パウエル議長「3月の25bp利上げ支持」-大幅利上げも否定せず
Craig Torres-
ウクライナ紛争の影響を確認しつつ慎重に進める必要
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データや見通しの変化に「機敏に」対応する必要-パウエル議長

米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長は半期に一度の議会証言を行い、3月に政策金利を0.25ポイント引き上げ、一連の利上げ局面に入ることを支持すると述べた。インフレが高過ぎる状態が続けば、より大幅な利上げの可能性を閉ざさないとも表明。ただロシアのウクライナ侵攻によって、見通しは不確実だと指摘した。
パウエル議長は2日の下院金融委員会の質疑応答で「25ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)の利上げを提案し、支持する方向に傾いている」と証言。「インフレが高まる、あるいは高い状態がより長引けば、一度の会合、もしくは複数の会合でフェデラルファンド(FF)金利を25bpより大きな幅で引き上げるもっと積極的な行動へ準備を整えるだろう」と話した。

金融当局者らは40年ぶり高水準に達したインフレへの対応に軸足を移しており、当局者数人はインフレが過度に進行した場合は年内の適当な時期に0.5ポイントの利上げを実施する必要があると公言している。2月の米消費者物価指数(CPI)は今月15、16両日に開かれる連邦公開市場委員会(FOMC)会合に先立ち、10日に公表される。
パウエル議長はロシアのウクライナ侵攻による不確実性を認めながらも、新型コロナウイルス禍に関連した政策支援を解除する必要性には変わりないと指摘。ただ「われわれが事を進めるに当たり、ウクライナ紛争が米経済に及ぼす影響を確認しつつ慎重に進めることが重要だ」と述べた。
議長は「ウクライナ侵攻とその後に続いている戦争、経済制裁や今後のイベントが米経済に及ぼす短期的な影響は、依然として不確実性が高い」とし、「この環境で適切な金融政策を策定するには、経済は想定外の形で変化するものだと認識する必要がある。これから出てくるデータや見通しの変化に応じて、機敏に対応する必要があるだろう」との見解を示した。
バークレイズの米国担当チーフエコノミスト、マイケル・ゲーペン氏はウクライナ危機について、「これは不確実性ショックだが、米国では経験上、不確実性ショックはリセッション(景気後退)を引き起こさない」と指摘。「人々は停止ボタンを押すかもしれず、モメンタムは鈍化する可能性もあるが、縮小ではない」と説明した。
金利先物市場は3月の利上げ開始と今年の計1.4ポイント前後の利上げを織り込んでいる。

パウエル議長は労働市場を「極めてタイト」だと表現し、最大限の雇用確保という目標を達成しインフレと闘う準備が整ったことを示唆。雇い主は働き手をなかなか確保できない一方、離職と再就職の動きに押されて賃金がこの数年になかったペースで上昇していると語った。
「強い労働市場を支える最善の策は、長期の景気拡大を促すことだと理解している。物価安定の環境でのみ、それは可能なことだ」と、これまでにも指摘した論点を繰り返した。
また中立金利に関連して、インフレ抑制のために金利をどの水準まで引き上げる必要があるか明らかでなく、2-2.5%のレンジ内かそれを上回る必要があるのか「分からない」と発言。その上で、「いわゆるソフトランディング(軟着陸)を達成することができる可能性の方が大きいと考える。一般の理解よりもそれは過去の例でよくあることだ」と話した。
パウエル議長はバランスシート縮小の時期は示さなかった。利上げを開始した後、資産の削減は「主に再投資の調整を通じて予測可能な形で進める」と述べるにとどまった。バランスシートをより正常な水準に戻すのにかかる期間については3年の範囲内になるとした。
エバコアISIの中央銀行戦略責任者クリシュナ・グハ氏はこの発言について、資産のロールオフ(償還金を再投資しないことで保有高を減らすこと)の上限が月700億-800億ドル(約8兆1000億-9兆2000億円)になることを示唆しているとの推計を示した。
インフレ見通しについて議長は、供給制約が緩和し、財政支援の縮小と金利上昇に伴い需要も鈍化するとして、引き続き年内の上昇ペース鈍化を予想していると述べた。
原題:Powell Backs Quarter-Point March Rate Hike, Open to Bigger Moves(抜粋)