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ESG Weekly: 日本企業に女性への「無意識の偏見」-東京五輪も力不足

  • 過半の五輪スポンサー企業がジェンダー平等で取り組み-独自調査
  • 日本は「企業主導型」、偏見脱するには成功事例共有が効果-専門家

ESG(環境、社会、統治)を重視する投資家の姿勢を受け、企業には取締役などへの女性登用圧力が強まっている。こうした中、今年は社会的課題としてジェンダー平等をうたった東京五輪・パラリンピックも開催された。日本では大会組織委員会の実践例をどう生かしていくかも問われている。

  閉幕から3カ月余り。組織委は22日、大会に関する報告書を公表した。その中でジェンダー平等について「国内課題を体系的に整理し、明確な枠組みを提示した上で戦略的に取り組めていれば、より多くのインパクトを社会に残せたかもしれない」と総括した。

  女性蔑視発言で引責辞任した森喜朗氏に代わり、2月に組織委会長に就任した橋本聖子氏は、要職への女性登用を矢継ぎ早に発表。女性理事の比率を就任時に掲げた40%超に高めた。しかし、こうした機運は一般企業などに大きく広がっていない。  

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IOCのバッハ会長らとオンラインで協議する橋本聖子氏(2021年3月)
Source: AFP

  内閣府もESGの観点から、女性役員がいる企業のパフォーマンスは高い傾向にあるとして積極登用を促しているが、同府によると上場企業の女性役員数(2021年7月末時点)は7.5%と諸外国に比べ低い水準にとどまっている。

東京五輪スポンサー企業の意識と課題

  ブルームバーグが閉幕後に五輪スポンサー企業に対して行ったアンケート調査でも、女性の積極登用など多様性の受け入れについて、意識の浸透に課題を感じる企業の姿が浮かび上がった。(この記事の末尾に調査結果の要点を掲載)

  スポンサー就任を契機に、新たにジェンダー平等への取り組みを始めた企業は半数を超えた。また、森氏の女性蔑視発言を受け、制度新設には至らずとも従業員の意識調査などに動く企業もあった。しかし、6割の企業で「アンコンシャスバイアス(無意識の偏見)」の存在が多様性実現の足かせになっていることも分かった。

  組織委理事でもある中京大学の來田享子教授は、森氏の辞任劇について「どんなに経営力が優れていても一瞬で信頼を失う事例を示した」と指摘。企業など組織がジェンダー平等を理解していても「トップの資質で左右されるとの危機感を社会や企業が共有した」と言う。

日本は企業主導型、欧州では政治主導も

  先行する海外で企業役員などに女性が登用される原動力はさまざまだ。欧州議会は13年に執行役員に占める女性割合を20年までに40%に引き上げる指令案を採択し、順守しない企業には公的機関への入札禁止など制裁措置も規定した。一方、英国では企業主導型のアプローチが取られた。

  大和証券の山田雪乃チーフESGストラテジストは英国の動きについて、企業が自主的に設定する目標の順守状況が開示対象であるため、業界や企業間で競争意識が働いたと分析する。

  運用会社のブラックロックは投資先企業に女性取締役登用など多様化を求め、米グラスルイスなど議決権行使助言会社も、女性取締役不在企業の指名委員会委員長を反対助言の対象としている。山田氏は「多様性の取り組みが遅れると投資資金が逃げていく」との可能性に言及した。

  山田氏は日本企業について、英国の「企業主導型」を目指す動きとなっており、アンコンシャスバイアスの克服には、「企業の成功事例を共有することで日本型を推進していくのが効果的」とみている。

アンケートは国内五輪スポンサー企業58社を対象に実施。6割に当たる35社から9月までに回答を得た。調査結果の要点は以下の通り。
  • ジェンダー平等に取り組み始めた企業は半数超
    • 新たに取り組みを始めた(54%)・始めなかった(45%)
    • 具体例は「ダイバーシティ&インクルージョン研究会」の立ち上げ、労使での事例研究会や意見交換の場の設立、LGBTやSOGI(性自認)の社内理解促進に向けた社内規定改訂など
  • 無意識の偏見(アンコンシャスバイアス)
    • 今後の課題を問う記述で6割の企業がアンコンシャスバイアスを挙げた
    • 「女性に任せられない仕事があるとの思い込み」、「仕事の効率化に同質性を求める傾向」がある
    • 男性の意思決定層が長く続いた企業文化では、多様な目線を生かせる環境づくりに時間がかかる
    • 日本人の表面的な親切さの裏にある「無関心」が課題、無関心さに気づく必要がある
  • 森氏の発言の影響
    • 森発言は具体的な制度新設などの契機になった(10%)・ならなかった(89%)
    • 89%の中にも「従業員への意識調査」、「会社のスタンスを従業員に説明」、「男女平等に関するステートメント策定」などに動いた企業は4割に上る
  • 高い企業の自己評価
    • 多様性への取り組みが充実している(13%)、まあ充実している(56%)、普通(30%)、あまり充実していない、充実していない(0%)
    • 補足記述では約半数の企業が改善余地などに言及した

 

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