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ウォール街が中国に注ぐ熱い視線変わらず-昨年苦難もチャンス確信

  • 21年は米中間の緊張や中国当局による規制面の締め付けが強まった
  • JPモルガン、モルガンSなど米銀や資産運用会社は競争に臨む姿勢
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Photographer: Photo Illustration: 731

米中間の緊張が高まっていた昨年夏、米銀JPモルガン・チェースのジェイミー・ダイモン最高経営責任者(CEO)はできるだけ早く香港を訪問したい考えを隠さなかった。11月には香港入りを実現し、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)以降で大中華圏を訪れた最初の大手米銀幹部となった。

  32時間をかけた渡航は数千人に上る香港社員に感謝の意を伝える機会とされたが、同地域と中国本土に対するJPモルガンのコミットメントをあらためて示すものでもあった。同行には融資や預金、トレーディング、投資などを通じ、約200億ドル(約2兆3200億円)の対中エクスポージャーがある。

Markets Unmoved As Federal Reserve Announces No Change In Interest Rates
The New York Stock Exchange building is seen along Wall Street
01: The New York Stock Exchange building is seen along Wall Street on August 1, 2018 in New York City. The Federal Reserve did not make a change in the interest rate as some experts had predicted. (Photo by Stephanie Keith/Getty Images)

  企業は一部の米政治家から、国家安全保障や人権を巡る懸念から中国から手を引くように求められているが、ウォール街の銀行はむしろ絆を深める方向だ。JPモルガンは昨年8月、中国企業との証券合弁会社を完全に傘下に収めた。今は、一部出資する資産運用事業についても同様の措置を望んでいる。モルガン・スタンレーは2022年に中国本土で5件の新たな銀行免許取得を目指している。ゴールドマン・サックス・グループは社員を倍増。シティグループも昨年12月、証券取引および投資銀行事業の免許を申請した。

  モルガン・スタンレーでアジア太平洋地域担当CEOを務めるゴクル・ラロイア氏は中国でのチャンスが大きいと捉え、本土・オフショア双方でビジネスを獲得しようと競う同行の方針について、「ほかに選択肢があるとは思わない」と語る。世界的な金融機関は中国でまだ大きな利益を得ていないが、それを理由に投資しないと表明すれば「チャンスを逃すことになる」と続けた。

  ウォール街は以前から中国を、最後の素晴らしい稼げるフロンティアと見なしていた。21年は多額の投資が実を結び始める年となるはずだったが、同年に入る前の段階でアリババグループ傘下のアント・グループによる350億ドル規模の新規株式公開(IPO)が中国当局から中止を強いられ、JPモルガンやシティなどは約4億ドルの手数料を手にすることができなかった。その後もテクノロジーや教育、不動産業界への当局の締め付けでIPO需要は抑えられた。

Banks Leading IPOs in Hong Kong, 2021

Data: Compiled by Bloomberg

  米当局も米市場に上場する中国企業の金融情報開示規則を強化しており、中国当局は企業データ管理を巡る懸念を理由に配車アプリ大手、滴滴グローバルに対し米上場廃止を強制的に求めるなどした。21年の中国企業IPOは金額ベースで52%減少し、滴滴などの米上場の引き受け業務を手掛けていたゴールドマンなどで手数料収入が減った。

  米上場廃止などの動きは一時的かもしれないが、香港市場や上海、深圳の取引所を介した上場が容易な状況にあって中国企業が海外で資金を集める必要性が低下していることが一段と明確になりつつある。

  中国の国内市場にさらに足を踏み入れることもリスクを伴う。国有証券会社が同国の確立された企業やスタートアップと取引を行う大規模なチームを現地で展開しているからだ。当局への提出資料によると、世界的な金融機関は中国本土の事業で20年に合わせて4800万ドルの損失を計上したが、中国の投資銀行は計244億ドルの黒字だった。

  ディールメイキング番付を見ても、外銀は何年も前からの取り組みにもかかわらず中国市場にさほど深く入り込んでいない。ブルームバーグ集計データによると、ゴールドマンは中国企業による同国での株式を通じた資金調達案件で15位にとどまる。

  米金融機関は国内でも中国を巡り批判を浴びている。ロムニー上院議員はヘッジファンド運営会社を率いる資産家レイモンド・ダリオ氏の中国投資について「嘆かわしいモラル(倫理)の崩壊」と批判。スコット上院議員は人権より利益を重視していると銀行を責めた。

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  しかしウォール街はひるんでいない。渡航を望んでいたCEOはダイモン氏だけでなかった。事情に詳しい複数の関係者によると、ゴールドマンのデービッド・ソロモンCEOも状況が許せばできるだけ早く中国を訪れると述べている。

  世界的な資産運用会社も中国の24兆4000億元(約444兆円)規模の投資信託市場で同様の動きに出ている。米資産運用会社ブラックロックは昨年9月に初の中国向けファンドで約10億ドルを集めた。フランスの資産運用会社アムンディは台湾を含む大中華圏の運用資産を25年までに2500億ドルに倍増する考えだ。

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  ダイモン氏は16年に香港で幹部を集め、中国のオフィスはニューヨークにあるJPモルガン本店に匹敵するものになるとの自身の構想を説明した。それはまだ実現していないが、提携先の証券会社買収の承認が下りた際には、「中国はわれわれの多くの顧客とJPモルガンにとって、世界最大の機会の1つだ」と述べている。

(原文は「ブルームバーグ・ビジネスウィーク」誌に掲載)

原題:

Wall Street Still Pines for China’s Billions After Troubled Year(抜粋)

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