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Photographer: Waldo Swiegers/Bloomberg
QuickTake

新たなコロナ変異株「オミクロン」、現時点で分かっていること

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新型コロナウイルスの新たな変異株が南アフリカ共和国とボツワナで特定され、新規感染の急増との関連が指摘されている。世界保健機関(WHO)は「B.1.1.529」と当初呼ばれた同変異株をギリシャ文字のアルファベットから「オミクロン」と名付け、「懸念される変異株(VOC)」のリストに加えた。各国政府は南アと周辺諸国からの渡航を制限する措置を発表。既存のワクチンをすり抜けることで感染を再拡大させ、経済再開の取り組みを困難にしかねないと憂慮する声が聞かれている。

  オミクロン株について現時点で分かっていることを以下にまとめた。

1.これまでの変異株との違いは?

  欧州疾病予防管理センター(ECDC)によると、オミクロン株の特徴はスパイクタンパク質30カ所の変異と3カ所の小欠損、1カ所の挿入部位があることだ。変異の半数は受容体結合部位(RBD)に存在する。RBDはヒトのアンジオテンシン変換酵素2(ACE2)との結合に使われるスパイクタンパク質の部位。ACE2はコロナウイルスがヒトの細胞に入る際に標的にする酵素。ここに変異が生じると、ワクチン接種や自然感染で生まれた抗体がスパイクタンパク質を認識しにくくなる。

  モナシュ大学マレーシア校のウイルス学者、ビノド・バーラスブラマニアム氏がオーストラリア科学メディアセンターに語ったところによれば、変異のうち少なくとも3つは、ウイルスが抗体をすり抜けたことに関連付けられている。また、別のもう一つの変異は、ウイルスがヒトの細胞に入り込む能力を高めたと見受けられ、その結果、感染力が強まったという。

  ECDCは26日の資料で、オミクロン株はその特徴から感染力がより強く、ワクチン効果を低下させ、再感染リスクを高める恐れがあると指摘した。ただ、研究者らはまだ確かなことは分かっていない。

2.発生源はどこか?

  南アから世界保健機関(WHO)に最初に報告されたのは今月24日だったが、WHOによると、確認された感染症例で最初に明らかになったのは、9日に収集した検査サンプルからだった。ECDCによれば、ボツワナでも11日に検出された。英ロンドン大学ユニバーシティー・カレッジ(UCL)遺伝学研究所の科学者によれば、免疫不全の人の慢性感染の過程で進化したとみられ、治療を受けていないHIV感染者だった可能性がある。南アのHIV感染者は820万人と世界最多。南アで昨年特定されたベータ変異株もHIV感染者から広がった可能性が指摘されている。

新変異株「オミクロン」について現時点で分かっていることをブルームバーグ・インテリジェンスのSam Fazeli氏がリポート
Daybreak: Europe.”

3.どれだけ広がっているのか?

  南アの大学2校で遺伝情報の配列解析機関を運営し、生物情報学を研究するトゥーリオ・デ・オリベイラ氏によれば、ヨハネスブルクが含まれる州で24日に報告された初期段階のPCR検査結果では、新規感染1100件のうち90%がこの新変異株だった。ラマポーザ大統領は28日、感染者数の1日平均が約1600人と、前の週の約500人、前々週の275人から急増したと指摘。検査での陽性率は9%と1週間足らず前の2%前後から急上昇した。南アで完全なワクチン接種を終えた成人は36%にとどまっている。隣国ボツワナでは22日にワクチン接種済みの4人が感染したとの報告があった。香港では南アからの旅行者1人と、同じホテルの向かい側の部屋に隔離されていた別の1人から検出された。イスラエルでは最近マラウイに渡航した男性の感染を確認。ベルギーとイタリア、ドイツ、オランダでも感染が報告されている。

4.これまでの各国の対応は?

  英政府はアフリカ6カ国からの航空便を一時禁止すると先週発表。オミクロン株の感染が国内で3件確認される中で、今週から感染防止対策を強化する。シンガポール政府は26日、南アや周辺諸国を過去14日以内に訪れた人の入国を制限すると発表。欧州連合(EU)の加盟各国もアフリカ南部からの航空便を停止した。オーストラリアはアフリカ南部からの渡航者を対象に入国ルールを厳格化した。インドは南アとボツワナ、香港からの旅行者の検疫を強化した。南アのファーラ保健相は、各国による渡航制限は不当だと主張。同国政府がワクチン接種を促していると説明した。

英政府はアフリカ6カ国からの航空便を一時禁止すると発表
出所:ブルームバーグ

5.どれだけ懸念されるのか?

  判断するのは時期尚早だ。WHOは28日、「オミクロン株の感染による症状が他の変異株と異なることを示唆する情報は現時点でない」と説明。「従来の感染急増よりも速いペースで確認されており、増殖に強みを持っている可能性はある」とした。南アの入院率の上昇は、オミクロン株感染の結果ではなく、コロナに感染する人の数が全体的に増えていることが理由の可能性があると指摘した。ECDCは、感染力の強いデルタ変異株が再び勢いづいている欧州では、オミクロン株の出現と拡散が「極めて高い」リスクとなり得ると分析した。

  米モデルナのポール・バートン最高医療責任者(CMO)は28日、オミクロン株が既存のワクチンをかいくぐる可能性があると指摘した上で、その場合は改良したワクチンを来年の早い時期に提供できるとの見通しを示した。コロナワクチンはこれまでの変異株に対し、重症化と死亡のリスクを減らす効果を示してきた。メルクやファイザーが開発した経口薬などその他の治療方法がオミクロン株に効果があるかどうかは今後評価することになる。

6.WHOの提言は?

  他人との距離を1メートル以上保つこと、しっかり装着できるマスクの使用、換気のための窓の開放、換気の悪い空間や人々が密集している場所を避けること、頻繁な手洗い、咳やくしゃみの際はティッシュなどを使うこと、ワクチン接種などだ。

7.次の注目点は?

  WHOはオミクロン株の理解を深めるため世界中の研究チームと協力している。感染力の強さや症状を含む深刻さの度合い、ワクチンの効果、診断テストなどについて研究が既に始まったか近く開始される。深刻さのレベルが判明するまでは「数日間から数週間」かかるとしている。バイデン米大統領の首席医療顧問で米国立アレルギー感染症研究所(NIAID)のファウチ所長は、オミクロンについてさらなる研究が必要だとの認識を示した。ドイツのビオンテックは、同社とファイザーによるワクチンがどう作用するかについて、2週間以内に最初の試験データを得られる見通しだとしている。

原題:What We Know About Omicron, the New Virus Variant: QuickTake(抜粋)

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