ウェブ3のアニモカブランズが日本進出、社長に米ファンドの谷氏
日向貴彦、Min Jeong Lee-
1月に日本で11億円の出資受ける、4月には都内でオフィス開設へ
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調達先のファンドには講談社や西鉄、三井住友信託銀などが参加
非代替性トークン(NFT)やメタバース(仮想空間)のゲームを手掛けるオーストラリアのアニモカブランズが日本に進出する。米ヘッジファンドのミレニアム・キャピタル・マネジメントのマネジングディレクターだった谷元樹氏(48)が社長に就任し、4月には東京都港区にオフィスを開設する計画だ。
アニモカブランズ日本の谷社長はブルームバーグのインタビューに応じ、日本で1月に大手出版社や銀行や生保、その他金融機関などから11億円の出資を受けたことを明らかにした。最高投資責任者にBNPパリパ証券前取締役の岡澤恭弥氏、最高技術責任者にカスタマイズ時計アンダーンの創業者であるロバート・トラン氏が就いた。
アニモカは香港を拠点にデジタルエンターテインメントやゲーム、ブロックチェーンなどを提供しており、ブロックチェーン技術を使った次世代の分散型ネットワーク「Web3(ウェブ3)」で先行するユニコーン企業。過去にオーストラリア市場に上場していた時期もあり、昨年12月末時点の企業価値は58億ドル(6700億円)になっているという。

谷社長は、日本はこれまでGAFA(グーグル、アマゾン・ドット・コム、フェイスブック、アップル)が主導するウェブ2の世界では後塵を拝したが、「ウェブ3の世界にはきちんとついていかねばならない」とし、「一投資家としてではなく、自らこの世界に入ることを決めた」と語った。コンテンツやクリエイターが素晴らしい日本の「古く深い⽂化を守っていきたい」とも言う。
同社は15日午後、日本に戦略的子会社を設立し、事業拡大に取り組んでいくと発表した。発表資料によると、講談社や西日本鉄道、三井住友信託銀行などが参加したファンドから資金調達をしたという。
金融やゲーム、音楽などの知財をNFT化
アニモカ日本は現在、出版や金融、自動車、教育、ゲーム、スポーツ、音楽、伝統芸能などの知的財産のNFT化やマーケティング戦略など約50のプロジェクトに取り組む。ブロックチェーンを使い、日本のコンテンツ所有者が自らNFTを発行し、世界で直接ファンを獲得できる仕組みを構築していく計画だ。
谷社長は、米フェイスブックのMeta(メタ)への社名変更や日本でのNFT、メタバースへの参入が急増している点に言及。アニメーションやゲームの分野にとどまらず、スケートボードやサーフィンなど過激要素を持つエクストリームスポーツでも日本のアスリートが世界にコンテンツを発信することが可能だとみている。
ウェブ3やメタバースの分野にはソフトバンクグループの孫正義社長も興味を示している。8日の決算説明会で孫社長は、メタバースは進化し、「ライフスタイル」になっていくと予測。ビジョン・ファンドの投資対象としてウェブ3分野は増えており、「メタバースは大歓迎」だと述べた。
アニモカブランズの出資先で、ブロックチェーン技術を使ったNFTゲームのサンドボックスにはソフトバンクGのビジョン・ファンド2号も出資している。
谷社長は1996年に米コーネル大学を卒業後、会計・コンサルティング会社のプライスウォーターハウスなどに勤務。JPモルガン証券では円債のトレーディングヘッドを務めた。