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厳格な水際対策で留学生らが続々日本離れ、国益を損なうとの見方

  • 世界の研究者らが岸田首相に早期緩和要請、15万人が入国待ちと推計
  • 海外で抗議デモ行う団体も、世界との架け橋の存在失うリスクとの声

主要7カ国(G7)の中でも突出して厳格な日本の水際対策を受けて、来日を希望していた海外の研究者や学生の一部は留学先の変更などの対応を迫られている。入国制限の緩和を求める声が上がっており、現状が続けば国益を損なう恐れがあるとの見方も出ている。

  オランダ人のデリア・フィサー氏(25)は、留学先を急きょ日本から韓国に変更し、2月下旬の渡航に向けた準備を進めている。すでに航空チケットや日本での住居を探し始めていたたため、昨年11月末の日本政府による外国人の新規入国停止のニュースには「とても失望した」という。

  高校卒業後に広島県で半年間のホームステイを経験して以来、日本に住むことを夢見て、母国の大学では日本語だけでなく文化や歴史、ビジネスについて学んだ。日本で就職するという目標もあったが、入国制限を機に将来を考え直した。いつか来日できることをまだ願っているが、「日本で家族を持ったとしても、何らかの理由で国に戻ってこれないという状況が起こり得るのではないか」と不安も打ち明ける。

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デリア・フィサー氏(2019年・京都市)
Source: Delia Visser

  100人を超す世界の研究者や大学教員らは18日、岸田文雄首相に宛てた書簡で水際対策の早期緩和を強く求めた。研究者や留学生は観光客と異なり「日本社会に貢献するために多大な時間と労力を費やしてきた人たち」だとし、入国制限が「国際社会との関係に悪い影響を与えて日本の国益を毀損(きそん)している」と訴えた。

  昨秋以来、欧州や韓国には留学できても日本には留学できないため、北米の大学生は留学先だけではなく専攻や語学の選択も変更し始めたという。大学院生の間では日本を研究の一環とすることをあきらめ、外国人研究者の入国が認められている国の研究に切り替える人たちもいるとしている。

  書簡を提出した研究者らによると、推定で15万人の留学生が現在、日本に入国できず待機している。その中には、国際交流基金フルブライト交流事業など権威ある機関が奨学金を授与した研究者も含まれていると、ハーバード大学のスーザン・ファー日本政治学教授は21日の記者会見で説明した。

外国人留学生の推移

コロナ禍の2020年、留学生は前年比10.4%減に

出典:文部科学省

  新型コロナウイルスのオミクロン株の感染拡大を受け、岸田首相は11日、水際対策を2月末まで維持すると表明した。政府は対面授業が必要で卒業や修了の期限が迫る国費留学生87人に対しては、例外的に入国を認める。

水際対策を2月末まで維持、自衛隊の大規模接種も-岸田首相

  日本を除くG7諸国はワクチンの接種証明や渡航前のPCR検査での陰性結果があれば、外国人の新規入国を容認している。日本は入国後10日間の自宅か宿泊施設での待機を求めるが、フランスやイタリアは日本人に対して待機を免除し、米国やカナダも入国後のPCR検査結果により待機を不要としている。韓国はビザの発給を継続しており、渡航前のPCR検査で陰性が証明できれば外国人も入国可能としている。

  世界保健機関(WHO)は19日、オミクロン株の発生後の渡航制限が感染拡大を防げず、「効果的でないことが明らかになった」との見解を示した。「実施する価値はなく、経済的・社会的な負担となり続ける」として、各国に渡航制限を撤廃するか緩和するよう勧告した。

オミクロン時代の安全な国番付、制限措置復活か正常化の道貫くのか

  ツイッターから派生した団体「Stop Japan’s Ban」は、日本政府に短期・長期ビザで渡航する外国人の家族や留学生、労働者、研究生の入国について簡潔明瞭な道筋を示すよう求めている。入国制限に抗議するデモをオーストリアやモンゴル、ドイツ、キルギスなどで行い、各地で平均100人以上が参加したという。今後は日本人とも連携し、東京と大阪の官庁前での抗議活動も計画していると、同団体の主催者のジェイド・バリー氏(29)は明かした。

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スペインの日本総領事館近くでの抗議(1月23日・バルセロナ)
Photographer: Sergio Bacen/Stop Japan’s Ban

  全寮制のインターナショナルスクール、ユナイテッド・ワールド・カレッジISAKジャパンは今期、日本のキャンパスで学ぶ予定だった学生32人をタイなどの加盟校へ移籍することを決めた。約80カ国から学生を受け入れているISAKは、約5カ月間にわたりオンライン授業を実施してきたが、深夜に授業を受けざるを得ない学生もいる状況を踏まえて継続を断念した。

  代表理事を務める小林りん氏によると、今年度の同校への出願者は昨年度から約6%減ったという。少子高齢化の進展で労働生産人口が急速に減少する中、「外国人労働者や留学生は日本を共に作っていくパートナーだ」とし、日本と世界の架け橋となる存在を失っていくリスクがあると小林氏は警鐘を鳴らす。

  水際対策の緩和を求める声は国内にも広がる。経団連の十倉雅和会長は24日、外国人の新規入国停止を「見直す時期に来ている」と述べた。外国企業との技術協力や企業の合併・買収(M&A)交渉などに支障が出ているという。楽天グループの三木谷浩史社長は11日、「今更、新規外国人を入れないことになんの意味があるのか?判断があまりに非論理的すぎる。日本を鎖国したいのか?」とツイッターで批判した。

「鎖国したいのか」、三木谷・楽天G社長が首相の水際対策を批判 (1)

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