プーチン氏の軍事作戦、時間との闘いか-侵攻の遅れにいら立ちも
Marc Champion-
ロシア軍は戦力で勝るも予想以上に強いウクライナ軍の抵抗に直面
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ロシアは非武装化したウクライナを3分割する構想-当局者
ロシアのウクライナとの戦争のコストが急激に増加している。戦力的にはロシアが圧倒的に優勢だが、陸上でウクライナ軍の予想以上に強い抵抗に遭い、進軍が遅れている。
ロシアの計画に詳しい関係者1人によれば、同国軍部はより迅速な前進を期待していた。軍事作戦の詳細について大統領府はコメントを控えており、国防省は作戦が成功していると主張している。
想定外に強いウクライナ軍の防戦と、制空権を完全に掌握できていないことによる進撃の遅れを受け、ロシア当局がいら立ちを強めている兆しを米国は捉えている。米国防当局者が26日に明らかにした。ロシアのプーチン大統領は27日、北大西洋条約機構(NATO)加盟国からの「攻撃的な発言」を理由に核戦力の特別警戒態勢を命じた。大統領はさらに、ウクライナとベラルーシの国境で、ロシアとウクライナ両国の代表団が交渉することに同意した。
それでもロシア軍は首都キエフに近づいており、同当局者は27日、ロシアがこれまでに投入したのは動員可能な兵力の3分の2程度だと指摘した。

計画に詳しいロシア当局者1人は、侵攻が膠着(こうちゃく)状態にあるのではないかといった見方や人口の多い地域を標的にしているとの指摘に反論。計画は順調に進んでおり、都市部での市街戦を回避するよう練られていると説明した。
匿名を条件に語った同ロシア当局者は、作戦の軍事目標で設定したスケジュールは数日間ではなく1ー2週間だと述べ、その後にはウクライナ軍が粉砕され、親ロシアの政権に代わるだろうとの見方を示した。民間人が多数犠牲になるような都市攻略は計画にないとも付け加えた。

こうしたロシア側の目標に関する説明は、西側の軍事専門家の分析とおおむね一致している。プーチン大統領はウクライナの占領ではなく「非武装化」が目的だとしてきた。ただ、これまでの地上戦がそうした目標と全て一致しているようには見受けられない。ウクライナ軍は27日、第2の都市ハリコフで激しい戦闘があったと報告。破壊されたロシア車両の画像を示した。
米シンクタンク、ジェームズタウン財団のモスクワ在勤軍事アナリスト、パベル・フェルゲンハウアー氏は、「ロシアが依然としてイニシアチブを握っているが、ウクライナの抵抗で、当初望んでいた目標は現時点で達成できていない」と分析。ロシアの指導者はウクライナ国内の親ロシア感情に関する自らの思い込みで判断を誤った可能性があると指摘した。
戦況が長引くほど、ウクライナを支援する西側諸国には、肩に担いで発射する対空ミサイルや対戦車ミサイルなど新たな兵器を供給する時間が与えられる。24日にロシアが侵攻を開始して以来、米国はウクライナへの3億5000万ドル(約400億円)の追加軍事支援を承認。チェコやエストニア、ギリシャ、イタリア、オランダ、ポーランドも、対戦車ミサイル「ジャベリン」を含む武器供給を発表している。
ドイツは戦後維持してきた武器供与に関する方針を転換し、ウクライナへの兵器提供を発表した。

ウクライナのゼレンスキー大統領は26日、「われわれのパートナーから武器や機器がウクライナに向かっている。反戦連合が機能している!」とツイートした。
3分割構想
ロシア当局者はキエフでの軍の目標について、市全体を占領することではなく、ゼレンスキー大統領に圧力をかけることで逃亡か降伏に追い込むことだと説明。それを達成した後、親ロシアの新政権を樹立させ、いずれは選挙を実施させるとした。
同当局者によると、ロシアの構想ではウクライナを3分割。プーチン大統領が独立国家として最近承認した東部のドネツクとルガンスク、親欧州感情が強いリビウなどを含む西部、ロシアが事実上支配し、国家再建のコストは自らが負担しなければならない残りの部分から成る。
縮小後のウクライナは独自の軍隊を持たず、その領空はロシア防空システムに組み込まれ、ロシア軍が恒久的に駐留することになるという。
原題:Putin Races the Clock as Fast Military Advance ‘Frustrated’ (2)(抜粋)