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ヘッジファンドが扉を閉ざす、トップファンドへの投資は狭き門に

  • 1144という記録的な数のヘッジファンドが新規資金の受け入れを停止
  • 投資家の殺到ぶりは21世紀への変わり目の熱狂の「デジャビュ」

新型コロナウイルス禍の中で元シタデルのトレーダー、ナイル・オキーフ、ティオ・シャルバギ両氏は、開始するヘッジファンドのために資金集めをしていた。

  利益の20%の運用報酬と預かり資産の2%の年間手数料という新興ファンドにしては高い価格設定、投資家に人気のないロング・ショート戦略の投資スタイルに加え、売り込み姿勢は強気で駆け引きに応じる気配もない。

  これでは売れるはずもないところだが、なんと12億5000万ドル(約1370億円)があっさり集まった。今年の新設ヘッジファンドとして最高額を集めた両氏のファンドはトレーディング初日の7月1日、新たな投資家に対して扉を閉ざした。

新興ヘッジファンドが取引初日に新顧客「お断り」-有力運用者の強み

  4兆ドル規模のヘッジファンド業界でもまれな偉業であり、10年にわたる衰退からの業界復活を示すものだった。ただ、始まったばかりのブームに参加しようとする投資家は厳しいメッセージを突き付けられている。有望な運用者に資金を委ねるにはもう遅過ぎるかもしれないということだ。

  突然の潮目の変化を示す事例はあちこちに見られる。2019年半ばまでかつてない顧客の流出に悩んでいたブレバン・ハワードも、今年に入って旗艦ファンドへの新規資金受け入れを停止した。ヨーク・キャピタル・マネジメントの元共同最高投資責任者(CIO)のクリストフ・オーランド氏は10億ドル規模の新ファンドを計画しているが、事情に詳しい複数の関係者によると、年末までに募集を締め切ることを既に検討している。

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2年前にはブレバン・ハワードは資金流出に歯止めをかけようとしていた
Photographer: Jason Alden/Bloomberg

  業界全体では1144という記録的な数のヘッジファンドが新規資金の受け入れを停止している。これはプレキンがデータをまとめ始めてからの最多。ジュリアス・ベア・グループによると、合計運用資産2200億ドル以上の20のマルチマネジャーファンドのうち13社はもはや資金を受け入れていない。新規投資家をシャットアウトしているのは規模が大きく人気の高いファンドだ。

Enough Is Enough

Hedge Funds closing to new money hit record levels

Source: Preqin

Note: 2021 data is through Aug. 12

  ジュリアス・ベアのオルタナティブファンド責任者、イワン・イリエフ氏はインタビューで、「ベストパフォーマーが条件を決めるというのが現実だ」とし、投資家が「2つか3つのマルチマネジャーファンドに投資して簡単にもうけるという道は閉ざされた」と話した。

  もちろん、世界で8000社ほどがある業界で、あれこれ要求する立場にあるヘッジファンドはごくわずかだ。大半のファンドの平均的手数料は、世界金融危機後のリターン低迷期に始まった低下が続いている。

  金融危機後のヘッジファンド業界への打撃は大きかった。2008-20年の間に1万1600以上のファンドが閉鎖に追い込まれた。しかし20年に新型コロナが市場を揺さぶるとボラティリティーが回復し、一部のトップファンドは息を吹き返した。

  スイスを本拠とするノッツ・シュトゥッキでヘッジファンドに資金を配分するキャロン・バスティアンピライ氏は「立場が逆転し運用者らが条件を出すようになった」と話した。

  エリオット・インベストメント・マネジメントやミレニアム・マネジメントなどの優良ファンドは、長期投資を前提とした新しい仕組みの株式クラスを創設し、顧客に勧めている。

ヘッジファンドのミレニアム、長期投資向けシステムで2600億円集める

Churning Profits

Hedge funds recorded their best return in more than a decade last year and have started off with first-half gains at their peak since 1999

Source: Hedge Fund Research Inc

Note: Returns as measured by HFRI Fund Weighted Composite Index

  ヘッジファンド業界全体の昨年利益は10年間で最大だった。今年も1999年以来の好スタートを切っている。プレキンがまとめたデータによると、長年停滞していた業界の合計運用資産は4兆ドルを突破。業界団体オルタナティブ投資運用協会(AIMA)の調査によれば、ヘッジファンド業界内の楽観論も強まっている。

  とはいえ、新型コロナ感染再拡大の影響やテクノロジー株失速の可能性、中国の業界トップクラス企業への締め付けなど、リスク要因は多い。しかし今のところ、投資家はそうしたリスクに目をつぶっているようだ。シタデル出身のオキーフ、シャルバギ両氏のフィフスデルタには投資家資金がたっぷりと集まった。

  過去20年の大半にわたってヘッジファンド業界を見守ってきたサレーム・シディキ氏は現在の投資家の殺到ぶりについて、21世紀への変わり目の熱狂をほうふつとさせると語る。「当時そのままのデジャビュ(既視感)だ」と同氏は述べた。当時の繁栄は、08年の金融危機まで続く業界のブームの基礎を築いた。

  運用資産が13年に400億ドル以上でピークを付けた後18年には約60億ドルにまで落ち込んだブレバン・ハワードは、そうしたブームと破裂を繰り返さないことを決意している。

  共同創業者のアラン・ハワード氏から最高経営責任者(CEO)を引き継いだアロン・ランディ氏は「必要なのは投資家を幻滅させず、芳しくないパフォーマンスが不可避の時期にも彼らの信頼をつなぎ留める運用者の能力だ」とホームオフィスからのバーチャルインタビューで語った。「そのために、顧客のベストパートナーであろうと深く配慮し意識的に取り組んでいる」と話した。

 

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アロン・ランディ氏
Photographer: Hollie Adams

原題:Hedge Funds Are Hot Again. Good Luck Getting Into One You Want(抜粋)

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