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日本はロシア石油・ガス事業対応を慎重に判断、当面保有継続-関係者

  • 資源乏しい日本にとってエネルギー安定供給と安全保障は重要-政府
  • シェルとエクソンはサハリン事業撤退も、トタルは追随せず継続

一部の欧米大手エネルギー企業がロシアでの石油・ガス事業からの撤退を表明し、日本の対応に注目が集まる中、同事業に関わる政府や企業の関係者は早期の判断を下すことには慎重な姿勢を見せている。

LNG Carrier Ship Arrives at Jera Thermal Power Station
LNGタンカー(千葉県富津市、2021年12月)
Photographer: Kiyoshi Ota/Bloomberg

  事情に詳しい複数の関係者は、政府や商社などが保有するロシアのエネルギー関連事業の権益の取り扱いについて、今後の対ロシア制裁などの状況を見ながら慎重に判断していきたい考えで当面は保有を継続していくことになると話した。政府は資源に乏しい日本にとってエネルギーの安定供給や安全保障は重要との考えで、事業に参画する民間企業もそういった観点については理解しているという。

  日本が関与するロシアのエネルギー開発事業を巡っては、英シェル(旧ロイヤル・ダッチ・シェル)が2月28日に極東の石油・天然ガス開発事業「サハリン2」から撤退すると発表したのに続き、米エクソンモービルも「サハリン1」からの撤退に向け、操業停止のプロセスを開始すると表明した。

  一方、仏トタルエナジーズはロシアでの新規事業に資金を提供しない意向を示したが、三井物産と石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)が関与する北極圏での液化天然ガス(LNG)プロジェクト「アークティック2」の権益を含めたロシア事業からの撤退表明は行っておらず、欧米の大手企業の間でも対応が分かれている。

異なる理由

  日本エネルギー経済研究所の橋本裕研究主幹は、日本の権益参画者は石油・ガスメジャーの撤退に「追随する同じ理由が必ずしもあるわけではない」と指摘。エネルギーの安定供給を含め、日本にはロシア事業に「関与し続けるための異なる考慮事項がある」と続けた。

  サハリン1の権益を30%保有するサハリン石油ガス開発(SODECO)の広報担当者は、現時点で情報収集を行っており、関係者と対応について検討していると述べた。保有権益の取り扱いについては決定したことはないという。SODECOに出資する伊藤忠商事石油資源開発INPEXの広報担当者も情報収集中などとし、丸紅はコメントをする立場にないとした。

  サハリン2に出資する三菱商事と三井物は、事業内容も含めて詳細を分析した上で政府や関係者とも今後の方針に関して協議を続け、適切に対応するとの立場だ。

開発事業  出資企業
サハリン1SODECO (経産省、伊藤忠、石油資源開発、丸紅、INPEX) 30%、エクソンモービル 30%、ロスネフチ 20%、インド石油天然ガス公社 20%
サハリン2ガスプロム 50%、シェル 27.5%、三井物 12.5%、三菱商 10%
アークティックLNG2ノバテク 60%、ジャパン・アークティックLNG (三井物、JOGMEC) 10%、 中国海洋石油集団 10%、中国石油天然気集団 10%、トタルエナジーズ 10%

  複数の関係者によると、シェルがそれまで事業パートナーに対して「サハリン2」から撤退しないよう要請していたこともあり、先週の撤退表明は関係する日本企業に衝撃を与えた。発表を受けて三菱商と三井物は政府と緊急協議を行ったという。関係者によると、「サハリン1」でも操業主体であるエクソンが撤退すれば同事業の継続が危機にひんすることになるため、同社の発表で参画する日本企業の間には動揺が走った。

  資源に乏しい日本の企業は国内向けの安定供給を確保するために政府の支援を受けながらロシアの事業に参画しており、基本的に利益のためにロシア事業に取り組む欧米の石油・ガスメジャーとは立ち位置が異なる。

賢く戦略的に

  萩生田光一経済産業相も7日の参院予算委員会で、サハリン1、2プロジェクトから日本企業が撤退することは簡単だが、「その後どこかの第三国が権益を取ってしまったら、ちっとも制裁にはならない」と指摘。資源に乏しい日本の国民生活や経済を守る観点から、岸田文雄首相とも相談しながら「賢く戦略的」に対応していく考えを示した。

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