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中国製EV、日本の宅配業者にじわり浸透-圧倒的な低価格武器に

  • SBSは今後5年で2000台導入、佐川急便も7200台の低価格EV活用
  • 「ラストワンマイル」では航続距離問題にならず、日本勢も対抗へ

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コロナ禍での宅配需要の高まりを受け、SGホールディングスが運営する佐川急便など日本の宅配業者が配送用の車両として中国製の電気自動車(EV)を活用するケースが増えている。地域の集配所から届け先までの短距離であれば航続距離も問題になりにくく、コスト削減を重視する業者の選択肢に入るようだ。

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SBSホールディングスが使用を予定している中国製EVトラック
 

 

  首都圏の「即日配送」を売りに急成長したSBSホールディングスは、東風汽車集団系など中国の自動車メーカーが生産するEVトラックの導入を予定している。同社は今後5年で自社の車両2000台をEVに置き換えるという。佐川急便は広西汽車集団が生産する7200台の低価格EVを活用する。

  SBSの鎌田正彦社長は、中国製EVを導入した理由について日本のEVが自社が求めるコスト基準に満たなかったためだとしている。さまざまな国内自動車メーカーと話したものの「価格が下がらない。どうやっても無理だ」と言われたため、安い車を選んだと説明。「高いトラックがあるから運賃を値上げしてくださいとは言えない」と話した。

  新型コロナウイルスの感染拡大により自宅で過ごす時間が増えたことで日本でもインターネットを通じた商取引が急増した。それに加えて日本政府が2050年までに13年比で温室効果ガスの排出量を46%減とする目標を掲げたことで、今後は国内でもEVの普及ペースが速まる可能性がある。

  SBSは最終的には約1万台の商用EVバンを保有する計画。こうした小型のトラックは一回の満充電で200キロメートルの走行が可能で、価格は380万円程度という。

  SBS即配サポートの総務部次長、宮原朗氏は数年にわたって使用した場合の電池の性能については心配だとした上で、現状では夜間に12時間充電すれば問題はないとの認識を示し、宅配業者が「ラストワンマイル」で使用する分には航続距離は大きな問題にならないと述べた。

  中国の自動車メーカーはEV比率が非常に低い日本の市場に可能性を見出している。米著名投資家のウォーレン・バフェット氏が出資するBYDは既に日本のEVバス市場で約7割のシェアを握っており、 30年までに4000台を普及させることを目指している。

  EV推進に向けて中国政府が多額の補助金を出していることもあり、EVの平均購入価格は欧米で上昇しているのに対して中国では下落している。自動車市場に関するデータ会社である英ジャト・ダイナミクスは昨年8月のリポートで、中国ではEVの新車が最も安い場合で4200ドル(約50万円)で買えるのに対し、欧州では1万7880ドル、米国で2万8170ドルと大きな開きがあった。

  かつて隆盛を誇ったものの中国製の安い製品に駆逐されて没落した日本の家電産業の連想から、国内自動車メーカーの先行きを悲観視する向きもあるが、高い安全性が求められる車では信頼性で不安が残る中国製が市場を席捲することは難しいという声もある。

  日本の自動車メーカーには、このまま何もしなければ中国勢にやられてしまうという高い危機感があるとSBSの鎌田氏はみている。一方で自動車調査会社、カノラマの宮尾健アナリストは現時点では中国のEVメーカーに価格面で優位性があるが、「3年後も最先端でいられるかは全くわからない」と述べた。

  日本のトラックメーカーも対策を取り始めている。いすゞは22年にEVトラックの量産を始める予定。日野自動車は今年の初夏に「日野デュトロ Z EV」を市場投入する。それに先立ち、国内宅配最大手のヤマトホールディングスと共同で日野製のEVを用いた温室効果ガス削減効果や集配業務の効率性の実証にも取り組む。

  SBSの鎌田社長は日本勢のEVトラックの価格はこれまでのディーゼルのトラックに比べて3倍程度になると見込まれるとし、物流企業のコストに見合うのは難しいだろうと述べた。

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