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KKR傘下マレリが事業再生ADR申請調整、負債1.1兆円-関係者

更新日時
  • 日産の台数減やコロナで経営悪化、来月初旬にも-債務圧縮で再建へ
  • 主力行のみずほ銀などが約1000億円の金融支援で当面の資金繰り守る

米投資ファンドKKR傘下で、日産自動車や欧州のステランティスを主要取引先とする自動車部品メーカーのマレリホールディングスが業績悪化を受け、私的整理の一種である事業再生ADR(裁判外紛争解決手続き)の申請に向けて取引銀行と調整に入った。早ければ3月初旬にも申請し、事業再生計画の策定作業に入る。

Marelli Corp. Headquarters
マレリの本社(さいたま市)
Photographer: Yuji Okada/Bloomberg

  公開されていない情報だとして匿名を条件に話した複数の関係者によると、マレリと主力行のみずほ銀行はADR申請に向けて、取引金融機関の理解を得るため個別に説明を始めた。マレリは一部の取引銀行に対し、2021年12月期の純損益は赤字となり、債務超過に陥る可能性があると伝えている。

  マレリは日産の業績低迷のほか、新型コロナウイルス感染拡大後にステランティスなど海外メーカーも含む自動車業界全体の生産停滞などの影響で業績が大幅に悪化。金融機関に対する負債額は昨年9月末時点で1兆1000億円を超える規模となっていた。

  関係者らによると、申請後、3カ月から半年をめどに事業再生計画を策定する。同計画には事業リストラや減資、債権放棄などが盛り込まれる可能性がある。

債権者全員の合意必要

  事業再生ADRで猶予や減免の対象となるのは主に銀行貸し付けなどの債権。債権者全員の合意が得られなければ民事再生法や会社更生法の適用を申請し、裁判所の下で再建や清算の手続きに入ることになる。

  当面の資金繰りを支えるため、主力行を中心に1000億円規模の金融支援を実行する。みずほ銀が200億円のつなぎ融資をするほか、みずほ銀と日本政策投資銀行はマレリが両行に預ける400億円の預金の取り崩しを認める方向で検討する。そのほか、3月以降に返済期日を迎える借入金のうち約500億円の返済を繰り延べる。

  マレリの最大顧客である日産は18年11月のカルロス・ゴーン元会長の逮捕以降、業績が急速に悪化。値引きの抑制など販売の質向上に向けて生産台数を絞ってきた中で、マレリもその影響を受けた。20年以降の新型コロナウイルスの世界的な感染拡大により業績はさらに悪化していた。

  関係者らによると、マレリの主要取引銀行はみずほ銀と政投銀のほか三井住友銀行、三菱UFJ銀行、三井住友信託銀行で、全て合わせると取引金融機関は国内外20数行に上る。みずほ銀などメガ3行は21年10-12月期にマレリの債務者区分を引き下げたことで、貸倒引当金を積み増している。

  報道を受け、日産株は午後の取引開始直後から上昇幅を縮小して下落に転じ、一時前日比2%安の602円まで値を下げた。

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  KKR広報担当のアニタ・デービス氏は「KKRはマレリとその全世界のチームを信じており、信頼性が高く高品質で革新的な部品を世界中の顧客に届ける仕事を全面的に後押しする」とコメント。同社としては「現在の自動車業界が世界的に直面している苦境にかかわらず、未来に向けて業界のリーダーを目指す取り組みを続ける」マレリを引き続き支援していくと述べた。

  マレリ広報担当の渡辺宏氏はコメントを控えるとした。

  日産広報担当の百瀬梓氏は「日産にとって、取引先である部品サプライヤーは重要なパートナーであり、これまでも必要に応じて、適宜連携しております」と電子メールでコメント。ステランティスの広報担当者にもコメントを求めたが回答を得られていない。  

  みずほ銀、政投銀、三菱UFJ銀、三井住友銀、三井住友信託銀の広報担当者はコメントを差し控えるとした。

KKRが買収

  マレリは自動車用ランプや運転席周りの部品などを製造。同社のウェブサイトによると、グループ全体で全世界に約170の施設と約5万4000人の従業員を持ち、20年の売上高は約1兆2660億円だった。

  ブルームバーグ・インテリジェンスの吉田達生アナリストはマレリの債務額が事業規模に比べて非常に大きいと懸念を示す。ピーク時に年間570万台規模まで拡大した日産の世界生産台数は現在は380万台まで縮小しているとし、200万台も減少してしまっては部品メーカーにとって厳しい状況になると指摘した。

  ADR手続きについては「トゥー・ビッグ・トゥー・フェイルで日産が巻き込まれることは取引行も望まない」として、債権者が合意に達する可能性は高いと述べた。ただ日産にとってのマレリはトヨタにとってのデンソーのような重要な取引先で、万一、合意に至らなかった場合には生産面での影響は大きなものになると述べた。

  KKRは16年に関連会社を通じ、総額約4983億円で当時のカルソニックカンセイ(現マレリ)に対して株式公開買い付け(TOB)を実施すると発表し、17年3月に完了していた。

  18年にはフィアット・クライスラー・オートモービルズ(現ステランティス)の自動車部品部門だったマニエッティ・マレリを62億ユーロ(現在のレートで約8100億円)で買収することで合意。19年にカルソニックカンセイと統合し「マレリ」が誕生した。 

  20年5月には業績悪化により、KKRや国内大手行から計1300億円の資金を調達したと発表していた。昨年にはベダ・ボルゼニウス最高経営責任者(CEO)が辞任し、KKRのパートナーであるディネシュ・パリワル氏がマレリの経営に当たっていた。

  パリワル氏は昨年、ブルームバーグが入手した会社の状況についての従業員向けメッセージで、22年にはマレリが事業の再生を目指す一方、資本増強も図るとの考えを示した上で 、「マレリにとって最もよい条件で支援が得られるようにするため、取引行を巻き込んで交渉を続ける」と伝えていた。

 

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