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JPXがESG債普及の旗振り、日本初「デジタル環境債」で課題克服

  • 新システムで太陽光発電量などを自動記録、ESGデータ可視化
  • セキュリティートークンは社債との相性良い-JPX総研の高頭課長

ブロックチェーン(分散型台帳)技術を使ったグリーンボンド(環境債)を近く発行する日本取引所グループ(JPX)。取り組みを主導するJPX総研の高頭俊フロンティア戦略部課長は、デジタル化によりESG(環境、社会、企業統治)債の発行を巡る課題の解決策を提示し、普及につなげたいと意気込む。

Tokyo Stock Exchange After Disclosing Market Reform
JPXは今年度中にデジタル環境債を発行し、24年度末までにデジタル証券の流通市場も立ち上げる
Photographer: Toru Hanai/Bloomberg

  JPXは「グリーン・デジタル・トラック・ボンド」という名称のセキュリティートークン債(デジタル債)を2022年度中に最大で10億円発行する計画だ。機関投資家向けに公募するデジタル債は国内初となる見込み。JPXは24年度までにグループの二酸化炭素(CO2)排出を実質ゼロにする方針で、調達した資金で太陽光発電やバイオマス発電設備に投資する。

  環境債などのESG債は右肩上がりで増えており、ブルームバーグのデータによると21年度の発行総額は約3兆円と、19年度から約倍増した。ただ、発行体は調達資金の充当状況や環境改善効果などを定期的に開示する必要があり、投資家もESG効果のモニタリングが求められるため、双方にとって通常の債券よりも管理コストが高くなりがちだという課題がある。

ESG債発行額、21年度は約3兆円に

年度発行額の推移

ブルームバーグ

国内で発行された円建ての環境債、社会貢献債、サステナビリティー債、サステナビリティーリンク債、トランジション債

  そこでJPXはデジタル技術を活用した社債を自ら発行し、ESGデータの透明性向上やデータ収集の効率化を目指す新たなスキームを構築することにした。グループ内のデジタル事業などを集約して4月に事業を開始したJPX総研の高頭氏は、ESG債が抱える課題の解決策を示すことで「セキュリティートークンを利用した環境債を他の人も使いたいと思ってもらえるのではないか」と期待している。

  具体的には、太陽光発電設備などに設置されるスマートメーターで計測された発電量や、それに基づいて算出されるCO2削減量を自動的に記録してデータベース化するシステムを開発する。このシステムを使えば、JPXは環境債発行後に開示する資料などに載せる関連データをいつでもダウンロードでき、スマートメーターや電力会社から入手する手間が省ける。

  高頭氏は環境債の購入者もデータベースにアクセスしてデータを閲覧できるようにする考え。将来的には発電設備向け以外でも利用できるよう「システムを拡張していきたい」と述べた。

デジタルSLBや流通市場も

  同氏は「既存のいわゆる金融商品の中で、セキュリティートークンとの相性が最も良いのは社債だ」と話す。その理由として、株式と比べて電子化が遅れており、債券格付けの取得など発行にかかる初期費用が大きいことを挙げた。中でも、発行体が設定したESG目標の達成状況によって利率などの条件が変わるサステナビリティーリンク債(SLB)には、利払いの自動化などデジタル技術を活用することによる効率化の余地が大きいとみている。

  JPXは3月末に公表した新たな中期経営計画で、24年度末までにデジタル証券の流通市場を立ち上げる目標を掲げている。実現にはデジタル債の発行増加が不可欠だが、通常の社債投資と異なり、機関投資家向けのデジタル債には利子所得などの源泉徴収不適用の措置がなく、現状「税制がフィットしていない部分がある」と高頭氏は指摘する。

  デジタル債はこれまで金融機関が自社の役職員を対象とした実験的な発行に取り組んでいるが、事業会社の公募発行は丸井グループが準備しているカード会員向け債などに限られる。高頭氏は、税制改正を待たずしてデジタル社債の発行が「爆発的に増えるとは考えていない」と言い、市場創設に向けて関係省庁に税制面での対応を働きかけていく考えを示した。

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