ロシアに対する空前の「ハイテク封鎖」、米国にも新たなリスク
Katrina Manson-
先端技術でのロシア孤立化、プーチン大統領を中国に接近させる恐れ
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オンラインサービスからの締め出しはロシア国内の反戦デモにも影響

A pedestrian wearing a protective face mask browses a smartphone in Red Square near the Kremlin in Moscow.
Source: Bloomberg
「iPhone(アイフォーン)」から防衛用電子機器に至るまで、あらゆる技術をロシアに使わせないようにするハイテク封鎖は過去に例のない規模での取り組みとなる。同時にプーチン大統領をさらに中国に近づけるリスクもはらんでいる。
米国は輸出規制を武器に、先端産業や高性能兵器に必要な技術からロシアを締め出す取り組みを主導している。プーチン大統領にウクライナ侵攻の代償を負わせるためだ。コンピューターや半導体、センサーなどの各メーカーはそのために、ロシアへの出荷を停止せざるを得なくなった。
米大手企業の多くはさらに踏み込み、ロシアへの技術提供を事実上ボイコットしている。こうした取り組みはウクライナの指導者らも後押ししており、その背景には、技術やデジタルプラットフォームへのアクセスを奪う事でロシア国民を抗議行動に駆り立て、プーチン氏の軍事行動を弱体化させようとの狙いがある。
しかし、これほどの規模でテクノロジーから孤立させる試みは前例がなく、ロシア国民1億4500万人が最終的にどんな反応を示すかも分からない。
ロシア人を各種オンラインサービスから締め出せば、反戦デモを組織しようとする民主活動家を妨害することになりかねない。インターネットの分断化がさらに進み、検閲や偽情報拡散がこれまで以上に悪化するリスクもある。

恐らく最も重要な点は、米国の競合国である中国にロシアを接近させる恐れがあることだろう。中国はロシアにとって最大の電子機器供給国だ。ロシアが輸入する半導体の3分の1、コンピューターとスマートフォン輸入では半分以上を中国製が占めている。
米軍事ストラテジストのピーター・シンガー氏は、ロシアに対するハイテク封鎖で最大のハードルは中国の存在になるだろうと指摘。「ロシアが技術的に完全に孤立することはないとみられる。ロシアには巨大な戦略的パートナーが存在し、利益獲得を狙って傍観者の立場を取っている」と述べた。
原題:
Tech Walls Off Russia Like Never Before, Posing Risks for U.S.(抜粋)