コンテンツにスキップする

【ESG】疑惑でも影響、注視される社債発行主幹事のガバナンス

更新日時
  • 強制調査報道のSMBC日興、4000億円分の起債案件で主幹事外れる
  • ESG抜きに語れない、発行体は投資家離れ懸念-名商大の小林教授

金融商品取引法違反(相場操縦)の疑いで証券取引等監視委員会の強制調査を受けていることが明らかになったSMBC日興証券が、社債の引き受け主幹事から外れる事例が相次いでいる。グリーンボンド(環境債)などESG(環境、社会、企業統治)債の発行が増える中、仲介役である証券会社のガバナンスにも市場の厳しい目が向けられている。

  SMBC日興社員らが特定銘柄の株価を維持する目的で不正な株取引を繰り返した疑いがあるなどとし、監視委が容疑の関係先として本社を強制調査したと、日経新聞が2日報じた。以来、18日までに北海道電力やJERA、北陸電力、TDKなど計9社が指名済みだった社債発行の主幹事からSMBC日興を外すことを決めた。

Financial Institutions in Japan As Libor Expiry Looms
SMBC日興証券のロゴ
Source: Bloomberg

  過去の不祥事の際と比べて、今回は引き受け実績への影響が大きくなりそうだ。2019年には野村証券が情報漏えい問題で、18年には三菱UFJモルガン・スタンレー証券が国債先物の価格操作で、社債の主幹事から除外された事例がある。

  ブルームバーグのデータによると、不祥事発覚後の15日間に指名を失った案件の額が、発覚後2カ月間の社債市場での起債総額に占めた比率は、影響が相対的に大きかった三菱モルガンのケースでも約11%だった。それに対して今回、発覚後の15日間にSMBC日興が指名除外となった総額は約4000億円で、例年起債ラッシュを迎える11-12月の過去3年間の平均起債総額の約16%に相当する。

  「企業価値の評価において、もはやESG抜きには語れない風潮になってきている」。ファイナンスが専門の名古屋商科大学ビジネススクールの小林武教授はこう述べ、「主幹事は社債市場における重要なメーンプレーヤーなので、今回の件のような『疑い』があるだけでも発行体にネガティブな印象を持たれやすい」との見方を示す。

  今回、報道を受けていち早く主幹事変更に動いた北海道電はグリーンボンドを発行予定。北陸電とTDKもそれぞれESG債の発行準備で主幹事変更を決めた。小林教授は「発行体としては、せっかくESGのような社会貢献的な取り組みを進めようとしているのに、主幹事に疑惑があるようだと投資家から毛嫌いされるのではないか、という思考が働きやすい」と話した。

  ブルームバーグの18日時点のデータによると、SMBC日興は21年度の社債引き受けランキング(自社発行を除く)でみずほ証券、大和証券に次ぎ3位に入る。強制調査の判明後も楽天グループや日本ガイシなどSMBC日興を主幹事として新規に起用する案件はあるものの、起債が集中する12月にかけて指名のペースが落ちるようだとランキングにも影響する。

  SMBC日興の広報担当者は、個別銘柄についてのコメントは控えると話した。

  三井住友フィナンシャルグループの太田純社長は12日の決算発表後の会見で「親会社として申し訳ない。おわび申し上げる」と謝罪。調査が入っていることは事実で真摯(しんし)に協力していると説明した上で、引き受け案件の減少が業績に与える影響はまだ想定できないと述べた。

  三菱UFJリサーチ&コンサルティングの吉高まりプリンシパル・サステナビリティ・ストラテジストは、ガバナンスは「ESGのエンジン」だとし、中でも取引の公正性は「世界的に投資家が非常に気にするところで、発行体はこれまで以上に敏感」だと話す。「株価操作などは投資家への背任行為」であり、潔白が証明されるまで疑いのある証券会社と付き合うのは企業にとって評判リスクになると考える向きはあるかもしれないと指摘した。

(最終段落のコメントを一部差し替えます)
    最新の情報は、ブルームバーグ端末にて提供中 LEARN MORE