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【コラム】中国恒大危機、ミンスキーよりLTCMに近い-オーサーズ

The lights are on, but...
The lights are on, but... Photographer: NOEL CELIS/AFP/Getty Images

極めて重大な局面が訪れる恐れがある。今週は米連邦公開市場委員会(FOMC)をはじめ複数の中央銀行による政策会合が開かれるが、そのどれもが中国恒大集団の危機的状況で脇に追いやられている。そこで重要な疑問が浮かぶ。これはリーマン・ショック当時に指摘されたミンスキー・モーメントになるのか。それともロング・ターム・キャピタル・マネジメント(LTCM)的な局面になるのか。あるいはどちらでもなく、さほど重大な事態にはならないのか。

中国恒大の流動性危機、今週重大局面に-23日の社債利払い履行が焦点

  経済学者ハイマン・ミンスキーの名が付けられたミンスキー・モーメントは、長期間続いた投機の結果として信用が失われる現象で、2008年のリーマン・ブラザーズ破綻が最も有名な例とされる。一方のLTCMは1998年に破綻したヘッジファンドで、これも長期にわたる過剰投機の結果、突然信用が収縮した。両者の違いは当局の対応にある。LTCM破綻後の米連邦準備制度理事会(FRB)は債権者を集めて救済措置をまとめ上げた上で、政策金利の引き下げに踏み切った。一方のリーマン・ショックでは、行き過ぎたモラルハザードというLTCMの反省から、政府は救済しないことを決定。その結果、史上最悪の世界金融危機と言える状況に陥った。

明確なコンセンサス

  この数週間に集まった各社のリサーチでは、明確なコンセンサスがある。中国恒大集団は中国市場にミンスキー・モーメントをもたらすほどの大きな問題だ。しかし問題への対応はリーマン型よりもLTCM型に近いことを、想定しておいた方がよい。つまり短期的に市場は悲惨な状態に陥る恐れがあるが、手に負えないような崩壊には至らない。言い換えれば23年前にアラン・グリーンスパン氏が犯した過ちが、中国当局によって繰り返されるリスクも示唆する。再び有害な投機熱の環境を作り出してしまう過ちだ。

Yields on Evergrande debt shave been surging higher since June
中国恒大集団25年6月償還債
出所:ブルームバーグ

  4年後に償還期限を迎える中国恒大集団の社債の利回りが60%を突破すれば、すべてのクーポンが支払われることはないと市場は理解する。これとは裏腹に、中国不動産開発業者の高利回り債はつい数週間前まで、S&P500種株価指数より高いトータルリターンを上げていた。これは正気の沙汰ではない。

今は比較的静か

  それではなぜ、まだ比較的静かな状態なのだろうか。詰まるところ、中国当局の意図を読み取る必要がある。当局は中国版リーマンのお膳立ては避けたい。この数年間、ミンスキー・モーメント到来の可能性は、中国ウォッチャーの間では繰り返し強く警告されてきた。当局者らは起こり得る事態を理解し、それを阻止する決意を固め、信用抑制の努力を続けてきた。中国恒大集団が苦境に陥っているのは主として、政府自身が昨年、「三道紅線(3本のレッドライン)」政策によって不動産開発業界への締め付けを決定したからだ。

China Tells Banks Evergrande Won’t Pay Interest Due Next Week
 
Photographer: Qilai Shen/Bloomberg

ミンスキーではなくLTCM

  もちろん政府は容易に過ちを犯す。しかし中国がリーマンよりLTCMに近い対応を意図していることは明らかだ。中国恒大が本拠を置く広東省の規制当局は会計や法律の専門家を派遣したが、その中には事業再編を専門とする法律事務所キング&ウッド・マレソンズが含まれる。

  中国政府が秩序あるプロセスを確実にすると考えられるもう一つの理由に、それ以外に選択肢がないという状況もある。リーマンの時代の言葉を借りれば、中国恒大集団は破綻させるには大き過ぎるからだ。

包商銀行

  最後に指摘しておきたいのは、中国恒大集団より規模が小さいがもっと複雑だった包商銀行の破綻という「台本」があることだ。2年前に公的管理下に置かれた包商銀行のいきさつは、ソシエテ・ジェネラルの姚煒氏によれば、システミックな流動性逼迫(ひっぱく)の回避こそ「中国人民銀行(中央銀行)の絶対優先事項」であり、人民銀にはその手段があることを示す。政策当局は事業再編の痛みを和らげるための時間的猶予を得ることも可能になる。

  LTCM型の後処理が帰結するところは暗い将来だ。モラルハザードがはびこるリスクも残る。人民銀が信用の全面崩壊を回避できたとしても、不動産セクターの弱さが経済成長の阻害につながることは不可避だ。しかし現時点の世界市場は、これが新たなLTCMになることに神経をとがらせつつ、リーマンの再来ではないことに慰めを見いだすだろう。突き詰めればいずれのシナリオも妥当に思われる。はっきりするのはこれからだ。

 (ジョン・オーサーズ氏は市場担当のシニアエディターです。ブルームバーグに移籍する前は英紙フィナンシャル・タイムズに29年勤務し、「レックス・コラム」の責任者やチーフ市場コメンテーターを務めました。このコラムの内容は必ずしも編集部やブルームバーグ・エル・ピー、オーナーらの意見を反映するものではありません)

原題:Evergrande’s Moment Looks More LTCM Than Minsky: John Authers(抜粋)

    This column does not necessarily reflect the opinion of the editorial board or Bloomberg LP and its owners.

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