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上海の都市封鎖、習主席体制で最大の危機誘発も-今秋の党大会控え

  • 食料などの必需品や自由を求める住民が異例の当局批判
  • ゼロコロナ制御不能なら国家主義的アジェンダ強化も-専門家

世界の大部分の都市が厳格な新型コロナウイルス感染対策から脱却に向かう中で、中国で最も国際化した都市である上海市では、住民の切羽詰まった声が漏れ出している。ペットは殴殺され、親は子供から離れることを強制される。高齢者は医療を受けることができない。ロックダウン(都市封鎖)措置で身動きがとれず 、「食べ物が欲しい」「自由が欲しい」などと訴える住民もいる。

  新型コロナ撲滅のため習近平国家主席(共産党総書記)が掲げた「ゼロコロナ」戦略をかつて断固支持した市民さえも、こうした状況に衝撃を受けている。食料品や医薬品などの生活必需品の入手も困難な現実は住民による異例の反発を引き起こしており、共産党による対策は新型コロナ感染症よりもひどいという言う人もいる。

  上海市で3匹の猫と暮らすリリー・チェンさんは「この国でわれわれを怖がらせるのはウイルスではない。高齢者や子供、ペットの健康で安全な暮らしにリスクをもたらす混迷するコロナ対策だ」と指摘。「私たちは今、自分たちの家族を守るために頼れるのは、政府ではなく自分たちだけであることに気づいた」と話した。

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都市封鎖中の上海で地元住民に食料や必需品を運ぶ作業員(4月5日)
Photographer: AFP/Getty Images

  やはり同市の住民であるレジーナ・リーさんは長年にわたり政府を支持し、3月28日から始まった都市封鎖の厳格な措置をも当初は擁護してきたが、弱者の間で広がる厳しい状況を見て考えを変え始めた。感染対策の作業員が犬を撲殺する映像がソーシャルメディアに投稿されたのを見て泣き崩れたというリーさんは、「市のことがもう分からなくなった気がする。私の頭には自分の犬を守ることしかない。犬を殺したいなら私を先に殺してほしい」と語った。

  不安の高まりは、習氏が2012年に権力を掌握して以来最大級の試練になるリスクがある。わずか数カ月後には同氏が異例の3期目入りを確実にするとみられる共産党大会が控えている。感染者急増で上海は事実上まひ状態にあり、企業は休業し、テスラなどの企業の工場は生産停止を余儀なくされている。

  共産党は引き続きしっかりと統率しているが、市民からの異例の批判によって、習氏が中国の優れた統治モデルの証拠としてコロナ感染防止戦略を宣伝することも難しくなる。

  上海市民の反発が広がれば、他の都市で封鎖や厳しい制限措置に抵抗する動きを誘発しかねない。自動車製造と農業の中心地である北東部吉林省では、ほぼ1カ月にわたるロックダウンで住民が食料や抗がん剤、粉ミルクが足りないとソーシャルメディアで不満を訴えている。

  台湾大学の陳世民准教授(政治学)は「封鎖措置が中国全土に広がれば、不満がゆっくりと燃え上がるリスクがある」と指摘。 「ウイルス戦略が制御不能になり、経済に大きな影響を与えた場合、習氏が3期目を目指す中で良い状況には見えない。その時点で習氏は国家主義的アジェンダを強化する以外に選択肢はないだろう」と予想した。

原題:Shanghai Lockdown Risks Becoming Biggest Crisis of Xi’s Tenure (抜粋)

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