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東京パラ支えたメードインジャパンの技術-SDGsの視点とも呼応

  • ホンダは競技用車いすレーサー、NTTはバリアフリーガイドを開発
  • 障害者の視点、企業にも斬新さやイノベーション生む-識者

5日に閉幕した東京パラリンピックでは、日本の技術が国内外のアスリートらを支えた。こうした取り組みは、国連が掲げる持続可能な開発目標(SDGs)とも呼応し、障害者が広く活躍できる社会の実現を目指す動きの一助となりそうだ。

  ホンダは多くの障害者が働く特例子会社のホンダ太陽(大分県)などと協力して開発した陸上競技用車いすレーサーの最新モデル「(かける)」で選手をサポートした。ホンダでは、社員向けの製作をきっかけに20年以上前から開発を手掛けている。

Paralympics Tokyo 2020 - Athletics
マニュエラ・シャー選手(8月29日)
 

  自動車レース最高峰のF1や自家用ジェット機開発で培った技術を活用。フレームやホイールには軽さと高い剛性を兼ね備えたカーボンを使用し、車重は7.9キログラムと最軽量レベル、乗り心地の良さも追求した。

  スイスのマニュエラ・シャー選手は翔に乗り、陸上女子800メートルなどで金メダル2個、銀メダル3個を獲得した。雨のレースの後には、グリップが滑るという課題に「ホンダが良い素材を見つける手助けをしてくれた」と謝意を述べた。

障害者が生き生きできる

  10年近く開発に携わる本田技術研究所の高堂純治エキスパートエンジニアは翔について、「特定のアスリートだけでなく、みんなが乗ってみたくなるような見た目のかっこよさも一つのコンセプトに開発した」と話す。

  高堂氏は「技術は人のためにある。技術を使って障害者の方が生き生きできる世界ができれば一番いい」と語る。

  東京五輪・パラリンピック組織委員会は、大会基本コンセプトの一つに「多様性と調和」の実現を掲げ、障害を抱える人々の社会進出を促してきた。国連が2030年までの達成を目指すSDGsでも、障害者の活躍の場を増やすことが求められている。

車いすでも楽しく外出

  NTTは今大会で車いすを利用する国内外からの観戦客向けに、スマートフォンで最寄りの公共機関の駅から競技会場までのアクセスや周辺のバリアフリー情報を閲覧できるアプリ「ジャパンウォークガイド」を開発し、7月からサービスを開始した。

  事前に収集した延べ1900人分の情報も活用し、ピクトグラムを多用するなど外国人にも簡単に使いこなせるよう心掛けた。NTT人間情報研究所の市川裕介主任研究員は、「車いすの方が不安なく楽しく外出してほしい」とコンセプトを話す。

NTT's “Japan Walk Guide”
NTTの「ジャパンウォークガイド」
 

  新型コロナウイルスの感染急拡大で大会はほぼ無観客となった。市川氏は、アプリの利用が少なかったことは残念だったが、大会期間中も利用者の要望を反映して修正を重ねたという。

  NTT新ビジネス推進室の深町隆行氏は、企業ブランドや収益を意識せず、「チャレンジとして社会課題に向かってICT(情報通信技術)を活用していくことがテーマ」だったと強調。こうした取り組みが「文化として日本に根付いていくことがレガシーになるのではないか」と述べた。

企業活動に障害者の視点を

  国際パラリンピック委員会(IPC)は、パラスポーツを通じ、誰もが分け隔てなく当たり前に参加できる「インクルーシブ」な社会をビジョンに掲げている。SDGsも目標達成に向け「誰一人取り残さない」ことを重視している。

  日本でSDGsへの関心は年々高まっているものの、認知度や貢献度はまだ途上にある。国連の提唱で発足した国際団体、サステナブル・ディベロップメント・ソリューション・ネットワークなどが発表した報告書によると達成度で日本は18位、北欧など欧州勢に遅れを取っている。

  法政大現代福祉学部の佐野竜平准教授は、日本では「制度は整備されているが、前例のない対応に弱い」と指摘。企業側にも全ての活動に「必ず障害者の視点を入れる発想を定着させる」ことが重要で、それにより「斬新さやイノベーションにつながると信じる企業が増えてほしい」と話す。

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