コンテンツにスキップする

ウォール街、新型コロナ禍で「あり得ない」が「ありふれた」ことに

  • コロナ時代の市場予想が全く当てにならないことを示す事例は多数
  • 株高に加え、教科書と歴史を無視した債券動向に戸惑うベテラン
The Nordhavn Metro.
Photo illustration by 731; Photos: Getty Images (11); Shutterstock (5); AP (2)

金融市場には頭脳と最先端テクノロジーが無限に注ぎ込まれているように見えるが、それにもかかわらず誰も何も分かっていないように感じられるときがある。

  受け入れ難いことだがこれが恐らく、過去1年半にわれわれが学んだ教訓の一つだろう。この期間に米国株相場は1932年以降の最速ペースで倍の水準となった。

  フェデレーテッド・ハーミーズのポートフォリオマネジャーでマルチアセットソリューション責任者のスティーブ・チアバロン氏は、新型コロナウイルス流行が始まったばかりの「昨年3月に誰かが、1年半後に感染者数はほぼ変わらず、一方で株式相場は2倍になっているだろうと予言したら、私は鼻で笑っただろう」と言う。

  同氏がこの期間の出来事から学んだ教訓は、謙虚さを忘れてはならないということだ。「ウイルスの動向を予言できたとしても、相場を正しく予想できるとは限らない。選挙結果を正しく予想しても相場を言い当てられるとは限らない」と同氏は述べた。

Days the S&P 500 Took to Double From a Low During a Bull Market

Data: Compiled by Bloomberg

  新型コロナ時代の市場予想が全く当てにならないことを示す事例は多数ある。例えば、過去5四半期のS&P500種株価指数構成企業の利益は、アナリスト予想を平均で19%余り上回った。予想と実績の格差は新型コロナ前は3%程度だった。この大外れは2020年3月時点の予想利益に基づく株価バリュエーションが、後で判明するよりも2割ほど割高に見えていたことを意味する。

  恐らくこれが、今も一見して割高にもかかわらず株価が上昇し続ける理由だろう。しかしストラテジストの予想を収れんさせるような新たな指標があるわけではない。ブルームバーグの調査によれば、S&P500種の年末予想は4825から3800までと、約27%の開きがある。

ウォール街、米株相場の予想が困難に-年末見通しに大きなばらつき

  インターネットバブルと世界金融危機を乗り越えた業界ベテランでさえ、新型コロナ時代の市場には驚かされる。証券会社BTIGの株式・デリバティブ(金融派生商品)チーフストラテジスト、ジュリアン・エマニュエル氏はウォール街歴30年のベテランで、新型コロナ前には市場に関する限りあらゆるものを見尽くしたと思っていたという。しかし今は、株式相場の堅調に加え、教科書と歴史を無視したような債券市場の動きを、どう考えていいか分からなくなっている。

  生産者物価の上昇率は13年ぶり高水準で、今年の米経済は6.2%成長が見込まれる。この環境では債券は売られ、インフレと高成長環境に見合う投資機会を提供する程度の利回りを生み出すはずだ。「どこの世界で10年物の利回りが1.2%に近いなどという状況を想像できただろう」と不思議がる同氏は「全くあり得ないことが今では事実上ありふれたことになっている」と話した。

  この状況は同氏に、謙虚さに加えてもう一つの重要な教訓をもたらした。投資家コミュニティーの動向は企業と経済のファンダメンタルズと同じくらい重要だということだ。

  かつては個人投資家の動向が個別銘柄や市場全体に影響を与えるとは考えられていなかったが、新型コロナ禍の間にこれが変わった。19年終盤の証券会社の値引き競争で取引手数料がほぼゼロになったことに加え、ロックダウン(都市封鎖)で個人が時間を持て余したことが背景にある。

ミーム銘柄バスケット6月以来の大幅高-ゲームストップ、AMC急騰

  ブルームバーグ・インテリジェンスによれば、主要なリテールブローカーの顧客による株取引は今年、1日当たり29億株と新型コロナ前の7億株から増えている。

原題:
On Wall Street Amid the Pandemic, the Impossible Is Commonplace(抜粋)

(原文は「ブルームバーグ・ビジネスウィーク」誌に掲載)
    最新の情報は、ブルームバーグ端末にて提供中 LEARN MORE