任天堂、今期営業益予想5600億円に増額、スイッチソフト販売好調
古川有希-
配当予想を上方修正、今期年間配当は1700円と増額も前期からは減配
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スイッチ販売台数目標2300万台に引き下げ、4-12月期の進捗率82%
任天堂は3日、今期(2022年3月期)の連結営業利益予想を5600億円に上方修正した。ブルームバーグが集計したアナリスト18人の予想平均5717億円を下回った。前期実績比では13%の減益となる。好調なソフト販売などが貢献した。業績予想の増額は今期2度目となる。
今期の業績予想 |
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発表によると、家庭用ゲーム機「スイッチ」本体の今期販売目標台数は2300万台(従来2400万台)に引き下げた一方で、ゲームソフトの目標は2億2000万本(同2億本)に引き上げた。昨年10月に発売した有機ELモデルは399万台売れた。スイッチ全体の4-12月期の累計販売台数は1895万台で、新たな目標に対する進捗(しんちょく)率は82%だった。

古川俊太郎社長は会見で、昨年の年末商戦では本体の販売も高い水準を維持でき、「良いモメンタムを持って22年に突入できた」と述べた。スイッチ発売以降の累計販売は1億354万台とWiiの1億163万台を超えたが、本体だけでなくソフトでも成長を目指せるステージにあるとして、歴代機種の「ライフサイクルを超えて成長する基盤は整っている」と強調した。
Speedy Switch
The Switch is fastest home console to reach 100 million sales
Sources: Nintendo Co., Sony Group Corp.
同社の発表資料によると、第3四半期(10-12月期)の自社製ゲームソフトの販売本数はスイッチ発売以降で最多規模になっており、新作と既存のソフトが継続的にバランスよく販売を伸ばしているという。
米国モーニングスターの伊藤和典アナリストは、任天堂は年末商戦に向けて「ある程度準備ができており、思ったほどダメージが大きくなかった印象」と指摘。1-3月期はポケットモンスターシリーズの新作発売により、ソフト販売も「もう一段上がる」とみており、今期の販売目標を超えるとの見方を示した。
同社は業績予想の修正を受けて、従来1株当たり870円としていた期末配当を1080円にする方針も発表。今期の年間配当は1700円と従来予想からは210円増額されたが、前期実績比では520円の減配となる。
Q3も好調
同時に発表した第3四半期の連結営業利益は前年同期比10%増の2526億円と、ブルームバーグが集計したアナリスト8人の予想平均2126億円を上回った。
10-12月期の業績 |
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間もなく発売6年目を迎えるスイッチはライフサイクルの中盤に入っているが、有機ELパネルを搭載した新型モデルを発売するなど長期にわたって成長する基盤づくりを進めている。足元では半導体不足の影響などで需要に供給が追い付かない状況が続く。
11月にはゲームソフトの開発体制の整備やユーザーとの接点の強化などに最大4500億円を投資する方針を発表。利益率の高いソフトのデジタル販売や有料会員サービス拡大に加え、人気キャラクターを活用した新規顧客の開拓にも取り組んでいる。
相次ぐ買収
ゲーム業界では、1月に米マイクロソフトがアクティビジョン・ブリザードを約690億ドル(約7兆9000億円)で買収すると発表。ソニーグループも米ビデオゲーム会社バンジーを36億ドルで買収すると発表するなど大型買収が相次いでいる。
古川氏は、買収そのものを完全否定はしないとした上で、同社ではブランドをよく理解したスタッフが育っており、「任天堂DNAと呼べる考え方」を持っていない人材がグループ内に急激に増えることは「プラスにはならない」との認識を示した。
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