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三菱ケミHD社長、日本の石油化学業界は統合なくして生き残れず

更新日時
  • 各社単独では巨額投資困難、世界の強豪と戦えない-ギルソン社長
  • 時価総額2兆円規模の1-2社に、まず自社の関連事業を他社と統合

世界で脱炭素化の波が加速する中、日本の石油化学企業に必要なのは、各社の最も炭素集約的な事業を一つにまとめること。国内屈指の化学企業、三菱ケミカルホールディングスのジョンマーク・ギルソン代表執行役社長はこう呼び掛ける。

  ギルソン氏はブルームバーグのインタビューで、「石油化学企業には変革の必要がある。大きな資本が要るので単独ではできない」と語った。自社の持つ石油関連の資産を統合しないことには、日本の石油化学メーカーは世界の企業と戦えないし排出削減技術への投資もできないと話した。

  三菱ケミカルHDは昨年12月に発表した2025年度までの新経営方針の中で、エレクトロニクスとヘルスケア&ライフサイエンスを最重要戦略市場と位置付けた。一方、石油化学事業と炭素事業については分離・再編して独立化を進める計画を明らかにした。

Mitsubishi Chemical Holdings CEO Jean-Marc Gilson Interview
三菱ケミカルホールディングス・ギルソン社長(17日・都内)
Photographer: Akio Kon/Bloomberg

  ギルソン氏は、自身が描く計画の推進には、日本政府の後押しだけでなく、国内ライバル企業の支援も求めていくという。石油化学の分野で日本に必要なのは、よりクリーンなエネルギーの使用を可能にするよう「再編」できる十分な資本力を持つ「1つか2つ」の企業だとし、「5社も要らない。しかも全て規模が小さ過ぎる」と述べた。規模は時価総額で150億ー200億ドル(約1兆7000億-2兆3000億円)が想定されるという。

ダーティ・ケミカル

  世界の企業は、事業ポートフォリオの見直しやカーボンニュートラルに向けた目標設定を迫られている。国際エネルギー機関(IEA)によれば、化学セクターは石油や天然ガスの最大消費者で、エネルギーの最大の消費者でもある。

  三菱ケミカルHDは、まず自社の石油関連事業を他の企業と統合させ、その上で譲渡もしくは上場という出口戦略を目指す。21年4月、社長に就任したギルソン氏は、具体的な企業名こそ挙げなかったが、12カ月以内にパートナーとの合意にこぎ着けたいとの発言をしていた。

  ギルソン氏は石油化学業界が直面する現状を、日本の半導体や薄型テレビで起きた過去に重ねる。多くの企業が内部分裂を起こした結果、政府の支援によってルネサスエレクトロニクスジャパンディスプレイなどが生まれたが、かつて独壇場だったときの優位性はほとんど失ってしまった。

  ギルソン氏は、両社は設立に至る対応が遅過ぎたと話す。その上で30年に向かう中で石油化学業界が受けるプレッシャーは、より大きなものになるだろうと警告した。

  ブルームバーグ・インテリジェンスのアナリスト、ホレス・チャン氏は、ギルソン氏の計画は前向きで、自社の強みに集中することができると評価する。半面、国内外の同業者や機関投資家も実質排出量ゼロという同じ目標に向かって動いており、実行までに立ちはだかる困難も大きいとみる。

  また、ギルソン氏は日本政府に対しても、企業に脱炭素化に向けた支援を提供するよう求めている。政府は二酸化炭素排出量を13年比で30年までに46%削減し、50年には実質ゼロにすることを目指している。ギルソン氏は「日本にはインセンティブがない」とし、特に欧州と比べて「政府からの直接的な支援があまりない」と訴える。

コロナワクチンに期待

  一方、今後の戦略の柱としてギルソン氏が注目するのが、ヘルスケア事業だ。同社は子会社だった田辺三菱製薬を20年に株式公開買い付け(TOB)を通じて完全子会社化した。

  ギルソン氏は、連結子会社であるカナダのメディカゴ社が開発中の新型コロナウイルスワクチンが目先の収益源になることを期待する。田辺三菱製薬は24日、同ワクチンがカナダ政府の承認を取得したと発表した。同社は、日本国内でも22年度第2四半期の承認申請を目指し、第1/2相相臨床試験を実施している。

  今回、承認されたワクチンについては「おそらく承認される最後のワクチンの一つになる」とみる。ギルソン氏は、市場への参入が遅れたにもかかわらず、このワクチンは植物由来の新技術であることから、現在主流のワクチンに消極的な人々からの支持を得て、年間10億ドル規模に発展すると期待する。

 

(カナダで申請中のワクチンの承認に関する情報を追加します)
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