ソフトバンクGのクラウレ副社長退社、コンブ氏がSBGI統括に
日向貴彦、沢和世-
クラウレ氏は9年間在籍、中南米ファンドやウィーワーク再建担う
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マネジメントが混乱している印象でネガティブとアナリストは分析

ソフトバンクグループは28日、マルセロ・クラウレ副社長兼最高執行責任者(COO)(51)が退社したと発表した。
発表資料によると、クラウレ氏はソフトバンクGに9年間在籍。退社理由については明らかにしていないが、合意に基づくものとしている。ブルームバーグは28日、クラウレ氏が自身の報酬や権限を巡って創業者の孫正義社長と衝突し、退社の準備をしていると報じていた。
ソフトバンクGのクラウレCOOは今後数週間に退社計画-関係者
クラウレ氏の退社に伴い、海外事業を統括するソフトバンクグループ・インターナショナル(SBGI)の新たな最高経営責任者(CEO)にミッシェル・コンブ氏が就任するとも発表。同社の運営や投資ポートフォリオの管理を行う。コンブ氏は2020年4月にSBGIのプレジデントに就いていた。

株式調査会社ライトストリーム・リサーチのアナリスト、加藤ミオ氏は電話取材でクラウレ氏の退社について「ネガティブ。マネジメントの中で混乱している、うまくいかない部分が出ている印象だ」と述べた。
さらに加藤氏は、足元の経済環境下でソフトバンクGの「投資戦略が通用していないから、こういう問題が発生した可能性がある」とも指摘。同社には「キーパーソンリスクがあり、孫社長とミスラ氏が主導権を持つ中、クラウレ氏の退職でバランスが崩れたのではないか」との見方を示した。
ソフトバンクGの経営陣を巡っては、元ゴールドマン・サックス出身で、副社長兼チーフ・ストラテジー・オフィサー(CSO)を務めた佐護勝紀氏が昨年3月末に退社した経緯がある。
クラウレ氏はボリビアから米国に移住し、1997年に米国でブライトスターを創業。同社を世界的な携帯電話端末の流通会社に成長させ、ソフトバンクGに売却した。その後は半導体設計の英アームや投資会社の米フォートレス・インベストメント・グループ、携帯電話会社のTモバイルUSの経営に関与し、中南米ファンドの責任者を務めた。シェアオフィスのウィーワークの経営再建も主導した。
クラウレ氏の2020年度の報酬は約18億円と、孫社長の1億円やビジョン・ファンド事業を統括するラジーブ・ミスラ副社長の約9億円を上回ったものの、19年度の約21億円からは減少した。

クラウレ氏はここ数カ月、ソフトバンクGに対する自身の貢献を訴えて最大10億ドル(約1150億円)の報酬を要求。グループが傘下に抱えていた米携帯電話サービス会社スプリントの経営立て直しと売却、不振にあえいでいたウィーワークの上場などを自身の功績と主張していたという。
ブルームバーグは10月、クラウレ氏が同社の中南米投資ファンドのスピンオフ(分離・独立)を提唱し、これに反対する孫社長と意見が対立していると事情に詳しい複数の関係者の話として報じた。関係者らは、孫氏との意見対立を受けてクラウレ氏が退社する可能性もあると指摘。本人は過去に辞任の考えを持ち出したこともあるが、実行には移さなかったという。
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