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台湾を「次のウクライナ」にするな、今ある危機からの教訓-社説

  • 真の成功は戦争に勝つことではなく、そうした事態を避けることだ
  • 今こそ中国の「グレーゾーン戦術」への対応を検討する必要

中国国営メディアの報道から判断すれば、習近平国家主席は3月18日に行われたバイデン米大統領との電話会談でロシアのウクライナ侵攻より台湾の問題を重視していたようだ。習氏が「台湾独立派」としている勢力を米国が支持することを恐れているとすれば、米国では多くの専門家がロシアの軍事攻撃に触発された中国が台湾侵略を図るのではないかと懸念している。少なくとも米国は、欧州の危機からそうした可能性にどう準備すべきかを学ぶ必要がある。

  理論的には、プーチン大統領のウクライナでの苦闘は、中国の指導者を躊躇(ちゅうちょ)させるはずだ。中国が台湾に攻め込もうとすれば陸海の攻略が必要だが、それよりもはるかに戦いやすい地形のウクライナでロシア軍は攻めあぐねている。その上、欧米は驚異的なペースで強力な対ロシア経済制裁を発動。北大西洋条約機構(NATO)加盟国がウクライナに提供した武器は限定的ながら、極めて有効であることが立証された。中国が台湾に軍事侵攻しようとすれば、戦闘の試練に耐え、テクノロジー面でも進んでいる米軍と直接対峙(たいじ)することになるかもしれない。

戦略的曖昧さ

  一方、中国の軍事力は習政権下で大幅に増強された。中国がロシア支援でその代償を払わなければならない状況に陥るか、あるいは国内で習氏の対応を疑問視する見方が強まれば、習氏が台湾に照準を定め支持固めを狙うことは容易にあり得る。

  米国が介入を公然と約束することは依然として賢明ではない。米政府が数十年にわたり台湾政策で採用してきた「戦略的曖昧さ」を放棄すれば、中国を不必要に刺激し、台湾のリーダーを鼓舞し、過度のリスクを招く恐れがある。

  ウクライナの危機は別の側面で行動を促すだろう。例えばロシアによる2014年のクリミア半島併合後、ウクライナ軍は演習を強化したことで多くを得た。米国は台湾向けの軍事訓練をさらに進め、ウクライナ兵士が肩に担ぎ極めて効果的に使用している対戦車・防空砲といった武器の配備も加速させる必要がある。中国による侵略を防ぐため必要となるであろう対艦ミサイルや機雷、ドローンの提供を増やすことも求められる。

台湾側の準備

  台湾側もまた、男性に課している軍事訓練の期間を現在の4カ月から1年以上に延ばすことを真剣に議論し始める必要がある。ウクライナ人のように台湾の人々が台湾の自由のために戦う準備ができていることを示せば、台湾が世界から支持を得るチャンスは高まるだろう。

  米国はこうした支援を行う良好な状況を確保するため、今こそ軍の再配置が必要だ。台湾有事を想定し、日本の南西諸島を含む太平洋地域での機動的な部隊配備について協議してきた米国はこうした地域全般で人員を計画的に配置し、軍事資産への将来的なアクセスを確保しておかなければならない。紛争が起きれば確実に標的になるとみられるグアムの米軍基地ではミサイル防衛の強化も必須だ。

グレーゾーン

  米国は今、本格侵攻に至らない中国の行動に対し、どのように対処すべきかを同盟国・パートナーと共に考えるべきだ。中国はいわゆる「グレーゾーン戦術」を用い、貿易に頼る台湾経済の封鎖を図る可能性がある。例えば、台湾で港湾の外側に機雷を「誤って」敷設したり、台湾が核兵器を製造しようと部品を輸入しているという言い掛かりを基に海軍が検疫に動いたりするかもしれない。台湾の友好国はそうした挑発にどう対応するか綿密な計画を立てておく必要がある。

  米国とその同盟国は、効果的な対中制裁とは何かについても内密に話し合っておかなければならない。ロシアの10倍の規模を持つ中国経済は多様化が進み、より広い世界と一段と深く溶け込んでいる。多くの国が中国との貿易に依存していることを踏まえると、積極的に対中制裁を科そうとする国を見つけることは難しいかもしれない。中国に真の痛みもたらす措置を特定しながら、不測の事態への備えを強化し、段階的により多くの国が関与し得るエスカレーション戦略を考案する必要がある。

  米国が忘れてはならないのは、安定的な対中関係が軍事力と同様、台湾海峡全体の平和維持に極めて重要だということだ。安定を保つには米中首脳間の電話会談などトップレベルのやり取りを含むより強い意思疎通と持続的な外交、危機管理ツールへの投資拡大が求められる。真の成功は最終的に米国が台湾を巡る戦争に勝つことではない。そうした事態になることを防ぐことだ。

原題:How to Prevent Taiwan From Becoming the Next Ukraine: Editorial (抜粋)

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