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キエフ周辺でのロシア軍活動縮小は限定的な公算大、戦術的な意図も

  • 決定は東部ドンバス地方の攻撃に集中する戦略と合致
  • ロシアの現在の目標はルガンスク、ドネツク全体の制圧か-関係者

ロシアが29日、ウクライナ北部での軍事活動を「根本的に縮小する」と表明したことを受け、停戦合意への期待から原油価格が下落し株式相場は上昇した。ただ、慎重になるべき理由はなお大きい。

  ロシアの代表団を率いるメジンスキー大統領補佐官がトルコのイスタンブールで行われた停戦協議で、段階的な緊張緩和のためウクライナの首都キエフと北部チェルニヒウでの軍事活動を減らす決定を伝えた。ただ、これには戦術的な面もありそうだ。

  ウクライナ軍はロシア側に打撃を与え、キエフ周辺の一部地域を奪還していた。また、ロシア軍司令官も軍事作戦をウクライナ東部に集中させる方針を表明済みだった。南東部マリウポリでは、制圧に向けたロシア軍の激しい攻撃が最終段階にあるとみられている。

  段階的な緊張緩和は、停戦やキエフ周辺からのロシア軍の完全な撤退を意味しないと、ロシア大統領府に近い関係者1人は指摘した。またロシア側は、ウクライナが受け入れる可能性が低い大幅な譲歩をなお迫っている。

  ウクライナのゼレンスキー大統領の顧問を務めるアレクサンドル・ロドニャンスキー氏は、停戦協議後にブルームバーグテレビジョンに対し、「市場がこれほど強く反応したことにはある程度当惑した」と語り、ロシアを「本当に交渉のテーブルにつかせる唯一のことは、戦地でのウクライナの成功と制裁を通じたさらなる経済的圧力だ」と指摘した。

ウクライナのゼレンスキー大統領の顧問を務めるアレクサンドル・ロドニャンスキー氏がブルームバーグテレビジョンに語る
Source: Bloomberg

  米当局者や軍事アナリストも懐疑的な姿勢を示している。

  モスクワ在勤の政治コンサルタント、エフゲニー・ミンチェンコ氏は「イスタンブールでの協議後に双方が語ったことについて、極めて深刻な誤解があると思う」と説明。「私がこれまでに耳にしたのは、キエフとチェルニヒウの周辺で活動が減るということだけだ。これはロシア軍がドンバス地方でのウクライナ軍への攻撃にリソースを集中させるためだ」と語った。

  ロシア大統領府の考え方に詳しい関係者1人によると、ロシアの現在の目標は、東部のルガンスク、ドネツク全体を制圧し、ロシア国境から2014年に併合したクリミア半島に通じる回廊地帯を奪うことである公算が大きい。

  それには、国際的にウクライナ領土と認められている地域の約20%を恒久的に失うことを同国に受け入れさせる必要がある。ロシア側はウクライナの中立性、一部地域でのロシア軍駐留、国内軍事インフラを査察する権利なども要求するだろうと同関係者は指摘した。

Odesa to The Palanca Border Crossing Point Into Moldova
ウクライナ国外へ退避するため徒歩で隣国モルドバに向かう人々(3月17日)
Photographer: Jonathan Alpeyrie/Bloomberg

  ロシア大統領府に近い別の関係者によると、戦況がロシア側の目標通りに進み、ウクライナ軍が大きな敗北を喫しない限り、合意には至らない可能性が高い。

  米国防総省のカービー報道官は29日に記者団に対し、ロシアのプーチン大統領の目標はドンバス地方よりはるかに広範囲に及ぶと指摘。ロシア軍がキエフ周辺への攻撃を緩めたり同地域から部隊を撤退させたりすると錯覚すべきではないと述べた。

  29日には、ゼレンスキー、プーチン両氏による会談の早期実施に向け共通点は十分かもしれないとの期待も聞かれたが、今後の協議日程は決まっていない。停戦が早期に実現する兆しもほとんどない。

原題:

Russian Pullback From Kyiv Is Likely to Be Limited and Tactical(抜粋)

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