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Photographer: David Paul Morris/Bloomberg
QuickTake

インフレは紛れもなく存在、問題はいつまで続くか-QuickTake

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2021年初めには米連邦準備制度理事会(FRB)や債券投資家が「一過性」と片付けていたインフレも、年終盤には1990年代初期以来の水準に高進。冷静を維持していたFRBも軌道修正を示唆するようになった。それでも議論は終わらない。インフレは世界が平時に戻れば消えていくのか、それとも一人歩きしていくのか。

1.今までの経緯

  新型コロナウイルス禍で記録的な景気低迷に陥った昨年序盤から1年後、多くの国ではワクチンの普及と巨額の政府支援で個人消費が上向いた。一方でサプライチェーンの回復には時間がかかり、自動車向けなどの半導体生産は需要に追いついていない。その結果、製品価格が急伸、航空料金やホテル代も跳ね上がった。企業は労働者確保に苦労し、ボーナスや賃上げで採用に力を入れた。それが消費者物価の上昇に拍車をかけた。

2.争点

  21年に物価を押し上げた要因が定着し、さらには深まる可能性が懸念されている。一方でこうした状況は一時的で、サプライチェーンの目詰まりが解消され、労働市場に復帰する労働者が増え、旅行の需要が正常レベルに回復すれば解決するとの見方もある。21年前半の物価圧力は、ロックダウンの抑制から解き放たれたセクターに集中していた。木材価格は新築住宅の需要が戻るにつれて急上昇したが、やがて落ち着きを取り戻した。

Price Pressures Accelerate

U.S. November headline inflation increased by the most since 1982 on annual basis

Source: Bureau of Labor Statistics, Bloomberg survey

3.そして

  今年後半に入ると、インフレは食品や家賃にも広がり、エネルギーひっ迫で世界的に電力価格が上昇した。インフレが一時的では済まされないと考えた人の中には、物価が際限なく上がり続けることへの不安がよぎるようになった。これは実際に1970年代に米国などで起きた事象で、インフレ期待が賃金を押し上げる賃金・物価スパイラルと呼ばれる。

4.議論はどう変化したのか

  物価上昇が勢いを増し、FRBに軌道修正を求める圧力も高まった。FRB高官からは慎重な表現が増えるようになり、11月下旬になると、パウエルFRB議長が「一過性」という表現をやめる時が来たと宣言。利上げ前のプロセスとされる資産購入の段階的縮小(テーパリング)について、ペースを加速させる可能性を示唆した。だからといってインフレが定着したということではないと、パウエル氏は強調。財や労働力の不足は想定より長く続いているが、その結果としての物価上昇は「インフレ高進の形で恒久的な影響を残さない」と述べた。

5.他の中銀は

  ブラジルとニュージーランド、ノルウェー、メキシコ、韓国が今年1-9月に利上げに踏み切った。イングランド銀行(英中央銀行)は利上げの地ならしを進めている。13年ぶりの高いインフレを記録したユーロ圏では、欧州中央銀行(ECB)が資産購入プログラムの規模は縮小しても終了は計画していないとして、政策金利を据え置いた。 

6.投資家の反応

  市場が想定するインフレ期待を示すブレークイーブンレートは、今年終盤に上昇し、データ集計が始まった1990年代後期以来の高水準近辺となった。高インフレ定着説はこれで勢いを得た。一方でインフレ長期化を否定する陣営からは、10年債のブレークイーブンレートが5年債の同レートを下回っていることが指摘される。投資家は、物価圧力が一気に上昇しても長期的にはインフレは落ち着くとみているようだ。

7.リスクは

  インフレが定着すれば来年以降も大幅な物価上昇が続くことになり、テーパリングのペースは加速し、利上げまでの距離も見直さざるを得なくなる。インフレ過熱を放置すれば、急ブレーキをかける必要性が高まり、想定以上に大きなダメージを経済に与えかねない。しかし新たな感染の波に襲われる可能性もあり、そうなれば消費需要と雇用の両方にリスクが及ぶ。最大限の雇用実現を責務とするFRBにとっては頭の痛い問題だ。黒人の人権を訴えるブラック・ライブズ・マターの運動が活発になった20年以降、FRB当局者らは黒人など失業率の高い層が回復から取り残されないようにする重要性を強調してきた。

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原題:Inflation Is Here. The Big Debate Is, Will It Stay?: QuickTake(抜粋)

 

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