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ウクライナ危機でサプライチェーン混乱、現地工場の操業停止相次ぐ

  • ロシア軍の侵攻でグローバル企業は操業停止、従業員の安全確保優先
  • 大手の自動車メーカーや食品・飲料メーカーなどが操業を一時停止
Truck drivers and residents during a traffic jam in Kyiv, Ukraine, on Feb. 24.

Truck drivers and residents during a traffic jam in Kyiv, Ukraine, on Feb. 24.

Photographer: Erin Trieb/Bloomberg

ロシアによるウクライナ侵攻は、現地に生産拠点を構える世界の主要企業が操業を一時停止せざるを得ない事態を招いている。これまでのところタバコや自動車、飲料などを生産する工場が停止しており、世界のサプライチェーン(供給網)にさらなる負担を強いることになりそうだ。

  日本たばこ産業(JT)は、ウクライナ中央部のクレメンチュクにある工場の操業を24日に停止したと発表した。同工場で働く約900人の従業員の安全を優先した。コカ・コーラHBCは同国内の事業を停止し社員を帰国させた。このほかカールスバーグネスレアンハイザー・ブッシュ・インベブとアナドール・エフェスの合弁であるABインベブ・エフェスなども現地生産を停止した。

  世界のサプライチェーンは、新型コロナウイルスの感染拡大やそれに伴う渡航制限、半導体などの主要部品の不足によってすでに大きな影響を受けている。しかし、ロシアによるウクライナ侵攻は、さらに緊張を高める可能性が出てきた。米国に本社を置く総合部品メーカーITTのルカ・シルバ最高経営責任者(CEO)は、「この地域を通過しなくてはならない中国から欧州への輸送が影響を受けるだろう」と述べる。

海上輸送の運賃

  東京海上ホールディングス、三井住友火災保険、損保ジャパンは、黒海周辺を3月から危険度の高い「除外水域」に引き上げ、この海域を通過する際の保険料も上昇する可能性があると明らかにした。

  2月15日、黒海とアゾフ海に隣接するウクライナとロシアの海域は、ロイズ・オブ・ロンドンロンドン国際保険協会などで構成する委員会が、リスクが高い海域のリストに加えた。

  ロイズは自社のサイトで「これまでのところ海難事故は起きていないが、判断ミスが起こる可能性はある」としている。

鉄道輸送の運賃

  新型コロナウイルスの感染拡大は世界の港湾の運営を混乱させ、海上輸送のコスト上昇を引き起こした。こうした事情を背景に、企業は鉄道輸送をより重視するようになっている。

食品・飲料の生産

  コカ・コーラHBCは「緊急時対応をとっている。ウクライナの工場での生産を停止し、従業員には自宅待機するよう指示した」と発表した。

  デンマークのビールメーカー、カールスバーグは同国で従業員1300人を抱える。三つのうちの二つの醸造所の操業を止め、従業員を帰国させた。世界トップの食品会社ネスレは、同国で従業員5000人を雇用しており、同国内の3工場を停止させている。

ロシアにおける自動車生産

  格付け機関のフィッチは、日本政府と欧州連合(EU)がロシアに対して「より広範な制裁」に踏み切ると予想する。もしそうなるとトヨタ自動車とドイツのフォルクスワーゲンは、ロシアでの事業継続が「各段に困難になる」とみる。フィッチはメモで、「両社の利害関係者らは、事業について再考するよう圧力をかけるだろう」と指摘した。

  フィッチによると、ロシアに対する米国政府の制裁は、ロシア国内の自動車メーカーの半導体不足を深刻化させ、EUから部品供給が得られなくなるリスクもある。一方で、ロシアは電気自動車(EV)向け素材の最大供給国の一つでもあるため、世界の自動車メーカーへの影響も懸念されるという。

  フィッチによると、ロシアはリチウムイオン電池に使うニッケルの供給国としては第3位で、触媒装置向けのパラジウムでは4割を供給する。また、米国の半導体用ネオンの約9割がウクライナから供給される。

  フィッチは「こうした材料が途絶えることになれば、世界中の自動車メーカー、特に欧州や北米のメーカーが費用面で大きな影響を受ける」としている。

原題:

Ukraine Conflict Adds to Supply-Chain Woes as Firms Halt Work(抜粋)

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