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ESG Weekly: 銀行で進む「脱・紙通帳」、150年の歴史に転換点

  • 通帳レス、みずほ75%・三井住友90%の新規顧客が利用
  • 現存する最古の紙通帳は1878年に第十国立銀行が発行

日本の銀行で「脱・紙通帳」の動きが広がり始めている。一部の銀行では、紙通帳の発行手数料を導入し、顧客のデジタル利用を促進するとともに、銀行側のコスト抑制や紙の削減を通じた環境貢献を両立させる取り組みも始まった。想定を上回る成果が表れつつあり、約150年かけて日本社会に根付いた紙通帳の歴史は転換点を迎えようとしている。

Japan's Mega Banks Ahead of Half-year Results
みずほ銀のATM
Photographer: Akio Kon/Bloomberg

  みずほ銀行が紙通帳の発行手数料を導入してから18日で1年がたつ。70歳未満の新規顧客から1冊当たり1100円の手数料を取るもので、有料化と同時に始めた通帳レスのデジタル口座の利用を後押しする狙いがあった。

  通帳レスのサービスは三井住友銀行が2002年、三菱UFJ銀行が12年に開始しており、みずほ銀は大手銀行の中で後発組だったものの、この1年の進捗(しんちょく)は上々だ。

  当初は新規顧客の約70%がデジタル口座を利用すると見込んでいたが、実際は75%程度で推移しており、みずほフィナンシャルグループ・個人業務部の荒川透次長は「非常に手応えを感じている」と話す。

  一方、三井住友銀も昨年4月から紙通帳の発行手数料を導入。対象は18歳から74歳までの新規顧客で、みずほ銀の体系とは異なる年間550円と設定した。同行では、手数料導入前からすでに60%程度の新規顧客が通帳レスのサービスを利用していたが、昨年4月以降は約90%に伸びた。

  三菱UFJ銀は今年4月から、一部の新規顧客に対する通帳手数料を新設する方針であることが、ブルームバーグの取材で明らかになった。大手銀行だけではなく地銀でも同様の動きが広がっている。

富士山2つ分

  銀行が紙通帳からの脱却を図ろうとするのは、デジタル化の進展の中で顧客ニーズが変化していることに加え、コストの抑制や環境面での貢献を強化できる利点があるためだ。

  紙通帳は課税文書と見なされるため、銀行は印紙税として1口座当たり年間200円を納める必要がある。税金が免除される規定もあるため単純計算はできないが、数千万の口座を持つ大手銀行では年間の負担額が数十億円に上るとみられる。

  環境への影響も大きい。三井住友銀は、繰り越しと新規を含めて年間約400万冊の通帳を発行している。積み上げれば富士山2つを超える高さで、使用されている紙の量はA4用紙に換算すると約1540万枚に上る。日本製紙が公表している試算によると、紙用の植林木約1180本に相当する規模だ。

  三井住友銀・事業統括部の竹添資生副部長は、紙通帳の手数料導入について「デジタル利用の促進や環境面への取り組みを、さらにひと押しするためだった」と経緯を語る。有料化に対する反発が少なかったのは、環境貢献を含めたSDGs(持続可能な開発目標)の考え方が社会に広く浸透し、理解が得られやすい地合いだったことが一因との見方も示した。

費用対効果

  それでも、長年無料で提供され、日本社会に深く根を下ろした紙通帳を愛用する人は少なくない。現存する国内最古の貯金通帳は、1878年に山梨中央銀行の前身である第十国立銀行が発行したもので、紙通帳には150年近くの歴史がある。

  昨年からスマートフォンでのネットバンキングを使い始めた大阪市の主婦、時津正代さん(67)も紙通帳の利用を続ける1人だ。「送金の手数料は安いし、残高確認も簡単にできて便利」と話す時津さんだが、通帳への記帳は今も欠かさないという。

  「記帳は長年の習慣になっているし、何より通帳は絶対に間違えていないという信頼感がある」と語る。

  世界に目を転じてみると、銀行の対応はまちまちだ。米シティグループドイツ銀行は現時点で紙通帳は発行していないが、韓国の国民銀行は利用者の希望があれば発行している。英銀HSBCホールディングスは、香港では高齢の利用者が希望すれば無料発行する一方、英国ではすでに発行を停止した。各銀行の対応については、東京拠点の広報担当者が回答した。

  日本での「脱・紙通帳」の動きについて、銀行業界に詳しいS&Pグローバル・レーティングの吉沢亮二シニアディレクターは「日本や欧州の銀行は米国などと比べて総資産利益率(ROA)が低く、収益性を高めるための可能な合理化は進めるべきだ。そうした点で、方向性としては正しい」と指摘する。

  一方で、「通帳の有料化の対象は一部の新規顧客にとどまるため、コスト削減の観点では劇的な効果は見込めない。日本の銀行が世界で戦うためには、費用対効果を一層考えていかなければならない」とも話した。

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