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金融業界波乱の年、野村やみずほで課題浮き彫りに-SBI新風呼ぶか

  • 海外での成功の難しさや進化するIT活用の遅れは国内金融界の悩み
  • 新生銀を傘下に収めるSBIは3メガの脅威に、業界に新風との期待

金融業界にとって波乱の1年だった。証券最大手の野村ホールディングスが米投資会社との取引で多額の損失を計上し、3メガバンクの一角であるみずほフィナンシャルグループは相次ぐシステム障害で経営トップの辞任を迫られた。これらは日本の金融業界が抱える課題をあらわにしたとも言える。

  「米国顧客との取引に起因して多額の損害が生じる可能性のある事象が発生した」。3月の発表リリースで突如明るみに出た野村HDの巨額損失。米投資会社アルケゴス・キャピタル・マネジメントとみられる顧客との取引で計3111億円の損失を計上した。不安定だった海外収益の強化に努めてきたが、過剰なリスクを取った結果、大きな損失を招いた。

  今年8度のシステム障害を起こしたみずほ銀行。2019年に約4500億円を投じて本格稼働させた基幹システム「MINORI」について、みずほFGの坂井辰史社長は「本来あるべきシステムの運営・管理ができなかった」と振り返った。一連の障害の責任を取り、22年4月1日付で引責辞任する。

Mizuho Financial Group Announces Management Overhaul
辞任を発表したみずほFGの坂井社長(11月26日)
Photographer: Akio Kon/Bloomberg

  国内金融業界では、国内市場の収益性の低さに加え、海外市場での成功の難しさや急速に進化するIT(情報技術)活用の遅れに長年悩まされてきた。ジェフリーズ証券の伴英康アナリストは「野村HDやみずほのケースを含め、金融業界のあちこちで大きくリソースを割いたのにうまく使いこなせていないという事象が発生した。その意味では、課題が浮き彫りになった大変な年だった」と指摘する。

  東証1部に上場する81行で構成する業種別東証株価指数(TOPIX)の銀行業指数は18年初めから今月10日時点で約3割下落している。TOPIXは同期間に8.7%上昇した。今期(22年3月期)の連結純利益で7年ぶりの最高益更新を見込む三菱UFJフィナンシャル・グループの株価でさえ2割超下落している。

市場からの評価は低迷

株価純資産倍率(PBR)で3メガバンクは0.5倍以下

出所:ブルームバーグ

注:アジア時間10日の株価ベースで算出

  「日本の金融業界を変えないといけない」。金融機関に対する市場の評価が低い中、銀行業界では異例の敵対的TOB(株式公開買い付け)も辞さずに変革に取り組んでいるのがSBIホールディングスの北尾吉孝社長だ。

  かつて野村証券に在籍していた北尾氏は、野村HDの収益について「自らずっこけて大幅に利益を落としている」と語る。1995年に孫正義社長率いるソフトバンク(現ソフトバンクグループ)に最高財務責任者(CFO)として入社。その後、トップを務めた金融子会社が2006年にソフトバンクグループから独立し、現在のSBIに至る。

  安い手数料と使いやすいテクノロジーを駆使して顧客を獲得。前述の銀行業指数が3割下落した期間にSBIの株価は27%上昇した。

  北尾氏は「アグレッシブというほどアグレッシブでもない」と自身を語る。「革新的というよりはアメリカに遅れていることをやっている程度」というが、「今まで自分の事業において全て変革や改革を行い、旧態依然たるものを変えていこう、おかしなものを変革しようと動いてきた」とブルームバーグとのインタビューで述べた。

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インタビューに答える北尾社長(11月5日)
Photographer: Photograph by Shiho Fukada for Bloomberg Markets

  SBIは19年以降、地方銀行8行と資本・業務提携を結んだ。最新のテクノロジーのほか、保険から株式、投資信託などの取扱商品も提供している。出資第1弾となった島根銀行は本業のもうけを示すコア業務純益で赤字が続いていたが、20年3月期には黒字転換を果たした。出資第2弾の福島銀行の21年4ー9月期の本業収益は前年同期比で倍増した。

  北尾氏が掲げる「第4のメガバンク構想」の実現に向け、中核銀行と位置付けるのが新生銀行だ。SBIは11日、新生銀に実施していたTOBの結果を公表した。出資比率を47.77%に引き上げ、子会社化する。地域金融機関に対してノンバンク事業を中心としたサービスを提供する代わりに、余剰資金の運用を受託するという事業戦略を描く。

  モーニングスターのアナリスト、マイケル・マクダッド氏は、新生銀は地銀が単独ではできない海外資産への投資などを支援することができると指摘する。

  一方、北尾氏の戦略には懸念もある。金融庁関係者によると、SBIによる地銀への出資戦略は評価するものの、拡大するグループ全体を適切に管理できるかについては不安視する見方もあるという。6月にはインターネット経由で集めた資金を企業へ融資するソーシャルレンディング事業運営のSBI子会社が、融資資金の使途が投資家に説明した内容と異なっていたとして、金融庁から業務停止命令を受けた。

  それでも北尾氏の手腕に期待する声は多い。元銀行アナリストで東洋大学教授の野崎浩成氏は、北尾氏は金融分野での技術革新にいち早く取り組んだ人物であり、その先見性に学ぶべき点は多いと語る。JPモルガン証券の西原里江アナリストは「SBIはメガバンクにとって脅威となる可能性がある。金融業界に新風が吹き込まれると思う」とみている。

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