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デンソーCFO、数千億円規模のM&Aに意欲ー株主還元も拡大へ

  • 5-6年で約1兆円をM&Aと株主還元に使う可能性ー松井CFO
  • サステナビリティボンドの発行を検討、初の外債でー額や時期は未定

世界2位の自動車部品メーカー、デンソーが積極的な企業の合併・買収(M&A)に乗り出す。資本効率を高めるため、政策保有株の売却や株主還元の拡大にも取り組む意向だ。

  デンソーの最高財務責任者(CFO)を務める松井靖取締役・経営役員は20日の愛知県刈谷市本社でのインタビューで、「ちゃんとレバレッジを効かせて資本効率を上げるようなことをしたいので、そのためには良質なM&Aで大規模なものが必要」との考えを示した。

  数千億円規模のM&Aも「チャンスがあればやりたい」とした半面、問題は「ふさわしい投資先があるかどうか。自動車では自分が先頭を走っているつもりでいるから、なかなかない」と述べた。

Denso CFO Yasushi Matsui
デンソーの松井CFO
Source: Denso Corp.

  デンソーは数年前から自前主義から脱却し、数千億円規模の大型案件を含めて積極的にM&Aを実施するとの方針を掲げてきた。しかし、2019年にトヨタ自動車ソフトバンクグループのビジョン・ファンドと共同で米ウーバー・テクノロジーズの自動運転部門に計10億ドル出資したことなどはあったものの、大型の買収案件はいまだに実現していない。

  松井氏は、電動化や自動運転といった技術の獲得・強化に向け「大きな出資・買収を内々で検討し、デューデリジェンス(資産査定)に入った事例もある」と回顧。しかし、デューデリジェンスで「福袋」の中身をのぞくと、自社の事業や技術を補完できる案件ではなかった。

  一方、非自動車事業の柱に位置付けるファクトリーオートメーション(FA)と農業は「足らないところだらけ」と松井氏は指摘する。デンソーは18年にFA事業を手掛ける東北パイオニアEGの株式を取得し、農業分野では20年にオランダの施設園芸事業者セルトングループに出資した。今後も、これらの分野では積極的に出資や買収を仕掛けていきたい考えだ。

最近のデンソーの主なM&A:

発表日対象取引タイプ発表時のディール総額
19年4月ウーバーATG出資3社で計10億ドル
18年8月JOLED出資300億円
18年3月ルネサスエレクトロニクス出資約850億円
17年4月富士通テン子会社化169億円

  デンソーでは、資本効率の向上のため自己資本比率を25年度までに50%まで(20年度は57.5%)引き下げる目標を掲げている。今後の利益見通しなどを踏まえると、何もしなければ自己資本比率は上昇していくため、松井氏は目標達成に向け「5、6年で何かしら1兆円ぐらい使わないといけない」と話し、M&Aと株主還元に半分ずつ配分することが検討されていると明かした。

  M&Aなどの投資拡大に向け、資金調達の多様化も進める。インタビューに同席したデンソーの篠田吉正経理部長は、「成長投資で一気に1兆円取らないといけないときもあるかもしれず、国内で1兆円を取ろうと思うとちょっとマーケットが小さいので、外債も俎上(そじょう)に載せている」と述べた。通貨はドルやユーロといった主要通貨になる見通しだという。

  同社にとって初となる外債は資金使途を環境・社会の持続可能性に貢献する事業に限定するサステナビリティボンドの形で発行することを検討している。発行額や時期はまだ検討中だが、デンソーはグリーン、ソーシャル、サステナビリティボンドに関するフレームワークを作成し、ESG評価機関のヴィジオアイリスから評価を取得するなど「いつでも発行できるような準備は整ってきている」と篠田氏は語った。

政策保有株売却に聖域なし

  デンソーは7月に1200万株、1000億円を上限とする自社株買いを発表した。松井氏は、自己資本比率を50%とするには「この1000億円では全然効かない」とし、今後も自社株買いを行っていく考えを示した。その上で、「自己株買いは株価が安いうちに機動的にやっていきたい。今の株価は安い」とみている。

  資本効率やコーポレートガバナンス(企業統治)の観点から投資家が厳しい視線を注ぐ政策保有株の縮小も進める。18年度に44銘柄あったデンソーの政策保有株は、20年度に30銘柄まで減少した。デンソーの有価証券報告書によると、21年3月期にはシャープJVCケンウッドクボタのほか、トヨタ系自動車部品メーカーの小糸製作所の保有株も売却している。

  さらに現在は26銘柄まで減り、政策保有株の売却に「聖域はない」と松井氏は強調。今後も保有意義やリターンを踏まえ、発行体の了解を得た上で売却を進めていくという。

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