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第一三共、mRNAワクチンに追加投資検討-大規模試験は海外でも

  • 「埼玉産ワクチン」普及へプラスアルファの増設-インフル設備活用
  • 新型コロナスパイクタンパク質の先端に的を絞り、変異株に効果期待

新型コロナウイルス感染症の国産ワクチンを開発する第一三共は、メッセンジャーRNA(mRNA)ワクチンの生産体制の増強に向けた追加投資を行うことを検討している。同社のワクチン企画部長の丹澤亨氏が2日、ブルームバーグとのインタビューで明らかにした。

  現在英アストラゼネカの新型コロナワクチンの製剤化を担う第一三共バイオテックの北本工場(埼玉県・北本市)で、丹澤氏は自社で開発中のmRNAワクチンの供給に向けて「今後設備を拡充することも視野に、社内ではしっかりした目標値も定めて、国民の皆さんにも安心できる生産供給体制を作る」と述べた。

Daiichi Sankyo Biotech Co.
第一三共バイオテックの北本工場
Source: Daiichi Sankyo Co.

  同社は国内で承認されているファイザーやモデルナのワクチンと同様に、mRNAワクチンを開発しており、年内には国内外の複数の国で最終段階の数千人規模の臨床試験を行う予定だ。来年の下期には国内での実用化を目指している。

  丹澤氏によると、ゼロからmRNAワクチンの生産拠点を整備すると数千億円の投資になる。同社では2011年以降に政府の支援を受けて整備した新型インフルエンザのワクチン生産向けの設備を最大限に活用し、「プラスアルファで設備を増設」することを検討している。具体的な投資額などは、検討段階であるため明らかにしなかった。

変異株に効果期待

  既に承認されているファイザーとモデルナのmRNAワクチンは、新型コロナウイルスの表面にあるスパイクタンパク質に対して中和抗体を生成するもので、スパイクタンパク質の全長を対象にしている。

  ところが、スパイクタンパク質の全長を対象に抗体を作る場合、中和抗体とは異なる抗体が体内に生成されることがあり、場合によっては余計な抗体が感染を増強する恐れがあるとの研究結果もある。

  一方、第一三共が開発中のワクチンは、ウイルスと感染者の細胞が結合するスパイクタンパク質の先端にあたる受容体結合部位(RBD)に的を絞ることで、余計な抗体の生成を抑え、米2社のワクチンに比べてより効率的に中和抗体を作れる効果が期待されている。

   同社で長年バイオ医薬品の製法研究に携わっているバイオロジクス本部長の籔田雅之常務は、 「いかなる変異であっても、バインド(結合)する部位は一緒であり、バインドに対する阻害活性をより上げたいということから、そこに特定した」とワクチン設計の経緯を説明した。

  同氏は同社のワクチンが変異株にも有効だと推測する。今後はさらに、大規模試験によるデータの裏付けが必要だが、「全く箸にも棒にもかからないようなものではない」と自信を見せる。

  また、同社が開発中のワクチンは、保存条件として冷蔵で保存できるようにすることを目指しており、長期保管にはファイザーやモデルナに比べて扱いやすいことが想定される。

海外に輸出も

  第一三共は開発中のワクチンで、国内外で3回目の「ブースター接種」に採用されることも狙っている。承認済みの米2社のワクチンは接種から半年後に新型コロナの変異株などへ予防効果が低下し始めるとされているため、米国では既に3回目の接種が始まっている。日本でも2月から開始した国内先行接種が始まって、既に半年以上が経過している。

  同社は国内で医薬品の承認審査を担う医薬品医療機器総合機構(PMDA)と3回目接種としての承認条件について話し合いを進めており、そのための大規模試験も、ワクチン未接種の人に対する試験と並行して進める予定だ。

  国内でワクチン接種が進んだことで、「ワクチン接種歴のない人にわれわれの治験に参加してもらうのは非常に難しいハードル」になっていると、研究開発本部の開発統括部で臨床開発第三部長を勤める上野司津子氏は述べ、海外の複数の国からも参加者を募る予定だと明らかにした。

  同社はワクチン開発に成功した際にはまず国内で申請を行い、政府と協調して国内、そして臨床試験に参加した国などに対しても輸出していく考えだ。丹澤氏は、同社の「埼玉産ワクチン」を国内外に届けたいと語った。

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