日銀の物価見通し・リスク評価変更を予想、金融政策維持へ-サーベイ
伊藤純夫、Cynthia Li-
物価上昇や円安への年内の対応措置は「可能性は低い」が8割
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リスク評価を変更しても政策正常化にはつながりづらい-野村証

日本銀行が来週開く金融政策決定会合では、原材料価格の高騰や円安進行を背景に、消費者物価見通しの上方修正やリスク評価の変更が行われると多くのエコノミストがみている。2%の物価安定目標の実現が展望できない状況の下、金融政策は据え置きが見込まれている。
エコノミスト48人を対象に5-12日に実施した調査によると、47人が17、18日の決定会合で金融政策の現状維持が決まると予想した。次の政策変更に関しては、96%が金融引き締めとみており、2022年中の引き締めを15%が見込む。それぞれ前回12月調査の91%、12%から増加した。
調査リポート:日銀1月決定会合でほぼ全員が現状維持を予測
物価のリスクバランス評価
大半のエコノミストは変更があり得ると予想
出所:ブルームバーグ・サーベイ
日銀は会合後に新たな経済・物価情勢の展望(展望リポート)を公表する。エコノミストの80%近くが、今回のリポートでこれまで「下振れリスクの方が大きい」としてきた物価のリスクバランス評価が変更される可能性が高いとみている。
日銀が物価見通しのリスク評価変更を議論へ、従来「下振れ」-関係者
UBS証券の足立正道チーフエコノミストは「今回はインフレリスクの方向性が下振れから中立に修正されるとみており、それに伴う政策的インプリケーションを日銀がどう説明するかが要注目だ」としている。
企業間で取引するモノの価格を示す企業物価指数は、昨年11月に前年同月比9.0%上昇と41年ぶりの高い伸びとなった。企業を中心にインフレ期待が上昇しており、価格転嫁の動きも広がっている。
物価上昇・円安対応
物価上昇や円安進行に対応するため、年内に日銀が何らかの措置を迫られる可能性について今回の調査で尋ねたところ、エコノミストの約80%が「可能性は低い」と答えた。
野村証券の松沢中チーフストラテジストは、リスク評価を変更しても「基本的に外部要因(特に原油高)であり、国内景況、特に賃金見通しの変化を伴っている訳ではないので、金融政策正常化にはつながりづらい」との見方を示す。
東短リサーチの加藤出チーフエコノミストは、年内に日銀が政策の微修正を行う確率は3割程度とし、「今後の為替、物価動向に注目すべきだ」と指摘する。
世界的に急拡大している新型コロナウイルスのオミクロン株の日本経済への影響について、83%が「経済の重しにはなるだろうが深刻ではない」と回答。円安が大幅に進み日本経済に悪影響を及ぼす可能性は、「低い」「非常に低い」が合わせて85%に達した。