ウォールストリート・サウス、フロリダ州で誘致狙った大改造が進行中
Amanda L. Gordon (News)、Sridhar Natarajan、Natalie Wong-
ゴールドマンなど金融大手がウェストパームビーチに進出へ
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ウォール街の名店「ハリーズ」出店へ、高級不動産は完売

古くからあるウォール街には米金融界のパワーブローカーでにぎわう由緒ある社交場「ハリーズ」があるが、これに対抗するフロリダ州の「新ウォール街」にもハリーズが出店する。
元祖ハリーズはローワーマンハッタンのハノーバースクエアにあり、全盛期にはキダー・ピーボディーやディロン・リード、ファースト・ボストンといった今はなき金融機関に囲まれていた。一方、フロリダ州ウェストパームビーチのローズマリースクエア近くにオープンする新しいハリーズの近隣にはゴールドマン・サックス・グループやスティーブ・コーエン氏率いるポイント72アセット・マネジメントなどが拠点を構える見込みだ。
これはより多くのニューヨーカーを税制面で有利なフロリダ州に誘致するために現在進んでいる一連の動き中でも特筆すべきものだろう。新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)を受けてマンハッタンのエリート層の移住が加速した後、高級不動産やゴルフクラブ会員、私立学校の入学者数が急増。地元の不動産開発会社や起業家は、かつて活気のなかったウェストパームビーチを繁栄する金融センターに転換しようと取り組んでいる。

それは新しいビジネス会食の場や仕事帰りのバー、輝く高層タワーがマンハッタンのウェストビレッジさながらに全く新しい地区で建設されていくことを意味する。ニューヨーク大学(NYU)ランゴーン医療センターとマウントサイナイ病院は現地に医師らを配置しており、ある私立学校はアッパーイーストサイドにあるヒューイットスクールから直接入学担当ディレクターを採用。ニューヨークのコーネルテックをモデルにした大学キャンパス構想の交渉も始まっている。
これらの全てが、魅力にあふれるニューヨーク市を去る準備が十分できていないかもしれない金融業界関係者を引き付ける可能性がある。
2019年1月にマンハッタンからウェストパームビーチに引っ越した投資銀行シーバート・ウィリアムズ・シャンクのパートナー、ジャニス・サビン・ウィリアムズ氏は「1年後にはこんな景観ではないだろうから、街の写真を時々撮っている」と話し、バーやレストランが軒を連ねるクレマチス通りに若者が集まっているのに驚いているという。

ウェストパームビーチはかつて、金持ちが集まるパームビーチの季節的居住者にはほとんど無視されていたが、その後、クラビス舞台芸術センターやホテル、アーティスト用スタジオ、ノートン美術館などの施設が登場。ウェストパームビーチ初の超高級ウオーターフロント・コンドミニアムであるブリストルは2019年にオープンした。ブリストルは新型コロナの流行後に完売し、近隣でも住宅が記録的価格で売れた。

しかし、コロナ禍の間にウェストパームビーチに最も大きな賭けに出ているのは、20年前に最初に市場参入したスティーブン・ロス氏率いる不動産開発会社リレーテッドだ。同社は今夏に完成したオフィスタワー「360ローズマリー」も含めてダウンタウンのA級オフィススペースの大半を所有する。
ウォール街のフロリダへの大移動、空前のオフィス開発ラッシュ呼ぶ
ハリーズとその姉妹ピザ店が約1年後にオープンするこのタワーは、米南部のウォール街建設の夢をかき立てている場所であり、ウォール街で最も有名な企業であるゴールドマンを誘致した。
ウェストパームビーチ市のキース・ジェームズ市長は「ゴールドマンがリース契約したことで、『進出するのも悪くないかもしれない』という非常に大きなシグナルを他社に送ることになったと思う」と話した。

事情に詳しい複数の関係者によると、ゴールドマンは350席のスペースをリース契約し、スタッフを配置する計画。これはマンハッタンのダウンタウンにある本社に比べてほんのわずかだが、プライベートエクイティー(PE、未公開株)投資会社やヘッジファンド会社の典型的な拠点よりははるかに大きい。ゴールドマンの広報担当者は同行の計画についてコメントを控えた。

原題:
Wall Street South Builds Its Own New York to Lure Younger Crowd(抜粋)