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物価目標、2%にすることが最終目的ではない-中川日銀委員一問一答

日本銀行の中川順子審議委員はブルームバーグとのインタビューで、経済・物価情勢や金融政策運営、気候変動問題、女性活躍など幅広いテーマについて語った。インタビューは24日に実施した。詳細は以下の通り。

インタビュー記事はこちらをご覧ください。

-日本の経済・物価情勢、海外のインフレ懸念

「景気は引き続き厳しい状況にあるが、企業部門がけん引する形で基調としては持ち直している状態が続いており、前向きな循環メカニズムも継続している。物価は、携帯電話通信料の引き下げやGo Toキャンペーンの反動など一時的な要因もあって判断が難しいが、こちらも需給ギャップが大きく改善していない割には底堅い。海外のインフレ懸念については、産業構造や労働市場のあり方を含めて各国によって事情や状況が違うので、一概に比較はできない。ただ、日本も何らかの影響を受ける可能性があり、引き続き注視していくということに尽きる」

-政府の経済対策

「経済の大きな下支えになることを期待する。緊急事態宣言が明け、コロナの感染に気を付けながら経済を何とか回していきたい状況。今回の対策が実質的にも消費者のマインドにもいい影響を与えることを期待している」

日本経済は一進一退
 
 

-資源価格の上昇と円安の進行

「一般論として、以前の日本は輸出中心の産業構造だったが、当時に比べれば企業は海外進出し、海外生産・販売も増えており、影響は複雑化している。海外展開し、大きなオペレーションを持っている企業は円安が企業収益を押し上げる効果が大きい。一方、円安は輸入物価が上がる方向に影響するので内需型の企業などには厳しい。プラスもマイナスもあるので、どの水準がいいとか、円安・円高のどちらがいいという単純なものではない。ただ、短期的な大きな変動についていくのは難しいので、ファンダメンタルズを反映して安定的に推移することが最も望ましい」

-コロナ対応プログラムの延長の是非

「来年4月以降の特別プログラムについては、現時点で方針は決まっておらず、特にコメントできることはない。貸し出し動向を見る限り、大企業を中心に流動性の需要はすでに満たされ、借り入れの返済が進んでいるが、企業規模によって、あるいは内需型や対面型のセクターでは厳しいところが残っており、バラツキが出ている。感染の波が再び来ないか心配しながら、徐々に経済を動かしている状況の中で、経済活動に、特別プログラムの扱いを変化させても耐え得るだけの底堅さがあるかが判断の1番のポイントになる」

-地域金融機関を対象とした特別付利制度の見直し

「コロナ特別オペの実施期間が2回延長されたこともあり、オペ利用額の急増に伴って当座預金残高が拡大したことが影響している。コロナ特別オペはそもそも感染症の影響を受けた企業等をサポートするための制度であり、各地域金融機関を含めて目的に合った形で活用されていると思う。有効活用していただいていることに鑑みれば、コロナ特別オペ自体の存在と2回の延長には合理性があった。そこに関して金融機関行動の過熱ということにはない。状況の変化によって柔軟に変えるべきものは変えればいいし、今回の見直しは合理的だと思う」

Bank of Japan Board Member Junko Nakagawa Interview
インタビューに臨む中川審議委員(24日・日銀本館)
Source: Bloomberg

-ポストコロナの金融政策運営

「2%の物価安定目標の実現に向け、イールドカーブ・コントロール政策による緩和的な金融環境で経済・物価を支えていくやり方は、経済を下支えする効果があった。当然、必要な時はちゅうちょなく行動を起こすが、3月の政策点検で示したように、長期金利がゼロ%近傍で安定的に推移する下で、需給ギャップの改善とプラスの物価上昇率の定着という効果を発揮してきている一方、国債市場の機能度などへの影響も出ている。経済には連続性があり、ある時点を境にポストコロナに移るわけではないため、引き続き、物価安定目標の実現に向けて、イールドカーブ・コントロールの下で、副作用にも十分配慮しながら強力な金融緩和を粘り強く続けていくことが重要と考えている」

-ポストコロナのイールドカーブ

「経済を支える効果と金融仲介機能への影響も考えながら、その時々で適切なイールドカーブの形成を促していると理解してほしい。この1年半くらいは感染症の影響という非常に繊細な環境だったが、適切に対応してきたと思う。今後も繊細な環境が続くと見込まれる中、2%の物価安定目標を実現できる経済活動や成長に向け、次の施策を決める場合には、そうした環境を引き続き考慮していく必要がある」

-物価2%目標の妥当性と見直しの必要性

「安定的な経済成長や国民生活の安定のための物価目標であり、物価だけを2%にすることが最終目的ではないということを考えれば、1%への引き下げなど数字を変えること自体に大きな意味があるとは思わない。ぴったり2%ではなく、当然振れがあるので、その中でどのくらいを中央値として置きたいかといった場合の2%は、資本主義をベースとしている国において違和感はないと思う。確かに2023年度までの展望リポートの見通し期間内には達成できない見込みだが、足元では原油高や為替の影響などで食料工業製品などの値上げもあり、ずっとゼロ%近辺という感じではなく、少し上昇圧力が強まっている。市場関係者やエコノミストの間では、前倒しでもう少し高い数字になる可能性を見込む見方も出てきている中、物価動向を注視しながら、粘り強く適切な金融緩和を続けていく」

relates to 物価目標、2%にすることが最終目的ではない-中川日銀委員一問一答
 
Source: Bloomberg Economics

-気候変動対応オペが12月にスタートするが、中銀の役割は

「気候変動問題は経済・物価・金融情勢に中長期にわたって影響を与える要素の一つとなっている。これは市場メカニズムだけで何とかできる問題ではなく、国を含めた公的な部門による政策の関わりが不可欠である。その中で、中央銀行として、与えられたマンデートでできる範囲を考えた場合、個別の案件は金融機関の判断に委ねつつ、中立性に配慮しながら金融機関の投融資をバックファイナンスすることが適切な立ち位置での適切な行動だと思う」

「グリーンボンドについては、現行の社債買い入れでも要件を満たしていれば買い入れや担保の対象になり得る。ただ、その中でグリーンだけ選別することに関しては、市場中立性に配慮する観点から、検討すべきポイントなどもう少し時間をかけた方がいい。グリーンの定義やマーケット全体の大きさなども関係してくると思うので、それらの動向を注意してみていきたい」

-日本の女性活躍

「大学に入るまでは男女の数にさほど違いはないが、社会に出た瞬間から差がついているように見え、ちょっともったいないと昔から思っていた。大企業と中小企業のギャップもまだあると思うが、働き続けることに関する制度自体は整えられてきたと思う。コロナ禍による在宅勤務の増加もあり、男女を問わず育児休業を活用しましょうという動きも進んでいる。ただ、管理職やリーダーへの女性登用は遅れている。いわゆる就職氷河期の影響もあって、中堅層の母集団が男女ともに少ないことも一因だろう。今少し管理職の女性比率の低い時代が続く可能性があるが、あと数年すれば母集団が多い世代が上がってきて、一気に女性比率が高まることを期待している」

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