の混乱の影響でコンテナ船の運賃は高止まりしている。コンテナ船事業会社オーシャン・ネットワーク・エクスプレス(ONE)に共同出資する日本郵船、商船三井川崎汽船の3社は同事業のけん引により前期業績予想を繰り返し上方修正してきた。

Nippon Yusen KK CEO Hitoshi Nagasawa Interview
日本郵船の長沢社長(7日・都内)
Photographer: Shoko Takayasu/Bloomberg

  しかし、孝行息子として業績を引っ張ってきたコンテナ船事業の先行きには不透明感が増している。

  長沢氏は私見と断った上で、米連邦準備制度理事会(FRB)の量的緩和縮小、巣ごもり消費の一巡などの影響で需要は前期比で「決して楽観できない要素の方が多いのではないか」と警戒感を示す。供給面では、市場に投入される新造コンテナ船は今期(23年3月期)は限定的な規模にとどまるとみられるが、コンテナ不足の一因となっていた港湾の混雑は改善傾向にあるという。

  特に大きく影を落としかねないのが、ウクライナ侵攻に伴う燃料や原料価格の高騰だ。物価高の影響で「消費が一気にしぼみ、コンテナ船の需給バランスが一挙に壊れて、ガタガタになるリスクがあることは否定できない」と指摘する。そのため、今期のコンテナ船事業は前期並みの業績を維持できる可能性がある一方で、悪条件が重なって相当厳しくなることも考えられると述べた。

  コンテナ船事業の振れ幅が大きいことが予想される中、長沢氏は5月9日の決算発表までに今期業績についてどういった会社計画を示すべきか見極める必要があると述べ、具体的な水準を明言することは避けた。ブルームバーグが集計したアナリストの今期純利益予想の平均は8018億円となっている。

22年3月期は過去最高の純利益を予想

コンテナ船事業で不透明感が増す中、今期業績は下振れする可能性も

出典:ブルームバーグ

脚注:2021年度は会社計画、22年度は市場予想

  長沢氏は前期業績の上振れに伴い増額してきた配当について、さらなる増配を行うかどうかは数字がまとまった段階で慎重に判断したいとの考えを示した。同社が目安として掲げてきた配当性向25%に対する思いはあるものの、環境対策などに投資する必要もあることから社外取締役からは同方針に固執することについて異論の声も上がっており、「本当に悩みが深い」と語った。

  より長い視点での株主還元や資本政策については来期(24年3月期)からの中期経営計画の中で方向性を示す考えだ。長沢社長は、同社が目安とする配当性向25%は「海運会社の中では優等生でも世間から見れば平均にも足りていない」とし、株主への還元率の水準を含めて検討していくと述べた。

  また、1株当たり20円としている今の年間配当金の下限についても中計の中で見直す可能性があるという。

長沢氏のその他の発言:

  • 将来的に二酸化炭素排出がコスト化するとゲームチェンジが起こり、「環境に優しい船隊を持つ企業が圧倒的に有利になる」
    • 日本郵船は他社を上回る規模の液化天然ガス(LNG)やアンモニアなどを燃料とする船舶を投入する計画で、この先行投資は「将来間違いなく意味を持って返ってくる」
  • 船舶ゼロエミッション化などに向け巨額の投資計画があるが、借入金やグリーンファイナンスの比率は決まっておらず、利用可能な手法の中から目的に沿ったものを活用していく
  • ロシア海運大手ソブコムフロットとの合弁会社はロシア極東の石油・天然ガス開発事業「サハリン2」のLNG輸送を手掛けており、同社が制裁対象となったことによる影響を精査している
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