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敗色濃厚も「新たな毒薬」が企業防衛策に一石、新生銀があす臨時総会

  • 有事の毒薬条項とも言える新しいタイプの防衛策導入が目立つ状況に
  • 新生銀防衛策はポイズンピル本来の目的通りに使われる数少ない事例

嫌われ者の「毒薬」に新たな支持者が現れる。SBIホールディングスによる株式公開買い付け(TOB)の対象となっている新生銀行は25日、買収防衛策発動の賛否を問う臨時株主総会を開く。株主の権利に大きな影響を与えるだけに慎重な見方も多い買収防衛策だが、議決権行使助言2社や一部のアクティビスト株主が理解を示すなど従来とは異なる変化も起きている。

Financial Institutions in Japan As Libor Expiry Looms
新生銀が買収防衛策を諮る臨時株主総会を25日に開催
Source: Bloomberg

  新生銀が株主に諮るのは、TOBへの対抗措置として公表した「ポイズンピル」(毒薬条項)と呼ばれる買収防衛策。既存株主に新株予約権を無償で割り当て、SBIの保有比率を引き下げる仕組みだ。SBIは9月、新生銀に対し1株当たり2000円でTOBを実施し、出資比率を48%まで引き上げると発表。新生銀はTOBへの反対を表明している。

  ポイズンピルは、希薄化を招くことや買収への抑止力となることで好条件の案件まで退けてしまう可能性があることから、定時株主総会で株主に不人気の議案の一つだ。三菱UFJ信託銀行のまとめによると、日経225採用企業が6月に開催した株主総会の議案別平均賛成率で、ほかの提案がすべて90%超だったのに対し、買収防衛策関連のみ62%と低い。導入企業はここ数年減り続けている。

 

  一方、新生銀が導入を諮るのは「有事の毒薬条項」とも言える新しいタイプの防衛策だ。これまでの、いわば「平時の毒薬条項」が定時総会などで導入・延長されると、買収者が現れるたびに取締役会の決議だけで発動できるのに対し、新生銀の議案は事実上SBIのTOBのみを想定し、来年6月には失効する。株主は会社側に無条件の特権を与える訳でなく、SBIによる買収の合理性のみを判断することになる。

  「ポイズンピルは一般的に株主にとってそんなに有益だとは言えない」と、米ヘッジファンドのダルトン・インベストメンツ共同創業者のジェイミー・ローゼンワルド氏は話す。ただ、株主にとってよりよい取引になるなら、「合理的な理由」に当たる可能性もあるとして、社内で対応を協議中だという。ダルトンは新生銀株の約3%を保有し、度々経営に注文を付けてきた。

 

防御姿勢は取れない

Source: Bloomberg

Note: Data measures companies currently in the Nikkei 225 Stock Average

  株主側に立って買収防衛策に反対推奨することの多い議決権行使助言会社は新生銀側に回った。米インスティテューショナル・シェアホルダー・サービシーズ(ISS)は今回の防衛策に賛成を推奨。SBIの買い付け上限が48%にとどまることや、買収後の具体的な提案を示していないことなどを理由に挙げた。米グラスルイスもSBIが全株式を買い付けないことを主な理由として賛成を推奨した。

  ISSの石田猛行マネージング・ディレクターは買収防衛策について「平時の導入・更新についてISSは近年ほとんど全ての議案に反対推奨していると思う。一方、有事の防衛策はここ数年で5−6社程度の印象で、個別に判断するので賛成も反対もある」と説明する。一定の賛同を得られる防衛策の登場は、日本企業の買収防衛戦略が洗練されてきた表れでもある。

  「今回のケースはよくある何でもノーというような買収防衛戦略ではない」と、会社役員育成機構のニコラス・ベネシュ代表理事は指摘する。「ポイズンピルはもともと、買収の標的となった会社が、株主がより高く保有株を買い取ってもらえるための交渉カードと時間を得るために考えられた。その目的通りに使われた日本で数少ない例の一つかもしれない」。

  ポイズンピルは1982年に米国の法律家によって考案された。日本では2007年に米スティール・パートナーズからTOBを仕掛けられたブルドックソースが導入した事例の正当性が司法で認められ、導入企業が急増した。

  しかし、安倍晋三政権が企業統治改革に乗り出したことで風向きが変わる。15年に導入したコーポレートガバナンス・コードでは、防衛策について「経営陣・取締役会の保身を目的とするものであってはならない」と明記し、廃止の流れが加速した。

  一方で、有事型の毒薬条項を活用して買収阻止に成功する例が目につくようになってきた。20年に芝浦機械(旧東芝機械)の提案が臨時株主総会で可決され、村上世彰氏が関わるファンドがTOBを撤回。ISSは芝浦機械側に賛成推奨をした。また、東京機械製作所が今年10月の臨時総会を経て導入した買収防衛策を巡り、今月18日に最高裁は投資会社が求めた発動差し止めを退ける決定をした。

  買収防衛策を巡る環境が大きく変わる中、有事型の毒薬条項の活用が今後の新たな主流となるのか。複数の関係者によると、新生銀の大株主である政府が買収防衛策に賛同しない方針のため、新生銀の提案は否決される見通しだ。それでも、銀行を巡る初の敵対的TOBとして市場の注目を集めた新生銀の取組が一石を投じることになりそうだ。

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