イスラエルの感染者急増、世界に先行する「コロナと共生の姿」
Daniel Avis-
9月4日までの1週間では人口当たりの感染症例が世界最多
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1日当たり約10万人がワクチン接種-その大半が3回目

新型コロナウイルス禍からの脱却に向けて世界の先頭を走っていたイスラエルが、今では世界でも特に深刻な感染ホットスポットになっている。米ジョンズ・ホプキンズ大学がまとめたデータによると、9月4日までの1週間では人口当たりの感染症例が世界最多となった。
人口約900万人の同国はワクチン接種で先行し、欧州の大半と米国がまだロックダウン(都市封鎖)など厳しい措置を取っていた4月、世界でいち早く社会と経済を再開させる先行事例となっていた。そのイスラエルの今の状況は、新型コロナへの考え方がいかに変わりつつあるかを示している。もはや感染するかどうかだけでなく、症状がどれほど重くなるか、感染力の強いデルタ変異株が広がる中でワクチンが引き続き確実に効果を上げるかどうかが問題になっている。

最近では子どもへのワクチン接種と、ファイザー・ビオンテック製ワクチンのブースター(追加免疫)接種を同国は積極的に進めている。1日当たり約10万人が接種を受けているが、その大半が3回目の接種だ。
シェバ医療センターのイヤル・レシャム教授(感染症学)は、「ロックダウンなしの生活を維持し、多数の入院や死亡を避けられるのであれば、コロナとの共生はこのような感じになる」と語った。
Getting Hospitalized
The number of severe cases appears to have peaked as booster shots are rolled out to the vulnerable
Source: Israel Ministry of Health
同国ではワクチン未接種者が重症者に占める割合は、2回接種した人の10倍余りとなっている。このことは、ワクチンの感染予防効果が下がったしても、なお重症化は防げることを示している。
疫学者によると、ブースター接種の効果とバーやレストランへの入店をワクチン接種者に限定する措置により、30代以上ではすでに感染症例が減少している。
コロナ対策を政府に助言する専門家パネルの責任者ラン・バリサー氏は、ワクチンの「免疫力低下はすべての国が危機管理の策定に取り組むべき現実的な課題だ」と指摘。イスラエルから今後数週間で出てくるデータが、ブースター接種の有効性を世界が判断する材料になるだろうと述べた。
波乱要因となる可能性があるのは学校の再開だ。同氏によると、子どもが感染して帰宅することでウイルスの伝播動態が変わり、あらゆる年齢層が感染する恐れがある。

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原題:
Israel’s Covid Surge Shows the World What’s Coming Next(抜粋)