コンテンツにスキップする

コロナ禍の欧米で増えた2.7兆ドル超の貯蓄-慎重な消費者動かず

  • 消費急拡大なければ中銀が恐れるインフレ持続見通しに逆行の動きか
  • 消費に回らない理由は感染再拡大と回復、雇用見通しを巡る懸念など

新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)期間に欧米諸国の人々は、2兆7000億ドル(約308兆円)余りを蓄えた。これが消費に急いで回る気配はなく、大西洋の両岸で経済成長を消費が後押しするとの期待はしぼみつつある。

  北半球でロックダウン(都市封鎖)措置が緩和された今夏のホリデーシーズンに、ユーロ圏ではコロナ禍で増えた銀行貯蓄の8月の減少はわずかにすぎず、イタリアではなお増加したことがブルームバーグ・エコノミクスの集計で示されている。米国でも減少はなかった。

  一部のエコノミストが想定していた消費の急拡大が見られなければ、中銀当局者が恐れているインフレショック持続見通しに逆行する動きとなろう。世帯の貯蓄増は燃料費高騰に対応していく上で助けになり得るが、鈍い需要は企業が恒久的な値上げを断行する力を奪いかねない。  

Little Drawdown

Euro-area savers are slow to dip into money piled up during lockdowns

Source: European Central Bank data

Note: Country series estimated separately from regional aggregate; calculation uses a statistical filter to estimate how much households have saved during the pandemic in excess of what they would normally have done

  TSロンバードのグローバルマクロ担当マネジングディレクター、ダリオ・パーキンス氏(ロンドン在勤)は「積み上がった貯蓄が経済に戻りつつある兆候は見られない」と指摘した。

  ブルームバーグ・エコノミクスは新型コロナ危機が始まって以来積み上がった過剰貯蓄は、米国で約2兆3000億ドル、ユーロ圏でほぼ4000億ユーロ(約4640億ドル=約53兆円)と試算している。  

  欧州中央銀行(ECB)はロックダウンで積み上がった貯蓄について「大部分が使用されない」可能性を長らく警告してきたが、企業幹部やエコノミストらは成長を刺激する材料になると期待していた。 

Pile of Money

The U.S. stock of pandemic savings hasn't shrunk

Source: BEA, Bloomberg Economics

Piling Up

U.K. excess savings now total over $220 billion

Source: Bloomberg analysis of Office for National Statistics data

Note: Excess savings refer to amounts of saving over and above pre-pandemic levels

  貯蓄が消費に回らない理由には新型コロナ感染再拡大と景気回復のペース、雇用見通しを巡る懸念が含まれる。人口動態と消費パターンも理由の一部だろう。

  ドイツ銀行のアナリスト、オルガ・コタガ氏は、ロックダウンが終わっても失われたサービス消費を取り戻すことはできないため、貯蓄に影響するほどの消費は見られないと分析。9月21日のポッドキャストで「散髪を例にとると、ロックダウン中に行けなかった回数分のサービスを受けるわけではなく1回だ」と説明した。 

Consumption Shifts

Pandemic changed spending patterns of euro-area consumers lastingly

Source: ECB working paper (Hodbod, Hommes, Huber, Salle: The Covid-19 consumption game-changer)

  ECBの調査報告によると、消費者の選択も恒久的に変わった可能性がある。昨年のロックダウンで多くの人は特定のモノ・サービスがなくても不自由はないと知ったという。

  JPモルガン・アセット・マネジメントのチーフ市場ストラテジスト(欧州・中東・アフリカ担当)、カレン・ウォード氏は、一部貯蓄の利用は景気回復の持続に役立つと指摘。同氏はブルームバーグテレビジョンに対し「需要の追い風はかなり強い。今のところ景気回復が軌道を外れつつあるとは思わない」と語った。

  ただ、世界的なサプライチェーンの混乱でモノが不足し、需要はあっても消費につながらない場合もある。米ミネアポリス郊外でファイナンシャルアドバイザーのマイク・レバティ氏は、同氏の裕福な顧客たちは車やプール購入に貯蓄を回したくてもモノはないし労働力不足でままならない状態だと説明した。

Who Owns What

The bulk of U.S. assets are held by people over 55

Source: Federal Reserve

Note: Net assets data for 2Q 2021

  さらに、大量のマネーは社会の全てのグループに均等に広がっていないことも理由に挙げられる。高齢者や、もともと豊かな人たちが最も増やしているが、そうしたグループは往々にしてやたらな支出はしない傾向にある。ウェルズ・ファーゴのエコノミスト、マーク・ビトナー氏は「私の感覚では、そうした貯蓄の大部分は高中所得(UMI)と高所得者層の世帯で起きている」と語った。

米世帯のほぼ2割が貯蓄を全て失う、新型コロナ流行の中で-調査

原題:$2.7 Trillion in Crisis Savings Stay Hoarded by Wary Consumers(抜粋)

    最新の情報は、ブルームバーグ端末にて提供中 LEARN MORE